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アフターピル・Factbook作成にあたって


注)このnoteは、株式会社ネクイノ代表取締役の石井健一が株式会社ネクイノメンバー向けに書いているnoteです。そのため、使用している用語に通常で使われているものと意味合いが異なる場合があります。

0.はじめに

新型コロナウイルス感染症の流行から1年半が経過しましたが、日本も含む世界各国でのワクチン接種率の拡大により、少しずつ未来に向けて光が見え始めてきました。マスクのない生活、人との出会いや交流を恐れなくても良い生活に戻れるまであとどのくらいかかるかわかりませんが、それでも地球は回って私たちには「毎日」が訪れています。

新しい生活様式、の中で潜在的な課題が浮き彫りになってきたのも事実です。我が国におけるSRHR(Sexual Reproductive Health & Right:性と生殖に関する健康と権利)の社会実装はまだまだ進んでいるとは言えず、その実装に重要な役割を果たすソリューションの一つである緊急避妊薬(アフターピル)についてのアクセスの課題は未だ残されたままです。

1.日本の医療インフラについて改めて

日本の医療は世界的な視点でも最高水準であり、国民皆保険制度を中心とした医療インフラによって、多くの国民は諸外国に比べても大きな恩恵を受けていることは間違いないことだと思います。こう言った医療インフラを維持するには多大なコストがかかり、各国はそのインフラの維持のために「オレゴンルール」といわれる原則を参考に制度設計がされています。

”オレゴンルール”とは、
医療のインフラには
①提供する「質」の確保
②アクセスのしやすい環境
③安価なコストでの提供
の3つがレバーとして存在していますが、この3つの並立は本当に難しいので何か1つを「捨て」て、残る2つをしっかり構築して行こう、という考え方

日本は、(主に医療従事者の血の滲むような努力と犠牲がベースなのですが)世界的に見ても非常に珍しい「3つのレバーが並立できている」医療インフラと言われています。確かに、、日本全国どこにいても高度な医療が受けられる、夜に体調を崩してもすぐに医療が受けられる、保険証があれば安価な費用負担で受けられる、と言った具合にです。

参考までに例えばアメリカは、3つ目の「安価なコスト」を捨てました。それにより医療費は高騰し社会問題になっています。多くの発展途上国では、アクセスしやすい環境を捨てています。そのため地方に住む国民は高度医療が受けられなかったり、都市部であれば救われる命が救えなかったりしています。改めてですが日本の医療水準とシステムの構築は、本当に素晴らしいんです。

何が言いたいかというと、「日本は遅れてる!」って簡単に言わないで!!ってことです。この論調で医療インフラを担っている人、に対して非難をすると、このインフラの維持のために血の滲むような思いをしている方々はとっても嫌な思いをします。
だから、スタンスとして僕が提案したいのは命に直結する領域に関して「優先的に」オレゴンルールに挑戦して課題解決をしてきたことで、現在の高い医療水準と医療インフラを得られることができた一方、「カバーできなかった」領域が少なからず存在している、その部分についても既存のアプローチとは異なった手法で課題解決に取り組んでいかなければならないっていうことです。(以下、参考資料:ニッセイ基礎研究所シンクタンクレポート
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=61120?site=nli)

図1

図2

2.そうはいってもアフターピルのアクセスに関する課題

メディアなどでも取り上げられることが増えてきた、アフターピルの「アクセス」に関する課題です。SRHRの視点では、アフターピルへのアクセスが確保されることが何よりも重要であると考えます。先程のオレゴンルールの視点に則ると、

①提供される医療の質(使える薬の種類など)=ほぼ◯(標準的な医薬品の承認は実施されている)
②アクセスしやすい環境=▲〜✖︎(医療機関への受診が必須)
③安価なコストでの提供=✖︎(物価差を考えても諸外国に比べ明らかに高い最終入手価格)

っていう状況にあると考えられます。そんななか、あるべき姿に向かって医療インフラや医療システムを適正化していくために自分たちになにができるのか、を考えました。

3.ネクイノの取り組み

私たちネクイノは、スマルナというオンライン診察サービスを通じてSRHRの社会実装に向けた取り組みを行っています。オンライン診察を行うことでオレゴンの②のポイント、「アクセス」についての改善を目指しています。もう一つ、私たちのフィロソフィー、いわゆる「哲学」として私たちはメディカルコミュニケーションカンパニーであるという点があります。メディカルコミュニケーションとは、詳しくはコチラを見ていただくとして医学的なソリューション(治療法とか、医薬品とか)とそのサービスを受ける患者の間に大きな「コミュニケーションの隔たり」が存在してしまっていて、このギャップを埋めていくことが私たちが実現したい未来に近づくのだ、という考え方に則っています。アフターピルのアクセスに関する課題解決に向けて、まさに世論形成のプロセスでこの「メディカルコミュニケーション」にミスマッチが生じてしまっていると感じています。それは、例えば誤解だったり、偏見だったり、古い情報に基づいているものだったり・・・。こういった文化的な背景も含めて社会的な変化を必要とするコミュニケーションにおいて、何よりも「科学的な根拠=Fact」に基づいて議論を始めていかないと、結果的に議論が噛み合わず課題解決に繋がらない・・というのもよくあることだと思います。

4.だから、ファクトブックを作りました

こう言った背景から、構想から半年をかけてこのアフターピルファクトブックを紡ぎました。このプロジェクトは広報チームとコンテンツ制作チームの共創で、リエゾンチームや医療連携チームなどの力も借りて完成しました。詳しい中身はリンク先から見ていただくとして、少しだけポイントを紹介します。

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医学的なデータって、どうしても難しい表現になってしまうのが多いのですが、こう言った表記を使ったりして、出来る限り理解しやすい表現を行なっています。

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また、エビデンスに基づいた評価だけでなく、スマルナユーザーさんとコミュニケーションをして「どう」考えているのかを見える化しました。また、アフターピルのアクセス改善に対する議論が行われるなかで出てくる「性感染症は増えるのか?」「性は乱れるのか?」といった点についてもエビデンスに基づき解説を加えています。

5.さいごに

ということで、私たちネクイノはSRHRの社会実装のためアフターピルへのアクセス改善について全面的に支持しています。しかしながら、この社会実装のための議論を行うにあたって、フェア(=科学的根拠に基づく)な資料を用意することが必要だと考え、今回のファクトブックの制作に至りました。
冒頭に記載させていただきましたように、日本の医療水準は世界に向けて胸を張れるものであり、この実現に現場の方々が血の滲むような努力をして社会実装してきたことを無視して「日本の◯◯◯は遅れている、ひどい!」というスタンスでの発信は行いたくはないですし、これからもやっていくつもりはないです!ってことを最後に記載しておきます。ぜひ、ファクトブックを見てみてください。渾身の作品です。

2021年7月
株式会社ネクイノ 
代表取締役 石井健一


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