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「知的コンテンツ製作×ギグワーク」が上手くいってる話 -モンハン型雇用にはハンターランクがあるといい。


家を出る度に、向かいのマンションに停められている自転車が目に入ってくる。いつ見ても、後部には「Uber Eats」のロゴが入ったバッグが据え付けられており、完全に配達専用の自転車であることが伺える。最近はUberEats配達員を生業にする若者も多い。この自転車の持ち主もそうなのだろうか。

もしかしたら、知らずしらずの内に、彼と顔を合わせているのかもしれない。僕が昨日注文したカレーを運んでくれた中国人風の男は、この自転車の持ち主だったのかもしれない。

そうだとしたら、実に滑稽だ。僕たちはほんの10mの距離に住んでいるのにお互いを認識せず、食事と金銭のやり取りをしている。割高な配送料を払って、カレーという日常食を運んでもらう。配送料なんか払わずに、一緒にカレーを作って分け合った方が安くて楽しいかもしれないのに。

東京という巨大な都市で他人と隔絶されるために金を払い、サンフランシスコという巨大な都市のハイテク企業を肥えさせている。テクノロジーも金も、人と関わらずに済ませるための免罪符に過ぎない。

世界的ITプラットフォーマーなどといえば聞こえはいいが、何のことはない。Uber社は腐敗したカトリック教会と同じことをやっているのだ。いつか現代のマルティン・ルターが、宗教改革を始めるだろうか。




……とまあ、ニヒルな書き出しをやりたい気分だったので勢いでやってしまったが、全然本音ではない。物書きなどという難儀な商売をやっているので、嘘八百を書き並べることに抵抗がなくなってしまった。

僕個人としてはUberEatsに対して悪感情は全くなく、むしろ素晴らしいサービスだと思う。仕事が建て込みすぎて家から出る時間が惜しい時、アプリで1分で食事を注文できるのは実に頼もしい。


そんなUberEatsはここ数年、色々な意味で耳目を集める話題となっている。特にホットなのは配達員の待遇であろう。

「ギグワーク」という言葉が定着して久しい。UberEats配達員が増えるのに伴って、急速に人口に膾炙した感がある。ジャズにおけるギグセッションのように、気まぐれに働き、気まぐれに終える。ややこしい長期契約やバイトのシフトのような概念はなく、好きな時に好きなだけ働くスタイル。

こういうバズワードが生まれると、評論家たちはこぞって社会批評を始める。福利厚生も社会保障もないギグワークに従事する若者の貧困がどうのこうのとか、先行きの見えない日本経済がどうのこうのとか、彼らはいつ見ても将来を憂えている。「空が落ちてきたらどうしよう」と不安がった杞の国の人間と大して変わらないようにすら思われる。「杞憂」という言葉は近々、「評論家憂」に置き換えられるかもしれない。


フルタイムでUberEats配達員をやるのが賢明な選択かという問題は置いておいて、ギグワークがたくさん存在している社会は素晴らしいと思う。

僕も20代前半、ワケの分からないギグワークをたくさんやった。友だちのお笑いライブで照明係を担当して1万円もらうとか、住んでいたシェアハウスの腐りかけたウッドデッキを破壊して1万円もらうとか、そういうギグワークで口に糊していた。

勤めたことがないからよく分からないのだけれど、僕は多分、会社勤めよりはギグワークの方が性に合っている。ギグワークは楽しい。ルーティンから完全に自由になれる喜びがあり、「気が向いた時だけ働けばいい」という圧倒的な気楽さがある。

評論家は偉そうに「希望が見えない若者の絶望が……」と言っているが、僕の実体験からすると、ギグワークをかき集めて暮らしている若者はさほど不幸ではない。経済的ゆとりはなくても、気まぐれにウッドデッキを破壊する生活は楽しかった。


月並みな結論になるが、社会には選択肢が多い方がいい。ギグワークが転がっていないよりは転がっている方がいい。会社勤めに適性がなく、時間を持て余した人たちは、インターネットで無限に管を巻いている。持て余した時間をクソリプ生産に使うよりは、カレーを運ぶことに使った方がいい。

僕は最近、インターネット芸人としての仕事が忙しく、ギグワーク的なものを引き受ける時間がほとんどなくなってしまった。

だけど、ギグワークには深く関わっている。知的コンテンツの製作外注を、ギグワーク的な仕組みで行なっているのだ。受注側ではなく、発注側としてギグワークについて考えることが増えた。

この仕組み、最初は思いつきで始めてみたのだが、思いのほか上手くいっている。

これは面白い事例なのではないだろうか。UberEatsをはじめとするギグワークのプラットフォームは、ほぼ単純肉体労働に限られる。知的労働をギグワーク化した事例は、おそらく珍しいだろう。


だから、今日はその知見をシェアする記事を書いてみる。珍しくビジネス知見系の記事である。いよいよ胡散臭いインフルエンサーみたいになってきた。明日からTwitterで「ほりもと社長@年商10億」とか名乗り始めるかもしれない。僕が30万円の高額セミナーを売り始めたら、皆さんぜひこのマガジンの過去記事を送りつけて目を覚まさせてほしい。

なお、あらかじめ断っておくが本手法に再現性はまったくない。あくまで「やってみたらこうなった」という話であり、ノウハウの類ではないことに留意されたい。何かのヒントにはなるかもしれないが、あなたの役に立つかどうかはまったく分からない。

以下、具体的な話は有料になる。単品購入(300円)もできるが、定期購読(500円/月)がオススメだ。いつ始めても今月書かれた記事は全部読める。1月は5本更新なので、バラバラに買うより3倍オトク。



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