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病床における読書の最適解。一生、どうでもいいことを言い続けたい。

先週は久しぶりに高熱を出して、数日寝込んでいた。高熱ならばCOVID-19だのインフルエンザだのが真っ先に脳裏によぎる世の中で、シンプルにただの風邪だった。天邪鬼な人間だから、病まで天邪鬼だ。

小学生の頃は、熱が出ると少しだけ嬉しかった。学校が嫌いな子どもだったから、休む口実ができるのは嬉しい。


社会人になってからは、そうも言っていられなくなった。自分が休んでいる間に小人が仕事をしてくれるなら高熱は嬉しいが、残念ながらそういう小人はまだ発見されていない。熱が出ても一定の仕事はやり続けないといけない。

小説新潮の連載原稿のゲラをチェックして赤入れしたり、動画のチェックをしてフィードバックをしたり、「今日中にやらないと甚大な被害が出る」と判断したものだけを優先して片付ける。38.8℃の中でチェックした創作物が正常な品質なのかは分からないが、あとはもう諦めて担当編集者に任せる。任せておけばそう悪いものにはならないだろう。信頼できる人たちと仕事ができていることを感謝するばかりだ。


小説新潮3月号に、高熱でチェックした原稿が載ります



病床読書の最適解

体調を崩した時点で、ゆる言語学ラジオの収録日が迫っていた。一刻も早く治さねばならない。カスみたいな体調でカスみたいなパフォーマンスを出してしまったら、自己嫌悪で死にそうになるから。

「とにかく少しでもたくさん眠ろう」と、極めて原始的な発想で、可処分時間はすべてベッドに注ぎ込んだ。休日に惰眠をむさぼるのは幸せだが、義務感に駆られて眠るのは不幸だ。

途中、眠りすぎてまったく眠れなくなった。高熱で眠れなくなると人間はイヤなことを考え始めてしまう。山積しているタスクや、今後の経営計画の不安などが頭を渦巻き始める。これは良くない。いっそ起きて気を紛らわした方がいい。

さりとて、仕事をすると余計に体調が悪化しそうだし、だからといって体力を使う遊びもできない。そこで僕が選んだのが、『波紋と螺旋とフィボナッチ』だった。

発生学の先生が書いている、ライトな科学エッセイ本。シマウマの縞がなぜできるのかとか、巻き貝がどうやってできるのかとか、そんな話を平易に楽しく書いているらしい。おもしろいという評判は前から聞いていた。

しかし、一切読まずに本棚の肥やしになっていた本だ。オシャレなタイトルとシンプルな装丁に惹かれて衝動買いしたものの、読む機会を逸していた。


読むタイミングが来たな、と思った。この本は多分、病床で読むのにピッタリだ。

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