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ギャラを上乗せすべき相手3選。訴訟リスクはすぐに負う。僕の自営業者しぐさについて。

江戸しぐさ」はかなり眉唾であり、江戸時代にはなかった創作でほぼ間違いないと言われているそうだ。

真偽のほどについて、僕はさっぱり分からないし興味もないのだけれど、「江戸しぐさ」という概念自体はおもしろいと思う。

江戸時代の人々は雨の中ですれ違うとき、傘を傾けていた……いかにもありそうな話だし、そこに名前をつけたのもエラい。そう言われると現代に受け継がれる我々のちょっとした動きは「江戸しぐさ」であるような気がしてくる。


そして、自営業者においてもしかりだ。

僕はかれこれ自営業者を6年以上やっているが、その結果身についた「自営業者しぐさ」がたくさんある。

たとえば、ギャラ交渉。値段を提示しろと言われた場合、基本的には「この値段ならテンション上がるからやってもいいな」から算出するのだが、習熟した自営業者は本能的に調整を入れる。これは自営業者しぐさである。

典型的なのは、日本の上場企業から来る仕事だ。おかたい上場企業は大抵の場合、担当者の決裁権がひたすらに弱く、彼の言うことはアテにならず、何度も何度も決定を覆される。

出した企画書に対して「3ヶ月ほどお待ちください」と言われ、3ヶ月後に「まだ通すのに手間取ってまして、今度の会議で説明に出向いてもらっていいでしょうか?」と聞かれることもある。その頃には、僕は3ヶ月前に出した企画をもうやりたくなくなっている。やりたくない企画をプレゼンするのは地獄としか言いようがないので、「会議に出るなら別途相談料を◯円頂戴しますがよろしいですか?」と聞く。「それも決裁に回さないといけないのでちょっと厳しいです。どうにかタダで出てきてください」と言われる。僕はストレスで死ぬ


そういう経験を何度も繰り返した結果、「わあ~!おかたい上場企業からの依頼だ~!!相場は20万円だけど50万円にしよ!」という値付けをするようになった。本能とカンに頼って、テキトウな調整をしながら見積もるのが自営業者だ。この調整の精度は年々上がっていて、最近は「失敗した!」と後悔することがずいぶん少なくなった。(それでも年に何度かはあるのだけれど)


ということで、今日はこういった「自営業者しぐさ」について書いてみたい。ざっくりこんな内容を書く。

・ギャラを上乗せすべき相手3選
・無言で引かれていく「評価の残高」を正しく測る
・契約書はテキトウではいけないが、テキトウでOK

途中から有料になるが、気になる方は課金して読んでほしい。

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知的ゲームとしてのギャラ交渉

前述の通り、ギャラ交渉は本能とカンに頼りつつ、手持ちの情報をフル活用して最適解を探る高度な知的ゲームだ。

基本的には「仕事量とストレスに応じた、納得できる金額」をもらえばそれでいい。シンプルである。

一番楽なのは、気心の知れた友人からの依頼である。「こんなん作ってくれや。こういう条件で◯◯円で」と言われたら、「オッケー!」と快諾できる。ムチャを言われることもないだろうし、めんどくさい折衝もない。納品したものはだいたいにおいて一発OKだ。フリーランス・中小企業経営者の友人から発注される仕事は本当に楽しい。


一方、ややこしいのは「あんまりやりたくない」と感じているもの。

あまりおもしろくないイベントに出る時とか、あまりおもしろくないインタビューを受ける時とか、あまりおもしろくない企画をやる時は、ギャラをたっぷりもらわなければいけない。それを何のためにやっているのかというと、金のためだからだ。

逆説的だが、つまらないものを作るためには金がかかるし、面白いものを作るのにはそれほど金がかからない。つまらないものはプロダクトに魅力がないので、クリエイターを金で集めるしかない。面白いものは安くても協力したい人が集まるので、安価で良いクリエイティブができる

ザッカーバーグは「広告費は、企業がつまらないサービスやプロダクトをつくったことに対する罰金である」と言ったらしいけれど、クリエイターへの外注費も罰金に似ている。つまらないものには高額のギャラが生じるものだ。


そういうことで、つまらない仕事には十分なギャラを請求したいのだが、ここで問題になるのがクライアントの懐具合である。

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