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一周回って村を作っている感覚。見つかりまくるミス、壊れるPC。キッチンにタープを張る日々。


かつて、山奥の土地で、月額会員制村作りサービスをやっていた。

この時期、よく話題にしていたことがある。「都市とは本質的に、不確実性を取り除くためのものだ」という話。

都市の本質なんて大仰なテーマを語れるほどの知識も経験も持ち合わせてないのだけれど、そんな話をよくしていた。カメラもマイクもない雑談では、どれだけ偉そうなことを語っても石が飛んでこない。ネットに雑談を垂れ流していなかったあの頃は実に平和だった。


絶望ハメハメハ大王

村作りをしていると、とにかく何もかもが不確実である。

まず、最大の変動要因が、天気だ。

山奥で家を建てるワークショップなんかを企画すると、まず確実に雨では実行不能なので、「雨天中止」ということになる。

家を建てるワークショップの単価は高い。食費・宿泊費・建材費・機材費・講師の人件費などすべて込みで参加費を取るので、2泊3日でひとり3万円とかだったはず。

参加者が15人ぐらいなので、3万円×15=45万円で、そこそこ大きな売上が立つ。「家を建てるワークショップ」はビジネスの柱になるような大きな企画だった。

さらに、建てた家はその後、宿泊施設や村民の滞在場所として活用できる。つまり、「ワークショップで家を建てることにより村が発展していく」のである。単発のワークショップとして儲かるだけでなく、その後も有効活用できるという完璧なビジネスモデル。最初にこれを思いついたとき「薄々気づいていたけど、やはり僕は天才だったのか…」と自分の才能に震えた。


が、結果から言えば、これは間違っていた。僕はビジネス的にまったく美味しくない企画だった。良いビジネスモデルに思えたのだが、雨天中止リスクを加味すると、途端に美味しくなくなる

告知をして集客をし、参加者たちと連絡を密に取りながら彼らのテンションを上げておき、準備をさせる。

材料を買い集め、講師をブッキングし、タイムスケジュールを組み上げる。

全ての準備を整えた上で、前日になって「やっぱ明日雨だわ」となる。地獄である。

労力が全部ムダになった上に、振り込まれていた参加費は返金するので、売上はゼロである。ゼロっていうか、返金にかかる振込手数料の分だけマイナスになる。ワークショップに向けて色々準備してしまった出費も回収できず、完全な赤字で終わる。

そんなワケで、僕は「雨がふったら大赤字」という絶望ハメハメハ大王みたいなビジネスをやっていた。


あと、電気・ガス・水道のインフラがない状態で生活していたので、この意味でも雨が降ると悲惨だった。

電気はすべてソーラーパネルで充電したものをバッテリーに蓄電するというスタイルだったので、雨が3日間続くと家の電気がなくなるのだ。

「スマホの充電が切れた」という経験をお持ちの方は多いだろうが、「家の充電が切れた」という経験をお持ちの方は少ないだろう。僕はしょっちゅうやっていた。


雨以外にも、村での生活はとにかく不確定性に悩まされた。

一番は、である。

道の環境がとにかく悪いので、車に関するトラブルはほとんどすべて起こる。「客が脱輪して動けなくなったので助けに行く」というイベントはのべ30回くらい起こったし、自分の軽トラは崖に落ちかけたし、ぬかるみまくった道を何とかしようと砂利を撒いてたらキリがなくて結局2トン撒いたし、散々な目に遭った。


それから、唯一引いてあるインフラ「ネット回線」も大変だった。

業者が光ファイバーを引いてくれるのは電柱のすぐ近くだけであり、うちの村は最寄りの電柱まで徒歩600mだったので、600mのケーブルを自力で引かなければいけなかった。

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