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慶大生社長に弟子入りしてみた結果【前編-アンシャン・レジーム懐古厨】


僕は4年間、慶應義塾大学に通っていたのだけれど、とても良い大学だったと思っている。

大学内でよく入り浸っていた場所は、図書館だ。蔵書はかなり豊富で、特に理系キャンパスの図書館で専門書を探す時は「頼もしい」という感想しか出てこなかった。何しろ、「クロマトグラフィー」という棚があるのだ。

普通の図書館なら「化学」とか「物理」とかで分けられていそうなものだが、慶應の理系キャンパス図書館には「クロマトグラフィー」専用の棚があった。この棚にはクロマトグラフィー関連の本ばかり並んでいた。


『入門クロマトグラフィー』といういかにも教科書然とした本から…


『あなたの液クロ正常ですか?』という健康不安を煽って売る新書みたいなタイトルの本まで、色々並んでいた。


あと、尊敬できる教授もたくさんいた。日本における古代ギリシャ哲学の第一人者である納富先生の講義が普通に取れた(抽選すらなかった)のはすごいことだと思う。残念ながら、当時の僕にはその価値はあんまり理解できていなかったけれど。

納富先生が翻訳した『ソクラテスの弁明』は、最新の定本とも呼ぶべき存在になっている。

このマガジンの中で何度も『ソクラテスの弁明』を引用してきた。その度に「毎回講義の後で納富先生に質問に行くくらい、もっと真剣に取り組めばよかったな」と頭をよぎる。「仰げば尊し」という言葉は裏を返せば「師の尊さが分かるのは仰ぎ見る段階になってからだ」ということになる。あの時の僕には師の尊さは分からなかった。


専門分野に関して。僕はコンピュータサイエンスを専攻していたのだけれど、超絶高性能のLinuxサーバーが使えて、これもとんでもなくありがたい環境だった。コンピュータサイエンスの勉強につきまとうマシンパワーというストレスから完全に解放されて勉強できる贅沢というのは、そうそう得られるものではない。

専門科目の指導教官も、すごく熱心で良い先生がたくさんいた。「アルゴリズム第一演習」という科目を指導してくれた先生のたった数分の説法で、僕はコンピュータサイエンスという学問に熱中することになった。

情報工学徒である君たちの成すべき仕事は、突き詰めればアルゴリズムを考えることに過ぎない。日常で目にする森羅万象のアルゴリズムに注意を払うことこそが情報工学徒の使命だ。君たちはコンピュータではなく、風に揺れる木の葉や、滴る雨粒にこそ注目しなければならない

大体そんな話だった。これに痺れて、僕は一瞬でこの先生のファンになった。

その講義の教科書だった『アルゴリズムとデータ構造』だけは、未だに捨てられない。


今でも時々この教科書をペラペラめくって、アルゴリズムのことを必死に考えた日々のことを思い出す。とても価値のある学びの日々だったと思う。



……そういうことで、僕は母校に対しては割と感謝の気持ちがある。


すると必然、母校の評判を著しく下げている後輩には物申したくなるものだ。


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(スクショ引用元:かずくん | 慶大生社長Twitter


この「かずくん | 慶大生社長」なる人物は、あまりにもしょうもない発言を繰り返して皆から呆れられている困った情報商材屋若手筆頭みたいな存在である。

しょうもない発言の例を挙げよう。


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(ツイート引用元:こちら


「1人1票の多数決はダメ!年収が高い人ほど選挙でたくさんの票を持つ仕組みを導入すべき!」という発言である。

なるほど、彼は「年収の高い人ほど政治の決定権を持つ」という新しい仕組みを導入して欲しがっているようだ。すごい発想力だ!

日本では1925年の普通選挙法が施行される前には人口の3%ほどの高額納税者にしか選挙権が与えられていなかったので、100年前にはまさに彼の提案する仕組みによって議会が動いていたワケだけど、彼はこの新しい仕組みを導入して欲しがっている。明治時代の制度と基本的に変わらない選挙制度を導入して欲しがっているのだ。これは現代人として実に画期的な発想と言えよう。いやはや頭が下がる発想力だ。


ちなみに、「1人1票」という最も基本的な民主主義のイデオロギーが世界を席巻するきっかけになったのは、フランス革命である。

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フランス革命は世界史上で最も重要なできごとだと言っても決して過言ではないだろう。近代社会の基盤になっている「全ての人間には生まれながらに人権があり、尊厳が踏みにじられてはならない」というイデオロギーが世界中に広がった一大事件であるからだ。

一般に、中世と近代の境目はフランス革命であるとされることが多い。中世とは「封建主義の時代」であり、近代とは「民主主義の時代」である。フランス革命によって人類は中世から近代へ移行した、というワケである。


中世、すなわち封建主義の時代がどんな時代だったかと言えば、民衆が特権階級に虐げられることが運命づけられている時代である。

民衆は立法、すなわち国のルール作りに参加できないので、特権階級に有利なルールが永遠に作られ続ける。特権階級は自分の子どもがまた特権階級になるようにし、鉄の身分社会が絶対に壊されないようにルール作りを続ける。

その結果、庶民の子どもに生まれた人間は絶対に特権階級に逆らえず、虐げられ、時に命まで無惨に奪われてきた。特権階級にルール決定の権利を与えることは、格差が極限まで拡大し、個人の努力では絶対に覆せない社会階級を生み出すことを意味する。

そういう封建主義の時代であった中世が何百年も続いた後、飢餓に耐えかねた民衆の蜂起、すなわちフランス革命によって勝ち取られた果実が民主主義であり、「1人1票」の時代なのだ。


慶大生社長は本質的にフランス革命以前と変わらない制度を望んでおり、要するに彼は「中世に戻ろうぜ!!」と叫んでいることになる。

フランス革命以前の体制のことをフランス語で「アンシャン・レジーム」と呼ぶが、彼は「アンシャン・レジームを復活させよう!!」と言っているワケである。逆フランス革命

「昔のインターネットは面白かったけど、今はもうダメだね。10年前に戻りたい」みたいなことを言う人を懐古厨と呼んだりするが、慶大生社長はスケールが違う。10年前どころか300年前に戻りたがっている。アンシャン・レジーム懐古厨である。


……手前味噌で恐縮だが、「アンシャン・レジーム懐古厨」ってめちゃくちゃ良い響きじゃないだろうか?七五調でバシッと決まる韻律がとても魅力的だ。声に出して読みたい言葉だ。

「慶大生社長」などという珍しくもない肩書きよりも「アンシャン・レジーム懐古厨」の方が圧倒的に響きが良いので、ぜひ彼にはこちらを採用して欲しい。

彼が「かずくん | アンシャン・レジーム懐古厨」というアカウント名になるのを心待ちにするばかりである。いつか彼が「新しい肩書きをアンケートで決めます!」と言い出したら瞬時に「アンシャン・レジーム懐古厨」という候補を挙げようと思っている。ホリエモンがかつて新しいあだ名を募集した時に「ゼンカモン」が一番人気になったインターネットの奇跡を、もう一度再現したい。



情報商材屋第一演習

ただでさえアンシャン・レジーム懐古厨をやっていて母校の評判を下げている慶大生社長だが、なんと彼は理工学部らしい。僕と一緒だ。ますます見過ごせない。

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ちなみに、慶應理工を卒業した有名人で言うと、他にはDaigoさんもいる。


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(画像引用元:トウシル


何なん??慶應理工って入学すると怪しい情報商材屋みたいなヤツになるん???そういう単位あんの???「情報商材屋第一演習」っていう必修あんの???

……と、皆さんから思われてしまいそうである。僕はOBとしてハッキリ言っておくが、「情報商材屋第一演習」という必修科目はない。ごく一部悪目立ちしている人がいるだけであって、僕の学科の同期はNTT研究所とかに就職して、日本の最先端技術を支えている。

あんなに良い教育・研究機関が情報商材屋育成機関だと思われたら不本意すぎるので、皆さんにはそれを分かっていただきたい。


「大学は完全不要」

さて、慶應の理工学部はとても良い場所なのだが、慶大生社長は「完全不要」だと言い張っている。


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(引用元ツイート:こちら


僕が通っていた慶應理工学部ではそこそこハードな必修実験が課されており、教員が一週間かけてじっくりレポートを読み込むシステムだったので、コピペで乗り切ることは絶対に不可能だった。そもそも、自分で実験を行って出た結果に対して適切な分析をしなければならないので、他人のレポートをコピペしたら整合性が取れない

今でも理工学部実験の基本的なシステムは変わってないはずなのだけれど、慶大生社長はパラレルワールドの慶應理工に通っているのだろうか。謎が深まるばかりである。


というか、「大学は完全不要だ!」と断言して一般教養の勉強をサボっているからアンシャン・レジーム懐古厨になってしまうのではないかと思う。ぜひ彼には基本的な人類思想史を学んでみて欲しい。本来大学1~2年生の間というのはそういう一般教養を学ぶための期間である。


「大学よりも学びのあること」

更に、彼はこんなことも言っている。

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(引用元ツイート:こちら


マジで……????「大学よりも学びのあること」を配信してんの……???

僕は前述の通り、大学でめちゃくちゃ良い学びを得たんだけど、彼の公式LINEに登録すればそれ以上に学びが得られるらしい。

古代ギリシャ哲学研究のトップランナーの講義を受けたり、最高のLinuxサーバー環境を使ってプロフェッショナルの下でコンピュータサイエンスを学んだりする経験を全部足し合わせた大学4年間よりも多い学びを得られるらしい。一個人の公式LINEなのに。その個人の能力すごすぎん??


……皆さんはここまで読んで、「慶大生社長、頭が悪すぎるなぁ」と思ったかもしれない。僕は皆さんに忠告したい。そんなひねくれた見方をしてはいけない、と。

僕は皆さんと違って純真無垢な心を持っており、まず人を信じることにしているので、「すごい!!この人の公式LINEに登録すれば大学よりも学びが得られるんだ!!」と感動した。

そして、早速彼の公式LINEに登録して、彼に弟子入りしてみることにした。何しろ大学よりも大きな学びが得られるんだから、変な情報商材屋にLINEを補足されるリスクなんて安い代償である。


弟子入りしてみた

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弟子入りすると、まずこういう画面が表示される。画面の下半分はインスタ映えスポットで撮影したよく見る写真で埋め尽くされておりイラッとさせられるのだが、これはきっと大きな学びを得るための試練なのだろう。大学で学びを得るためには入学試験を突破しなければならないし、彼から学びを得るためにはイラッとする写真に耐えなければならないのだ。


イラッとする写真に耐えながら「限定動画をGET」のボタンを押すと、早速「公式LINE登録特典動画」とやらが2本送られてきた。これが彼の言う「学び」らしい。

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さあ、僕はこれで大学よりも大きな学びを得られるぞ!!ワクワクが抑えられない。何が学べるんだろう。大学で学べないレベルのことなんだから……未解決問題についての知見とかだろうか。ナビエ–ストークス方程式の解の存在と滑らかさについて大きな知見とかが得られるんだろうか。この動画を見ればナビエ・ストークス方程式には滑らかな解が常に存在することを示せるようになるのかもしれない。


早速送られてきた動画の内容を見てみよう。まずは1本目……に入る前に、ここから有料になる。

有料部分では、実際に送られてきた動画の内容を見ながら、慶大生社長についての評価をしていく。僕の弟子入りの成果を皆さんに共有するという趣旨である。

有料部分ではこんな内容を扱う。

・弟子入りしてみた結果、どんな動画が送られてきたのか?本当に大学より大きな学びを得ることができたのか?
・彼の動画は、ボグダノフ事件と同じである。「アンシャン・レジーム懐古厨」に続き、「誤字のあいみょんボグダノフ」というあだ名も使える
・動画の続きを見るためには次々に試練が課されるという、ドラゴンクエストみたいな世界観になった。試練を次々こなしていくとその先には……?


慶大生社長に弟子入りするとどんな気持ちになるか知りたい方にはピッタリな内容だと思う。ぜひ課金して読んで欲しい。

また、この記事は2本立てになっている。前後編で、僕の弟子入り記録を余すところなくお伝えしたいと思う。前後編をセットで通して読んでもらえれば幸いだ。

この記事の単品購入(300円)もできるが、定期購読(500円/月)がオススメだ。今月定期購読を始めれば今月更新の5本の記事は全て読むことができるので、それぞれを単品購入するよりも3倍オトク。また、11/30(月)に更新される【後編】も合わせて読むことができる。前後編をバラバラに買うよりも安いのでぜひ定期購読を検討されたい。




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