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小規模M&A失敗事例-300万円でノリで会社を買ってはいけない


半年くらい前に、『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』という本を読んだ。タイトル通り、M&A(事業買収)についての本だ。

これがまあひどい本だった。全然面白くないし、参考にもならない。

何といっても、具体例がほとんどない。「町の豆腐屋を買って第二の人生を歩み始めた」みたいな小さくて興味深い実例が出てくるのかと思ったらそんなことはなく、「商材はしっかりしてるのに業務の効率が悪い会社を買って効率を改善すれば、10倍の値段で売ることも可能!2000万で買った会社を2億にして売れるぞ!」みたいな、日本酒を4合空けた後に出てくるたわごとみたいな話が連続する。著者、日本酒を4合空けた後に原稿書くタイプの人なのかもしれない。


業務効率化の話についても、控えめに言って夢物語という感じだ。

・地方の町工場などは、技術力はしっかりしているのに、業務効率がめちゃくちゃなことがザラにあります。

・在庫管理や帳簿を未だに紙と電卓で手計算してる、なんて非効率もよく見ます。

・そこでサラリーマン経験を積んだあなたの登場です!この会社を買って社長として改善に乗り出しましょう!

・エクセルを導入して、非効率を失くせば、あっという間に利益率が爆上がり!

あなたはやり手社長として、莫大なお金をゲットできます!

僕はこの部分を読みながら、強烈な既視感に襲われた。これに似た本、どこかで読んだことがある。


しばらく考えてから、結論が出た。進研ゼミのマンガだ。

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(画像引用元:ねとらぼ


進研ゼミはマイペースで続けられるし、部活も勉強も両立でき、おまけに恋愛もバッチリだぜ!という、小学4年生でもギリ信じない夢物語に似ているのである。

そんな本が50代のサラリーマンにウケているというのだから世も末である。人間は、「進研ゼミを始めても人生が好転しなかった経験」から何も学べないようだ。何度でも同じ失敗を繰り返す。

こういう本を真に受けて夢中になる人、「進研ゼミおじさん」と名付けたい。「子供部屋おじさん」というインターネットミームが定着して久しいが、より絶望的な単語として積極的に使っていこうと思う。



さて、進研ゼミおじさんにバカウケの本書には、もう一つ特徴がある。「今のあなたは素晴らしいですよ」と、読者を肯定してくれるのだ。

イメージとしては、怪しい自己啓発セミナーに近い。

本書では繰り返し「あなたは自分のことをただのサラリーマンだと思っているかもしれませんが、大企業で仕事を叩き込まれてきたあなたの能力にはかけがえのない価値があります!」という文章が出てくる。

要するに、承認に飢えているサラリーマンを認めてあげて感動させるという、ビジネス書の皮を被ったスピリチュアル本みたいな本なのである。


僕はこういう「内容としては毒にも薬にもならないんだけど、読んでなんとなく安心する」本のことを「アロマ本」と呼んでいる。この本は典型的なアロマ本と言えよう。

アロマを嗅がせてリラックスさせた後に何が待っているのかは分からない。本当にそれだけの本なのかもしれないし、セミナーで高額商材を売りつけたり、コンサルという名目でお金をむしり取ったり、ゴミM&A案件でゴミ企業を売りつけたりするのかもしれない。僕は想像することしかできない。こういうセミナーに出て大損こいた知り合いとかがいる人はぜひ紹介してください。DMお待ちしております


僕が間近で見た失敗事例

小規模M&Aといえば、忘れられない失敗事例がある。

僕はその事例の失敗を一番間近で目撃した。「事業を買って、こんなにグダグダになることあるんだ」とずいぶん感心したものである。

今日はそのことについて書く。具体的にどういう話なのかは、先方に迷惑をかけたくないので無料部分ではボヤかしておく。気になる方は課金して読んで欲しい。なお、単品購入(300円)もできるが、定期購読(500円/月)がオススメだ。6月は4本更新なので、バラバラに買うより2.4倍オトク。いつ入っても今月書かれた記事は全部読める。


ということで、以下有料になる。特に有益な内容ではないだろうが、上記の進研ゼミ新書よりは興味深い具体例の提供になるだろう。百万円単位の極小M&Aがどんなノリで進められ、どんなノリでグダグダになっていくのかが分かるはずだ。興味本位で小規模M&Aの実例を知りたい方にオススメ。

ある意味、本記事は『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』という主張の反例になると思う。この記事を読み終わった後、「サラリーマンはノリで小さな会社を買ってはいけない」ということがよく分かっているはずだ。


それでは早速、何がいくらで売られたのか、見てみよう。



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