デジタルマーケティングが示唆するHR Techの近未来。
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デジタルマーケティングが示唆するHR Techの近未来。

ハイマネージャー / HiManager

今回ご登壇頂いたのは、パナリット・ジャパンの共同創業者・COOのチー・トランさん。

トランさんは、BCG→Recruit→Googleを経て、昨年10月にパナリット・ジャパンを共同創業され、ピープルアナリティクスの専門のデータインフラBIを提供されています。

今回は、そのようなピープルアナリティクスに精通されているトランさんから、HR文脈でのDXについてお話頂きました。

※今回は、2020年8月5日に開催されたHR Millennial Lounge#10」のレポートをお届けします。

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はじめに

本日はお招きいただきありがとうございます。
チー・トランと申します。元はベトナムの出身です。

前職はBCG・Recruit・Googleとなっており、今でいうデジタルトランスフォーメーション(DX)のようなことを事業開発やマーケティングの領域でやってきたのが私のキャリアになるのかなと思います。

そして、去年の10月にピープルアナリティクス専門のデータインフラBIを提供しているパナリット・ジャパンを共同創業しました。

私のキャリアとしてもデジタルマーケティングが長かったということもありますし、大きなデジタルマーケティングの変化の時にGoogleにいましたので、デジタルマーケティング黎明期であった2013年から成長期に突入した2019年までの変動についてと、今後HR分脈でのDXに生かしていく上でどのように活用できるかお話したいと思います。

具体的には、①HRの外側で起こったことが近未来的にどのようにHR領域に押し寄せてくるのか、②HRのDXをもっと加速させていく上でどんな学びがHRの外側から持ってこれるか、について話していきたいと思います。

①HRビジネスの全体像は、人事領域×提供価値×提供手段

HR Techの近未来を話す上で、まずは一歩引いてみてHRビジネスとは何かを考えてみます。

私なりに要素分解すると、人事領域×提供価値×提供手段に分けられると思います。

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「人事領域」について、従業員ライフサイクル呼ばれるような採用から労務管理から評価、エンゲージメント、離職という領域の一部、もしくは全部に対してサービス提供されている、サービスが多くなっていると考えられます。

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そしてそれらの「提供価値」は、3つのプレイヤーに分かれます。

一つ目は普段人事管理に携わられている業務そのものをより効率化したり自動化してあげる領域(川上の領域)、

二つ目は、それらの業務を通じて得られたアウトプットやデータの取捨選択を行うための意思決定の効率化の領域(川中の領域)、

三つ目に、意思決定された施策を実行に移すための実行支援の領域(川下の領域)の3つに提供価値は分離されると考えています。

最後に「提供手段」ですが、ざっくり分けると、労働集約的にアナログで行うか、テクノロジーを駆使するか、の2点に別れると思います。

通常HRTechと呼ぶときは、手段はテクノロジーになっていると思いますが、誰に対してどのような価値を提供するかは様々な組み合わせがあるのではないかと思っており、上記の組み合わせが、HRビジネスの全体像だと思っています。

HR Tech1.0は、川上領域が中心

HRビジネスの全体像をお話した上で、現在のHR Techがどのようにプロットされるかご説明していきます。

丁度最近、日本でもHR Techサービスは450程度あるとのデータを拝見しましたが、現在をHR Tech1.0と仮に命名すると、基本的には川上領域(=業務効率化する領域)×エンプロイーライフサイクルの1-2部分の最適化を行うサービスがほとんどになると思っています。

では、残りの川中・川下の領域はどうなっているかというと、HR Tech1.0の時代では、まだまだあまりテクノロジー化されていないのが実態だと個人的にはみています。

特にこの川中の領域はテクノロジー化されていないというのは語弊があるかもしれませんが、まだまだ人手を介さないとここの領域はまだ十分対応しきれていないというのが現状です。

データの統合/可視化・インサイトの提示などは、各企業にいらっしゃるピープルアナリストですとかデータサイエンティスト、エンジニアの方々が、BIツール・DWH・ETLツールのようなものを駆使して使いこなしながらこの領域をやっているか、この領域は全くやらず、経験と勘と度胸でやり過ごしているというのが現状です。

一川下の領域というのは、HR Tech1.0においても人事や組織専門のコンサルタントの方々が価値を提供している領域なのかなと思います。

HR Tech2.0は川上から川中への合従連衡が勃興

それでは今後HR Tech2.0となるとどう変わっていくのでしょうか。

先ほどと同じ観点で、人事以外にも財務、マーケティング、営業というようにB2B全体を俯瞰してみると、ここ5年10年で合従連衡がかなり進んだというのが答えだと思います。

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10年から20年前ぐらいにまず最初に生まれたマーケットとしては、川上領域のHorizontal SaaSで、営業/マーケであればSales Force、財務領域であればマネーフォワードのようなFintech専門のSaaSなど、業務の効率化を網羅的に行えるサービスが生まれてきました。

その後、これに追随する形で川中・川下の方でもそれぞれの領域に特化したHorizontalなBIが生まれてきたというのが現状です。

そのような中で、ここ2-3年では、川上のHorizontal SaaSが川中のHorizontal なBIをM&Aする、しかも場合によっては1兆円の規模での取引になるような動きがみられたのかなと思います。

そして、この川中の領域と川下の領域も合従連衡とまではいかないものの、パートナーシップやジョイントベンチャーといった動きが今後見られるようになるかなと思っています。

では、それを踏まえて、人事領域がどうなるかをご説明いたします。

現状は川下の領域でHRテック1.0というのが盛り上がっており、2023年になると約1,000億円になると言われています。

今後は、それに追随する形で、人事領域の川中も他領域で起こったのと同じように勃興してくると思っており、People Analytics市場というような新たな市場が生まれてくるというのが私の見立てです。

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では、なぜこの川上から川中の拡大は自前でサービス開発するのではなく、川上の企業が川中の企業を買収することで合従連衡してきたのでしょうか。

実際にSalesforceやSAPの人の声や行動基準を踏まえると、主に3つのポイントがあるかなと思っています。

一点目は、業務効率化を追求する上でのUI/UXを極めることと、業務効率化により生まれたアウトプットのデータをクレンジングして現場の意思決定に活用していくケイパビリティーは全く別物といえるからです。

そのため、新たにケイパビリティーを高めていくよりは、既に持っている会社を買ってしまった方が効率的であると考えられます。

二点目は、同様に業務効率化を極めるUI/UXとデータを現場や経営の判断に生かしていくUI/UXはまた別のものであるということです。

三点目は、もともと営業領域などHorizontal SaaSとなっている企業も徐々に自身の分野(Sales Forceなら営業以外等)以外の領域にも進出していきたいという形での成長シナリオを描いているため、領域に限らずデータ統合や活用に強い会社が求められているためと考えています。

この流れは何年後かは分からないですが、人事にも同じよう起こるのではないかなと思っています。

どのような順番で起こり得るかは現時点では何とも言えないですが、個人的には人事領域の横のつながりが一番最初に強くなっていくのではないかと考えています。

HR領域のデジタルマーケティング化

続いて、デジタルマーケからHRの領域(CXからEX)に、生かせそうなことはについてお話できればと思います。

2013年から19年のわずか5年間でデジタルマーケティングの世界は完全に別世界になったと思うのですが、どのような変遷で進化を遂げたのかということを、6つのステップに分解してみました。

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まず一番最初に起きたことは、スマホの普及とかに代表されるような、企業側のビジネスモデルや企業と消費者の接点がデジタル化してきたことだと思います。

接点デジタル化してきたことで、デジタルなデータを取得しやすくなったというのが2点目の変化になります。

続いて、デジタルなデータを取得しやすくなると、今度は発生するニーズとしてはそうしたデータを加工したり・処理する技術や、それを使いこなせる専門性人材というのが増えてきました。

その上で、データ処理の技術が高まってくると、効果検証の精度やスピードなど、要はトライアンドエラーの発生件数が飛躍的に増加するという変化がきました。

こうした効果検証の制度とかスピードが増して、事例がどんどん積み重なっていくと効果検証の事例が企業の垣根を超えて集合知化されはじめめます。

集合知化されていくと、企業のビジネスモデルやか企業ブランドの成長ステージなどによってどのようなKPIが最適なのか、そのKPIを改善するための最適な方法は何かが定型化されるという変化が生まれます。

そして、直近2・3年になりますが、いわゆる機械学習がかなり進展してきたので、ご紹介した変化に関わる一連のプロセスの精度もスピードも何百倍も改善したというのが最後の変化となります。

そして、これはHR分脈に置き換えてもほとんど同じことが起こりえるのではないかと思っています。

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デジタルマーケティングでいう、接点のデジタル化・デジタルなデータの取得については、HR Tech1.0の功績であり、HR Techの様々なサービスが誕生したことで、かなり進展してきました。

そしての、その後の変化のプロセスとなる、データを駆使した意思決定の高度化・効率化にどのように生かしていくのかがHR Tech2.0のカギとして期待されている領域になっていると考えます。

デジタルマーケティング⇒HRへの示唆①:ファネル思考

また、少しミクロな話も含まれますが、デジタルマーケティングの3-6つ目の変化の中で、過去5年で進展したことと、まだ進展しきっていないけどこれから起きることについて、HR領域への影響も含めてお話いたします。

一つ目はファネル思考です。
ご存知の方も多いかもしれませんが、マーケティングもテレビ広告がメインの時は、テレビ広告に1億円使い、視聴率もある程度取れているから来年も同じ予算を使おうといった形で、かなりいい加減に意思決定をしていました。

しかし、今では、管理デジタル広告のクイック率やコンバージョンレートなど細かくデータを取れるになったため、ユーザージャーニーをファネルに分解して、そのファネルに応じた最適なKPI設定・オペレーション・マネジメントができるようになりました。

これは、人事文脈にも生かせる話で、例えば採用ファネルも募集団形成から動機づけして入社してもらうまでのプロセスに分解したマネジメントというのが、もっともっと進展するかなという風に思います。

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少し余談になりますが、マーケティングではユーザーの接点がすごく多様化している中で、ユーザーファネルという言葉もあまり使っていない状態になります。

同じようにHR領域でも、候補者が企業のことを知って門戸をたたいて採用のプロセスに乗り、その後入社して仕事をするっていうような画一的なジャーニーも緩やかに崩れていくのではないかと個人的には考えています。

デジタルマーケティング⇒HRへの示唆②:チャーンへの豊富な切り口

二つ目はチャーンの切り口についてです。

プロダクトにおいては解約についてなど、月次のチャーンレート以外(解約率)にも様々な指標で管理しています。

このプロダクトのチャーンの切り口を人事領域、つまり離職率に置き換えると、新たな観点を得ることができると思います。

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現状は、月次の離職率が一番メインと思いますが、例えば、個人的に一番薦めたいのは、Regret Attrition(慰留対象)です。

どんな企業でも離職率を0%にすることはゴールではなくて、その業界に適して一定の基準を維持しながら、健全な新陳代謝を図っていくことがゴールになるかと思います。

そのため、指標としても、要は惜しむべき人材が抜けていないかを見ていく必要があるのです。

既に欧米企業では取り入れられている概念となっていて、日本企業においても重要な示唆となるような指標ではないかと思っています。

デジタルマーケティング⇒HRへの示唆③:LTV・エンゲージメントの定量化

3点目はLTVやエンゲージメントの定量化です。

CXにおいてはロイヤルカスタマーの行動とかジャーニーを分析することで、その傾向値を購買の前のマーケティングにフィードバックするという考え方があります。

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これをEXに置き換えると、Recruitment Outcome分析(入った後にすぐ活躍できるような社員はどのような特徴を持っているか、面接官の目利き力等の観点での分析)として実施できるかと思います。

社員のパフォーマンスを分析することで、採用人事や面接官にフィードバックし、より最適な手法を見つけることが可能になります。

実際、ATS(採用管理システム)とHRIS(人事基幹システム)が乱立しているのでなかなか統合して分析するのが難しい実情ですが、今後これらを結びつけるようなきっかけがあれば、このような分析ももっと進むかなと思います。

あとはONA(組織ネットワーク分析)にかかわるようなとこでは、CXでいうインフルエンサー・アンバサダー分析を参考に、ONAを通じて、社内のハブ人材とを発掘することも今後考えられます。

デジタルマーケティング⇒HRへの示唆④:施策ごとへの最適な予算配分

4点目・5点目は、今後のマーケティングの領域でもまだまだ決着が出ていない2つを紹介ができればと思います。

最近では、Attribution(施策ごとの予算配分)という考え方がマーケティング領域で流行っています。

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要はブランドや消費者候補者が企業を知る接点というのが一つや二つではなく複数個あったときに、そのうちの結局何がどれくらい寄与したのを計測することです。

このようなモデルを検討することがマーケティング領域では流行っています。

これを例えば、求人の領域に置き換えたら、「合同セミナーの貢献率が0.3でLinkedInの貢献率が0.2」といったような形で、施策の重みづけができるようになるので、全体の予算配分の最適化にも活用できるようになっています。

デジタルマーケティング⇒HRへの示唆⑤:施策の自動化

最後に、施策実行までの自動化です。

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マーケティング活動も、単純化するとターゲットユーザーセグメント(WHO)×クリエイティブ(WHAT)×チャネル(HOW)の3つになるのですが、マーケティングの領域では、KPIを最大化するための手法は自動化していく流れとなっています。

例えば、クリエイティブの元ネタだけ入稿したらあとは、機械が適したターゲットとチャネルに対して勝手に何百種類も施策を打っていくような世界観になっています。

これも人事領域に生かすと、例えば、これまではこれまでは誰にどのように送るか悩みながらマニュアルで行っていたダイレクトリクルーティングの作業が、勝手に機械が考えどんどん自動化されるようになっていくのではないかと思います。

ロジックで片付けられない人事データの難しさ

最後に、人事領域ならではの難しさについてお伝えします。

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人事データとマーケティングのデータを両方見た私の肌感になりますが、やはり人事データというのはマーケティングのデータの少なくとも10倍は汚いなと思います。

汚いがゆえに、それをクレンジングして使いこなせるようにする技術もマーケティングとは異なるセンスと設計が求められると感じています。

また、マーケティングのデータと違い人事データはかなりプライバシーに気を付けないといけないため、どのデータをだれにまで見せていいのか、といった設定をマニュアルでやると大変労力がかかってしまいます。

そのため、このデータ参照の権限をどう自動化するかというところもかなりの技術力を求められると思っています。

後、これは人事に限らないですが、人事・経営・現場に役立つインサイトを見せていくは、人事を経験した方しか中々たどり着けないので、デジタルマーケティングができるからすぐにできる内容でもないと思っています。

最後にここは一番大きいところで、単純なロジックで「量×質」の最大化をすることがないのが人事領域の難しいところです。

マーケティング領域だとAIや機械学習で自動化して「量×質」を最大化した際に、多少ユーザーにとって良くない広告があっても問題がないケースが多いです。

しかし、人事領域の場合、ユーザーは社員や候補者になるため、「量×質」を最大化したからといって、彼らの体験や最近話題のDiversity & Inclusionなどの公平性を犠牲にすることはできないので、その辺りの調整が難しくなっています。

逆に言うとこの論点は人事領域の参入障壁でもありながら、解消れば、他領域にもフィードバックもできる内容になるのではないかと思います。

他にも他領域を踏まえて、HR領域でさらに飛躍できる領域などもありますが、お時間になりましたので、今回の話題提供は以上となります。

本日はありがとうございました。

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