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在宅ワークによる「孤独感」「パフォーマンス低下」「コミュニケーション問題」に対して、ネットワークサイエンスの立場から考える。

各分野の専門家を招き知見共有を行う、HR Millennial Lounge。9回目の開催となる今回のテーマは「ニューロサイエンスとテクノロジーで変わるコロナ時代の働き方」

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2人目のスピーカーは、ピープルアナリスト/エンジェル投資家の大成弘子さんです。

コロナウイルスによって在宅ワークの導入が進む中で生まれている問題に対して、ネットワークサイエンスの立場から解決策を提案していただきました。

登壇者プロフィール:大成 弘子 氏
ピープルアナリスト/エンジェル投資家。「働く人々を幸福にする分析」を自分の生涯のミッションとして掲げる。2013年にSNS上での人間関係はリアルとどう違うのかネットワーク分析の論文をPLoS ONEで発表。翌日、MIT Technology Reviewに取り上げられる。2014年に広告会社の新規事業部にピープルアナリティクスサービスに従事したことがきっかけでピープルアナリストとしての仕事をスタートする。2018年より一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会研究員に就任。2019年成城大学データサイエンス教育研究センターアドバイザリー委員に就任。著書として、『データサイエンティスト養成読本~ピープルアナリティクス入門』2018年、『データサイエンティスト養成読本~ソーシャルメディアネットワーク分析』2016年等。

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孤独はつながりを失う「原因」であり「結果」

コロナ時代に実践するネットワークサイエンスの話です。私の仕事の内容としては、働く人々を幸福にするための分析をおこなっています。学問的な専門領域はネットワークサイエンス、その中でも特に人間関係を扱っています。

コロナになってから増えた質問が3つあります。

1つは「在宅ワークで孤独感が増したんだけど、どうしたらいい?」という質問です。2つ目は「在宅ワークでパフォーマンスが下がる社員がいるんだけど、どうしたらいい?」というもの。あとは「在宅ワークでどのようなコミュニケーションをしたらいいの?」という相談です。

今日はこの3つの質問に対して、ネットワークサイエンス的にはどのように答えることができるか、お話できればと思います。

まず最初の「在宅ワークによる孤独感」についてです。

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そもそも「孤独感とはなにか?」と考えると、心理学者のジョン・カシオッポさんが言っているんですが「つながっていないという感情」と定義しています。要は「他人とつながっていたい」という欲求と「現実に存在している繋がり」にギャップがあるときに孤独感を感じると。

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さらに、孤独は伝染すると言われています。

自分の友達が孤独を感じていると、自分も孤独を感じる可能性が52%あるんですね。そして面白いことに、友達の友達を「二次のつながり」と呼ぶんですけれども、友達の友達が孤独を感じていると自分も孤独を感じる可能性が25%。さらに友達の友達の友達までいくと15%になります。

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ただしこれは、家族などを除いた自分の意思でつながっている人間関係のみ影響すると言われています。親が「孤独だ」と感じているより、会社の同僚が「孤独だ」と感じているほうが、自分も孤独を感じやすいということです。

コロナによって何が起きたかというと、これまで出社すればなんとなくつながっている感覚があったものが切断されてしまったということです。さらに、会社の同僚やメンバーが孤独を感じることで、孤独の連鎖が生まれてしまっている。

さらにある調査では、孤独を感じている人は2年から4年の間に平均して8%のつながりを失うと言われています。

孤独はつながりを失う原因にして結果でもあるのです。

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しかし、コロナでつながりが失われているわけではありません。物理的に隔離されただけであって、孤独感はあっても孤独ではない。

では孤独感の対処として有効な方法としては、コミュニケーションテクノロジーを活用することで「つながりの(再)認識」をすることです。業務の連絡だけではなくて、オンライン雑談をするのはとてもいいなと思います。

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パフォーマンスの低い社員には、コミュニティに所属している安心感を

2つ目。在宅ワークでパフォーマンスが下がる社員に対してどのようにアプローチしたらいいのかという話です。

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在宅ワークじゃなくても「パフォーマンスが低い社員をどのように活躍させるのか」はずっと課題として言われているものです。しかし、その考え自体がそもそもおかしいというのが、ネットワークサイエンスの見解です。

ネットワークサイエンスでは、パフォーマンスが低い社員は「孤立した社員」と考えます。

例えばこの図のような会社のネットワークがあって、この端にいる社員がパフォーマンスが低い、つまり孤立してしまっているわけです。1人としかつながっていないですよね。この社員の方に給与アップや福利厚生を手厚くするとか研修をガンガンやったとしても、なかなか効果は生まれないわけです。

それよりも、パフォーマンスが低い社員の方には、ネットワーク構造で支援するのが有効なんですね。他の社員とのネットワークをつくってあげる、ネットワークサイエンスでは「中心性を高める」と表現しています。

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大切なのは「期待」と「具体的な感謝」

最後に、在宅ワークでのコミュニケーションの形についてです。

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コロナの中で出てきた残念なニュースがありました。

記事の抜粋をすると、PCのデスクトップ上に「着席」「退席」ボタンがあり、それを押すことで自動で勤務時間を管理できると。そしてPCの画面がランダムに撮影され上司に送信されることで、緊張感を持って自宅が仕事ができる…としています。

もう本当に残念でしかないですね。

これが言っているのは何かというと「信頼の完全な欠如」です。

もしあなたがマネージャーだとして、部下の目標達成を支援するとき、どのような行動をとりますか?これを考えるときに、部下を信頼しているマネージャーが取れる行動と、信頼していなければ取ってしまう行動があるわけなんです。

例えば「褒めて伸ばす」。これはアウトです。

なぜかというと、褒めてしまうと「また褒めて欲しい」という、報酬を求める心理が働いてしまいます。そうすると自分を褒めてくれた人を見てしまって、本来自分が取り組むべきことに集中できなくなってしまう。その結果、本人の自律性を下げてしまいます。

あとは「黙って暖かく見守る」。これもアウトです。

人間は言葉に出して言わないとわからないということが往々にしてあってですね、自分の中では「信頼している」と思っていても、信頼の行動も発言もなければ相手には伝わりません。

では、どのような行動が良いのか。それは「期待していることを伝える」

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実際に、「賞賛」よりも「期待」のほうが信頼に寄与するというデータも出ています。ただ数字を見て分かる通り、賞賛が決して無意味かというと、そうではありません。どちらも大事ですが、期待の方が影響が大きいということです。

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それから「賞賛」と「褒める」は、少し違います。

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これはネットワークなので「どの言葉と使われたか」がわかるようになっています。エンゲージメントの高い社員も低い社員も「ありがとう」という言葉自体は使っているはずだけれど、エンゲージメントが低い社員はネットワークに「ありがとう」が出てこない。

これが何を意味しているかというと「ありがとう」しか言っていないんですね。なので、感謝する時の理由を伝えることが大事だということです。

「褒める」のではなく「具体的な感謝」を伝えることが、賞賛の形としては望ましいです。

まとめをすると、在宅ワークによる孤独感に対しては、テクノロジーを活用してコミュニケーションの頻度、雑談を増やすこと。在宅ワークによってパフォーマンスが下がる社員に対しては、社内コミュニティへのつながりの機会を増やすこと。在宅ワークでのコミュニケーションの形は、「期待」を言葉で伝え、「感謝」を理由と共に伝えることが重要です。

以上です。ありがとうございました。

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