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『ハンターハンター』的ボードゲームデザイン

こんばんは。
「価値観のアップグレードをしないと、流行からどんどん置いて行かれて、昔の物ばかりありがたがるおっさんになって、そうなった状態を老害と呼ぶんだ」
……みたいな言葉に不安にさせられて、あんまり面白くない作品をめっちゃ褒めるおっさんにだけはなりたくないと思っている大塚健吾です。

普通にアップグレードなのかダウングレードなのかは機能で判断するものなので。

改めまして、ボードゲームデザイナーとして『理想の納豆』 『行けたら行くよ!』 『ギリギリカレー』『ブックメイカーズ』そして、『シノミリア』を作りました。

今回はあれです。
『ハンターハンター』の話です。

別に、なんというか、僕がめっちゃ休載してたからそれに掛けてとかじゃなくて。
それはホント、全然関係ありません。
確かに、ずっとごろごろして、PS4でRPGとかやってましたけど、
冨樫さんの休載とは何も関係ありません。
それについてはホント、なんていうか、うん……

ホントすみませんでした!!


今回のテーマは“ボードゲームデザインの奥義”についてです。

つい最近、更新されました。
あれですね。アップグレードです。

常々、言ってることではあるのですが、
自分にとっての良いゲームの条件として、
“ハンターハンターみたいであること”
ってのがあります。

村田雄介さんの『ヘタッピ漫画研究所R』に書かれた冨樫さんのインタビューにこんなん書かれています。

最良の一手をボケ・ツッコミのようにバンバンかぶせていき、「論理展開」させていって、最後は主人公がそのずっと上を行く解を打ち出すといった感じ。

コレ。

ハンター試験編のとか印象的ですよね。
ドキドキ2択クイズとか特に。

課題に対して、
①常識人・一般人代表(厳密にはレオリオ全然違うけど)はただ戸惑い
②自分のこと賢いと思ってる駄目な人(鼻が特徴的な先に行って罠を仕掛けたい人)は間違った答えに飛び付き
③賢い人(クラピカ)は正解にたどり着き
④ガチの人(ゴン)は問題の正解を超えた真相を見抜く

冨樫さんの作話の基本で、コレ以降のエピソードもそういう構成になっています。

この“漫才”と“論理展開”。
ここがキッチリ作られてるゲームは良きゲームです。

よく、ゲームに対しての評価として“奥が深い”って言葉が使われますが、
定義するなら、要はここの①~④のギャップが大きく、特徴的であるって意味です。

『リバーシ(オセロ)』とかわかりやすいですかね。

①最終的に多い方の勝ちって言われても何してわからない
②手番でもっとも多い石を取れるとこに置く
③相手の選択肢が最も少なくなるように、自分の選択肢が最も多くなるようなとこに置く
④……ってのはわかるけど、中級者の僕にはプロが何考えてっかは僕レベルじゃわかんねぇ(バッファロー定石がどうしたとか山とかウィングとかストナーズトラップとかよくわかんねぇ)

後半雑だけど、そんな感じです。

もう、もっとわかりやすく言っちゃうと、
上手い人はこう動いて下手な人はこう動くってのをキッチリデザインしましょうね。
って話です。

ちなみにですけど、
『シノミリア』は特にそうした意識の元に作ったボードゲームです。

制作段階で何度も最適戦略が出し、
それに対するカウンターとしてのさらなる最適戦略がうまれるようにルールを調整していきました。

結果、初心者が思いつく戦略は弱く、穴に嵌るものになり、
上級者が様々な戦略を組み合わせて戦うというゲームになりました。
カードテキストなしで。

いろんなとこでちょいちょい言ってるんですけど、
『シノミリア』を作って最も良かったことと最も残念だったことは同じで。

“誰がボードゲームが上手くて、誰がボードゲームが下手なのかわかった”

で。

尊敬できる人に出会えて、わかるってのは嬉しいことで。
それはそれとして、「僕は今までこんなボードゲームが下手な人のボードゲームの語りをありがたがってたのか……!」みたいなのは悲しいことです。
(後者は別にそんなにはなかったけど)

ちなみにこの上手い下手って何かって。
さっきの①~④への成長具合の話です。

最初は①だったのにすぐに③に到達するボードゲーマーとか、
自分がずっと②にしかいないことに気付けない自称上級者とか、
いろんな人を見られたのはとても勉強になります。

っていうか、まぁ、全然別に下手でもいいけど、自分の実力には自覚的でありたいものです。

本題ではないので、簡単に書いておくと、
どうやら、“自分がどうするのが正しい手なのか”ってとこで止まってるプレイヤーが多くて。
“相手がどうしたいかを考えて、対応する自分の選択肢を考える”ってとこまで行きつけないプレイヤーが多いなって印象です。

参考までに“プロ格闘ゲーマーの目線”って動画。

自分のキャラクターなんかほぼ見ずに、目線は常に相手にあるんですよ。

ボードゲーマーなら思考は基本“相手がどうしてくるか”に当てたいものです。


閑話休題。

繰り返すと、
上手い人はこう動いて下手な人はこう動くってのをキッチリデザインしましょうね。
って話。

簡単に書いてるけど、コレ結構難しくて。

クイズで例えるとわかりやすいです。

正しい戦略って正解はもうデザイナー知ってるんだし、楽チンじゃないですか。
問題は不正解の方。あるクイズの誤答がどんなものになるか想像しましょう!って作業。コレはなかなか難しいです。

コレ。
今まで、なんとなくで捉えていたんですけど、最近ようやく言語化できました。

有料部分ではそれについて書きます。

ヒント。

ダウンロード

『スーパーマリオブラザーズ』ってゲームの最終的なクリア条件(目的)ってなんでしょう?


ヒントのヒント。

あれね、『カタン』の勝利条件は“島を最も開拓すること”じゃなくて“自分の手番に10点以上取ってるぜ!って発表すること”です。

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