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【研究情報】海藻ヒトエグサ由来成分:ラムナン硫酸の抗SARS-CoV-2活性

海藻ヒトエグサ抽出物「ラムナン硫酸(RS)」の抗ウイルス作用について、研究論文が発表されましたので、内容を見ていきたいと思います。

米国ニューヨーク州 トロイのレンセラー工科大学の研究施設:Center for Biotechnology and Interdisciplinary Studiesと、ミシシッピ大学のヘルスサイエンスキャンパスのUniversity of Mississippi Medical Center (UMMC) などの共同研究です。

科学雑誌Marine Drugsへ掲載の研究論文は、以下をご参照ください。

研究論文タイトル:
Anti-SARS-CoV-2 Activity of Rhamnan Sulfate from Monostroma nitidum
掲載科学雑誌:Marine Drugs インパクトファクター4.762
URL  https://www.mdpi.com/1660-3397/19/12/685


1.研究論文を見ていく上でのキーワード
今回紹介する研究論文は、ウイルスが細胞に感染するのを防ぐ作用(感染の阻害)について述べられています。
研究論文を見る前に、ウイルスが細胞に感染する過程と、キーワードを確認したいと思います。キーワードは、スパイクタンパク質、受容体への結合、変異株です。

ウイルスの表面には、スパイクタンパク質がとげのようについています。これが感染する細胞の受容体へ結合し、細胞の中に入り感染します。
よく聞く変異株は、このスパイクタンパク質が変異して、形や性質が変わっているウイルスです。

画像1    神奈川県HPより

画像2    神奈川県HPより

2.ウイルスが結合する部位への阻害の確認試験
SARS-CoV-2のスパイクタンパク質だけを使って、結合の阻害を確認する試験が実施されました。比較対照は、血液凝固阻害剤でありながら、ウイルス感染の阻害作用がある「ヘパリン」です。
「ラムナン硫酸(RS)」と「ヘパリン(hep)」の濃度を変えて結合阻害の程度を調べられました。この結果から、何も加えなかった時と比べて、結合を半分阻害するときの濃度(IC50)を計算しています。
結果は「ラムナン硫酸(RS)」がIC50 = 1.6 ng/mL、ポジティブコントロールの「ヘパリン(hep)」がIC50=約750 ng/mLであり、「ラムナン硫酸(RS)」は、少量でより強く結合を阻害する作用が確認されました(図1)。

図1 図1:論文内のFigure6より

3.細胞への結合阻害の確認試験
変異していない株と、デルタ株の擬似ウイルスを使って、細胞表面を想定した結合阻害の程度を確認する試験が実施されました。変異していない株で、「ラムナン硫酸(RS)」は「ヘパリン」より強い阻害作用を示し、デルタ株では、「ラムナン硫酸(RS)」「ヘパリン」ともに強い阻害作用を示しました。

さらに、変異していない株と、デルタ株の擬似ウイルスの細胞への侵入を阻止するための「ラムナン硫酸(RS)」の能力が調査されました。ウイルスが侵入した細胞を蛍光する、蛍光顕微鏡観察で、「ラムナン硫酸(RS)」の濃度別に、細胞への侵入阻止が確認されました。(図2)。濃度が高いほど、感染が阻害されています。「ラムナン硫酸(RS)」を加えなかった場合と比べて、IC50が計算されました。
結果は、変異していない株(WT) IC50値2.39μg/mLおよびデルタ変異体(DELTA) IC50値1.66 μg/mL と、抗ウイルス作用が確認されています。

図2 図2:論文中のFigure9Aより

発表された論文の結論では、「ラムナン硫酸(RS)」を、治療および/または予防抗ウイルス薬として開発するために、構造活性関係(SAR)、バイオアベイラビリティ(生物学的利用能)、低分子RSの抗ウイルス活性、RSの毒性分析など、今後の調査でより多くの研究について提案されていると記載されています。


これまで、ラムナン硫酸は、研究論文が発表され、培養細胞や動物試験では、血栓・高コレステロール、高血糖、ウイルス感染に対する研究論文が発表されています。さらに研究されることを期待しています。

以前から言われているファクターXは、日本人だけが海藻を消化できる遺伝子を持っているからではないかと言われ始めています。今回の研究で、あおさが貢献している可能性が示されたのではないでしょうか。

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