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PCRは本来何をするためのものか?

最近よく耳にする「PCR」であるが、本来の目的は何かをはっきりとさせておきましょう。

Polymerase Chain Reaction (ポリメラーゼ連鎖反応)は、DNAサンプルの特定領域を数百万〜数十億倍に増幅させる技術のことで、頭文字をとってPCR法と呼ばれる。

任意の領域のコピーを2倍、2倍、・・・と増幅することで、少量のDNAサンプルからその詳細を研究するために十分な量にまで増幅させることを目的とする。このPCR法は、幅広い分野において遺伝子解析の基礎として活用されている。

ここで、PCR法の手法をざっくりと説明していくことにする。

DNAは塩基の対となった2本のらせん状である一方で、RNAは塩基が対となっていない1本の構造をしている。"ファスナー"が閉じた状態と開いた状態の違いのようなものである。

任意の領域のコピーを増やすことができるのだが、ではどの領域を増やしたいのかを決める必要がある。ここにPrimer (プライマー)という20塩基前後(※)の短いRNAが必要になる。これはサンプルのDNAのどの領域を取り出すかの始点と終点になる。プライマーの設計は、国やPCRキットを扱う会社によって様々であるということも覚えておこう。

※)「A」「T」「G」「C」の4つがそれぞれ決まったものと結合して対となす。特定のDNA領域を間違えずに取り出そうと思えば、どれだけの長さが必要か。30億ある塩基対の中で「取り出したい領域ではないものの偶々同じ配列の箇所」が存在する可能性を考慮すると、コンビネーションで4C1を何個分かというと、16塩基(4の16乗=約43億)以上の長さで概ね間違いなく領域を特定できる計算になる。・・・という私なりのイメージ。

DNAの各塩基対は互いに形の合う塩基が結合して対になっている。温度を変化させて、薬品(ポリメラーゼなど)を加えることで、閉じた"ファスナー"を開き、対応する箇所にプライマーを結合させる。さらに温度を変化させると、プライマーの箇所から複製が始まる。これによりターゲットとなる約100〜35000塩基対を複製することができる。

この手順を1サイクルとした時に、回数を増やすと複製を多数作成することができる。1サイクルで1→2、2サイクルで2→4、倍々と増えて行き、35サイクルで2の35乗なので、理論上100億を超える。当然ながら、元のサンプル数が多ければ、より少ないサイクル数で100億に達する計算になる。(実際には材料の関係で100億という数に増やすのは難しいようだが)

増やした後、特定のDNAまたはRNAを検出するには検出限界があり、ある一定数以上増えた場合に検出が可能となる。いわゆる「陽性」なのか「陰性」なのかである。つまりは、元のサンプルにどれだけ対応するDNAまたはRNAがあったのか、そして何サイクルこの反応を行い増幅させるかによって、検出できる場合とできない場合とに分かれる。そして、意図的にある程度操作することも可能だと思われる。

現在、このPCR法が感染症の検査として利用されているようであるが、考えてみてほしい。特定のDNAまたはRNA領域を増やして見やすくするための手法なので、PCR法のみで感染症や病原体を判定できるものではないということを理解しておく必要がある。

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