S邸

今日の建築家「川口貴仁 吹野晃平」

建築設計を事業の1つとして行っている川口貴仁さんと吹野晃平さんに、創造系不動産の本山と鈴木が会いに行ってきました。

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(左:川口貴仁、右:吹野晃平)

独立した後どう戦っていくかという話が、全くアカデミックな環境にはない

本山(創造系):今日はよろしくお願いします。今度のイベントのテーマが、「設計と独立のあいだ」なんですけれども。

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創造系レクチャーシリーズVol.4「設計と独立のあいだ」のイベントページはこちら

そこに勝算をもってやっているのかなというのが個人的に気になっているところでもあるんです。
独立してやっていくそもそもの始まりは、どんな感じでした?

吹野さん:そうだなあ、ぼくは独立しようとすること自体はすごく不安でした。例えば小さな改修を積み重ねても食べていくのは難しいだろうし、一方で新築や大きな企業の仕事を取るのも、まだ実績のない僕らには難しい状況だとも思っていたので。
凄く苦しいなと思っていたけれど、それは建築設計事務所としてどう独立していくかを考えていたから厳しかったんだなと、川口とかと出会って気づいたんですよね。
自分たちは、建築設計事務所アトリエ事務所と名乗らなくてもいいかなと思っていて。もっと次の時代に向けて、新しいスタイルみたいなものがあってもいいんじゃないかなと。

鈴木(創造系):そうですね、確かに。

吹野さん:戦い方が見えないから怖いのかなと。そこを模索していくことで、独立することへの漠然とした不安から抜けだせるんではないかなと(笑)

鈴木(創造系):すごい(笑)

吹野さん:それって本来アカデミックで教わるものでもないと思いますし。
どこどこの会社はどうだとか、建築業界の中の話だったら教えてもらえるけれど。独立した後どう戦っていくかという話が、全くアカデミックな環境ではなかったなと。
だからこそ踏み出しづらいし、戦い方が見つからないと怖いんだなと。
まだ1年も経っていないんですけれど仕事をやっていく中で思いましたね。

本山(創造系):僕自身、おふたりが「こういう方向性でやっている」というのをあまり知らないので、その辺りを教えてもらえますか。

川口さん:3月に創業して間もないんですが、とりあえずいただいた仕事に対してちゃんと向き合うというか。

仕事として引き受けるには少し難しいような、そういった本来ならば諦めるようなものも、めちゃくちゃ本気かけて全力でリサーチをかけていったらできちゃう…というのは独立しないとできないと思っていて。

アプローチの仕方次第で、モノづくりっていくらでも拡大解釈できちゃうからそれが面白いなぁと思って。
もちろんいろんな責任を取らないといけないことが多いのでつらいなぁというところもあるんですけれど。それも仕事なので。新しい価値を発見できたこと、それが依頼主の方にとって新しい気付きであって、道しるべになっていてくれたら、これほど嬉しいことはないですね(笑)
あとは、これ吹野君には怒られるかもしれないけれど究極的には遊ぶ感覚なんですよね。めっちゃおもろいっていうテンションでやっています。

吹野さん:それは大事ですね。
遊びだと思える位おもしろいと思えていないと、わざわざ独立してやる価値がないと思う。

川口さん:そうなんですよね、依頼主と一緒に楽しむことを仕事にしたいなと思います。周囲との差を感じながらやれるだけのことをやるって感じですね。
でも一方で、生き方とかスタンスの違いだけなのかな〜とか思ったりはします。みんな作りたいものを作りたいと思っているし、実際学生時代皆やっていたものはどれも熱量あってすごかったし。そこのスタンスの違いやポジショニングの違いだけな気がすごくしていて、まだ自分たちがどうやってものづくりに向き合って、ものを作って、ものを語るかを考えながら試行錯誤中ですね。

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建築設計の中に隠れているバリュー

川口さん:そもそも、僕らふたり自体が良くも悪くも全然タイプが違う。

吹野さん:ほんとに違うんですよ、タイプが。なんでここがそもそも一緒にやってるのってよく言われるんですけど。

川口さん:吹野君はけっこう編集を前提でリサーチをしていると思っていて。リサーチから得た情報でそのプロジェクトごとの特別なビジュアルを作るところまで重要視している。自分の場合は逆で、圧倒的な事実をめちゃくちゃ並べていくと逆にその関係性が見えてくるっていう。
例えば、宿泊史という観点から年表を作るときに宿泊史における建築家ってライトとかじゃなくて、実は渋沢栄一や井上馨が1番の建築家だったんじゃないのかとか。コトを起こした視点という意味では、ですけど。
いろいろと彼の過去だったり取り巻きの人間だったりを調べていくと、その中で情報が炙りだされていって。そういう感覚でリサーチをやってるんですよね。それを元に、デザインとか編集していくとか。

本山(創造系):そうなんですね。それって建築倉庫の仕事でしたっけ?

吹野さん:そうです。


本山(創造系):他に今やってる仕事ってどんな種類のものがありますか?一緒にやらせてもらってる戸建てもありますけど。

吹野さん:まずはその戸建住宅の設計。ホテルをテーマにした展示の仕事。あとは地方の遺跡に関わる全体のマスタープランですね。行政の方と一緒にやっているんですが。それと、自治体の芸術祭の出店だとか会場づくりだとか。

鈴木(創造系):へー!

川口さん:リサーチの仕事も声がかかってきますね。

吹野さん:結構その、リサーチが仕事になるというのがびっくりしてます。
建築を設計するときに僕の中ではリサーチというのは設計をドライブするものではあるけれど、それ自体が成果物のゴールにはなかなかなり得ないと感じています。建築設計ではかたちにおとすところまでがセットですよね。
でも、建築設計から外れたところではバリューが全然変わる。
建築設計の中に隠れているバリューを見つけていって、戦い方を考えたほうがいいなと思いました。

本山(創造系):ふたりは一緒に事務所をやっている感じがないと言われるというお話ありましたけど、僕もそう見えていて。全くタイプが違うから。

吹野さん:確かに、歩いてきた道のりが全然違いますね。
僕は大学は近畿大学だったんですけど、大学院は東京芸術大学に行って。大学院1年が終わったあと、アトリエ設計事務所に行って大学院にもどってすぐ独立、という流れです。

鈴木(創造系):最高ですね、それ。

本山(創造系):大学院一年でやめて、なんで事務所に入ったんですか?

吹野さん:アトリエ事務所って入りたくても毎年募集するわけじゃないし、どうしても行きたかったいうのがあって。
川口と初めてあったのは、事務所にいく前の大学院1年の時ですね。

川口さん:その時はちょうどふらふらしていて。

本山(創造系):インターンに行ってたんでしたっけ?

川口さん:そうです。
大学入ってからいろいろ行ったりとかしてたんですが、自分は建築なんだけどグラフィカルなダイアグラム作ったりだとか、そういうデザインオフィスが好きでそういうところにふらふら行ってました。

吹野さん:そうか、あの時はインターンにいってた時か。
その後の話だけど、1番覚えてるのは川口がお願いしますってクラウドファンディングしてる写真で。卒業設計の模型を送るために。

本山(創造系):クラウドファンディング?郵送費を?

川口さん:○○万円かな。。。

鈴木(創造系):○○万円。

吹野さん:あれずっと思ってたんだけど箱を小分けにしすぎてるんだよ。

本山(創造系):それいま初めて言ったんですか(笑)

吹野さん:絶対箱をこわけにしすぎてんだよな〜と思ってて。でもその写真見たのクラウドファンディングが終わる一日前だったから、そのタイミングで言われても困るでしょ。

川口さん:それは困る(笑)

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ベタじゃないやり方をしたい

本山(創造系):最後に質問なんですが、お二人のことをどう伝えるのがいいんだろうなと思っていて。
こういうことやっている会社ですっていうベタな説明ってあるじゃないですか。

川口さん:あ〜、それに関しては、今も悩んでます。(笑)
もちろん、ベタな説明は必要だと思うんですけど。
名付けられることで依頼しやすい構造はあると思っているので。

なんだけど…これは若干エゴイズムが入っているんですけど、名前をつけることで、本来はやれそうで、めちゃめちゃ可能性があって、うまれてくるはずだった仕事ができなくなることがあるというか。
そういう取りこぼしをなるべくしたくないなっていう。

ぶっちゃけ、名付けることを仕事にしたいです!(笑)
柔らかくそのまま仕事に繋げていければいいかなと。ちゃんと受けるところは受けるけれど。
今の段階でやるんだったら、今面白いと思っていることをやりたいんですよね。

本山(創造系):別に「〜する会社です」とかじゃなくて、自分の好きなものをやるためのもの入れ物にしているというか、あんまり法人に固有のメッセージを持たせるという意図はつよくないんですね。

川口さん:そうですね…それよりかは、ただだだ面白いもの作りたい、っていう。
自分は結構知識欲がすごくあるほうだと思っているので、面白いことを知りたいです。常に発見があってほしいという感じです。その切り口や視点を通じてクライアントと一緒になって、ものづくりやことづくりに向き合っていければいいと思っていて。
その幅が、建築だけじゃなくてもいいと思っています。リサーチだったら全然戦い方が違うと思うけど、それは別々のものじゃなくグラデーションでつながっていて。

勿論、専門的にものづくりに向き合う姿勢というのもすごくクリエイティブだと思うんですけど、そういうことじゃない、「ベタじゃないやり方をしたい」「ちょっと外したい」っていうのがすごくあるので。
めっちゃ燃費悪いけど(笑)

鈴木(創造系):ベタじゃないやり方!

本山(創造系):じゃ、なかなか説明はできないですね。

川口さん:「〜する会社だからいいよね」というんじゃなくて川口がいるから、吹野がいるから…その人格的なところで頼んでもらいたいかなって感じがあるんです。
何となく、それが肩肘張らずに自然体でいられるのは1番自分たちにとって自然なやり方なんだっていうのは感じます。

自分たちが何者なのか、よくわかっていないので。

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