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コロナウイルスと石油問題

先日、OPECプラスは5月から2ヶ月にわたり石油を日量970万バレル減産することに決めました。ちなみに、1バレルは約160リットルなので970万ともなるとかなりな量ですね。さらに、この量が世界全体の原油生産量の1割というのですから、世界が石油に大きく依存していることがわかりますね。

日本国内に目を向けてみると、ほぼすべての石油は輸入に頼っている状況です。つまり石油については、OEPCなどの海外の動向を見ることが何よりも重要となるわけです。さて、今回はそんな石油の話題と、経済学の知識として「ゲーム理論」を併せてお伝えしたいと思います!!

上に示した通り、今回の減産発表を行ったのはOPEC「プラス」です。これは、OPECの加盟国にロシアなどの石油生産国が加わってできた連盟です。(厳密には一部のOPEC加盟国はこれに入っていません。)なぜ、このような集まりを作らないといけないのでしょうか?それは、石油の「価格安定」のためです。

元々、石油の価格や産出量を管理していたのは、「国際石油資本」という組織です。(1950年代の話です。)この組織は、先進国の発展のために原油価格を安く設定していました。しかし、中東諸国をはじめとする産油国はこれに納得できません。せっかく資源が自国にあるのに、勝手に安く売られてしまうからです。よって、1960年に産油国5カ国でOPECを作り、自分たちで石油を管理しようということになったのです。今では、ロシアやアメリカなどでもエネルギー資源が産出されることから、OPECの存在感は発足当時より弱まってはいますが、産油国となれる国は限られていますから、その権威は未だ保っているといえるでしょう。現在では、石油の価格安定を求めるために、OPECに加盟していない国も価格や産出量についての協議に加わり、「OPECプラス」という形になっています。

さて、そんなOPECプラスはなぜ今回の減産に踏み切ったのでしょう?それは、世界中に影響を与えるコロナウイルスにより、石油の需要が著しく減ったからです。これは外出自粛による交通機関の利用減少が原因の一つでしょう。「需要が減ったから、供給を減らすのは当たり前のことじゃん!」と思う方も多いとは思いますが、実はそう簡単な決断でもないのです。下の表で説明します。

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表の中の数字は、各国の利益と考えて見てください。わかりやすくするために、加盟国が2カ国だとしましょう。A国の場合、1番利益が低いのは「A:減産する、B:しない」の時ですから、それを避けるには「減産しない」作戦を立てるでしょう。B国の場合も然り、結局両国とも「減産しない」を選びます。しかしこれでは過剰供給になってしまい、両国とも「減産する」を選ぶときより利益が少なくなってしまいます。つまり、両国はお互いを信じて「減産する」約束を守った方が良いのです。

信じるためには、連盟などを作って緊密な連携が継続できる関係にないといけません。また、連盟の規模が大きいほど皆が平等に大きな利益を得られる可能性が増えます。このように見ると、OPECプラスの減産発表もより経済学的な視点から見ることができるのではないでしょうか?

もちろん課題もあります。それは各国の利害関係の調整です。当初、OPECプラスは日量1000万バレルの減産を目標としていましたが、最終的に減産量は日量970万バレルに留まりました。今後の協議によってさらなる減産に至るかは注意してみるポイントとなりそうです。また、このOPECプラスにはアメリカが加盟していません。アメリカは石油やシェールオイルの開発を行っており、エネルギー産業でも大きな存在です。この関係性も慎重に見ていきましょう。

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