正しい競争意識
スポーツ界に暴力が蔓延しているのは、現場や国や学校どうしの、金や名誉や権力の競争になっているからで、そこには一種の「戦争」が存在しているのだと思います。競争は暴力や戦争と紙一重です。
田中優子(法政大学教授)
正しい競争意識とはどんなものでしょうか。
正しい競争意識とは切磋琢磨するということだと思います。
単純に人との競争という意味を考えると、どんな過程を経ようと、どんな結果であろうと、勝ちさえすればいいと捉えられがちだと思います。
ですが、人を蹴落としてでも勝つ、結果は悪くても相手より上であれば良い、という考えだと、自分の成長が見込めませんし、チームとしては悪い結果に陥り、長期的に見ても良いものを生み出しません。
ここでいう自分の成長とは、自分本来の力を最大限に発揮していけるかどうかです。
相手が勝つと自分が負ける、そうすると認めてもらえない、という恐怖に支配されてしまうと、相手の事ばかりに目がいき、自分自身に向き合うことができなくなります。
自分が今何が出来て何が出来なくて、どういうレベルにいて、何が課題で何をすべきか、そういうことに集中できなくなります。
世の中では上手くいかなくても、競争には負けても認められることもあります。
不公平なジャッジで負けることがあるかもしれません。
たまたま不運が重なって負けることがあるかもしれません。
お互い最大限の努力をして紙一重の結果で負けることがあるかもしれません。
それでも腐らず前を向いてやるべきことをやる、自分自身を認めてあげることで、人からも認めてもらえるものです。
スポーツであれば勝つことはとても大切です。
そのために日々努力しているわけですが、勝ちだけに10の意識を取られてしまってはいつまでも本当の勝ちを掴み取ることはできません。
チームで戦う場合であったり、人との関わり合いの中では、お互いをお互いが高め合い、切磋琢磨することが大切です。
正しい競争意識とは、1+1を2以上にすることです。
サッカーでポジション争いをしている時でも、ビジネスでライバルと営業成績を争っている時でも、相手を蹴落とすつもりで競争していては、組織としての結果は1+1が2よりも小さくなってしまいます。
これでは最終的に自分にとっても相手にとっても良い結果を生み出しません。
これは囚人のジレンマのようなもので、時には難しいことかもしれません。
お互い協力する方が協力しないよりも良い結果になることが分かっていても、相手に勝つことだけに目がくらみ、本質部分を見落とすと人はそういう行動を取ってしまうものです。
正しい競争意識を持つことはメンタルの安定に重要なことです。
相手に与えることで自分も与えられるという考えが必要です。
そうでないと、人が上手くいっていることが許せない状態に陥ってしまいます。
なかなか上手くいかない、できていないことがあったとしても、人ばかり見て人と比べて、人より劣っているとか自分を卑下し間違った競争意識を持ってしまうと、物事はどんどん悪い方向へ向かってしまいます。
その時は負けているように思えても、自分に見切りをつけることがなければ、負けというものは実際には存在しません。
諦めなければ失敗は無いことと同じです。
人と競うことよりも、真に昨日の自分より成長することを心がけて何事にも挑戦できれば素晴らしいことではないでしょうか。
競争も必要、対立することもあっていい。だが敵をも愛する豊かな心を持ちたい。
松下幸之助
それでは、本日は以上になります。