米国株マーケット考察 2021.1.9

マーケットサマリー

米国株式市場は続伸。ダウ工業株30種平均は前日終値比56.84ドル高の3万1097.97ドルで終了。ナスダック総合指数は134.50ポイント高の1万3201.98と、最高値を2日連続で塗り替えました。ニューヨーク証券取引所の出来高は前日比5080万株減の11億0150万株。

12月の雇用統計の発表があり、非農業部門就業者数( 市場予想:7万1000人増加 )は前月比14万人減と、8カ月ぶりにマイナスを記録。失業率は6.7%と横ばい。新型コロナウイルス感染再拡大に伴うレジャーやホスピタリティの雇用が減少しており、感染拡大が雇用回復に影響し始めたようです。

マイナス雇用の指標によるネガティブな雰囲気を打ち消したのはバイデン次期大統領の発言でした。

彼が「600ドルの直接給付では不十分。自身が提案する経済対策は大規模になる」と述べたことで、米雇用統計が弱かった分、バイデン政権の財政刺激策の規模が大きくなるのではとの期待が出ました。

9000億ドルの追加経済対策やワクチン接種、そして、FRBの大規模緩和策が、引き続き株式市場のモメンタムを支えています。

また、米連邦準備理事会(FRB)のクラリダ副議長は昨日、新型コロナウイルスワクチンの普及に加え、バイデン新政権下で大規模な財政出動が期待されることから、米経済は今年は「目覚ましい」年になるとの見方を示し、FRBの政策については、新戦略の下で金利は長期にわたり低水準に維持されるとし、FRBは積極的な景気支援を継続すると表明しました。

今週1週間ではダウ平均が1.61%高、S&P500が1.83%高、ナスダック総合が2.43%高とそろって新年第1週を上昇スタート。ダウ平均とナスダック総合が4週続伸し、S&P500が2週続伸となりました。

歴史的に見ますと、大統領就任後の約3ヵ月間は、いわゆる「ハネムーン期間」と位置付けられ、政策の巧拙は問われにくく、株価は底堅く推移すると見られます。

大規模経済対策の原資を大幅増税に依存するバイデン大統領の政策を見れば、能天気にしてはいられない筈ですが、株式相場はあたかもバイデン政権誕生の「ハネムーン期間」が既に始まったようです。果たして、今回の「ハネムーン期間」も3か月余り継続するのかがポイントでしょう。

用語解説


-米国雇用統計ー米労働省労働統計局(BLS)が、米国の労働者の雇用状況を調査した指標。世界中の経済指標の中で最も市場に注目されている指標の一つ。

同時に発表される失業率は、労働力人口に対する完全失業者の割合で定義されます。軍隊従事者、刑務所の服役者などを除いた16歳以上の男女が対象となり、労働の意思のない者は、労働力人口から外されるため、失業率には反映されません。

-非農業部雇用者数ー米労働省労働統計局が発表する統計の事で、農業部門以外の産業で働く就業者の数を、非農業部門に属する事業所の給与支払い帳簿を基に集計したもので、非農業部門に属する事業所の給与支払い帳簿を基に集計されたものです。

自営業、農業従事者を含まず、対象事業所は約40万社・従業員数約4700万人で、全米の約1/3を網羅していると言われています。世界中の経済指標の中で最も市場に注目されている指標の一つです。

-ハネムーン期間ー政権交代後、新政権発足からの最初の100日間を指します。発足直後の新政権は概ね高い支持率を示す傾向が強いため、国民やマスコミとの関係を甘い新婚期(ハネムーン)に見立ててこう呼びます。

二大政党制で政権交代を何度も経験しているアメリカでは、新政権が軌道に乗るまでにある程度時間がかかることを国民が理解しています。

そこで、この期間中はマスコミも野党も新政権に対する過度な批判や性急な評価を避け、「お手並み拝見」とばかりに様子見するという慣習、紳士協定があります。


立沢賢一とは


元HSBC証券社長。
会社経営、投資コンサルタントとして活躍の傍ら、米国宝石協会(GIA)会員など多彩な活動を続けている。投資戦略、情報リテラシーの向上に貢献します。
・立沢賢一 世界の教養チャンネル
http://www.youtube.com/c/TatsuzawaKenichi

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?