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写真を撮ること

写真を始めたきっかけを、はっきりと覚えている。

22~3歳ぐらいだったろうか。もう20年ほども前のことだ。僕は新宿の南口(当時は新南口という名前だった)から東口方面へ歩き、坂を下ったところにある、駅前の通りをくぐるトンネル状になった所にいた。当時やっていたバンドでストリートライブをやっていたのだ。

演奏していたら若い人が声をかけてきた。いや、若いと知ったのは後からで、同年代か少し上ぐらいに見えた。彼はゴツい一眼レフを持っていて、写真を撮らせてほしい、と言ってきた。ストリートライブをやっているミュージシャンの写真を撮りたいのだと。

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彼は写真家を目指している学生で、専門学校で写真を学んでいると名乗り、学校の課題として僕らの写真を撮りたいのだと言った。

写真にはそれ以前から興味があった。今になって思うと、どちらかというとカメラという道具に興味があったのだ。彼との出会いはきっかけになった。その日写真を撮ってもらったあと、彼に相談した。

「僕も写真、やってみたいんだよね。」

彼はカメラオタクみたいなタイプの写真家で、喜んで教えてくれた。最初に買うカメラはなにがいいのか、どういう風に練習したらいいのか。おそらく半ば、学校で習っていることの受け売りなどもあったろう。彼は僕より年下だったけれど、僕にとっては師匠だった。僕は彼の言うことを、全部そのまま実践した。

彼はまず一眼レフカメラと単焦点の標準レンズを買って、その単焦点一本でしばらく撮れと言った。僕はその通りにした。買ったのはミノルタ(当時)のα7 のなにか限定のモデル。一緒に買ったのは50mm F1.4 の標準レンズ。しばらくそれ一本で撮った。

その後彼や彼の仲間たちにいろいろ教えてもらいながら、コンタックスのRTS III という夢みたいなカメラや、ミノルタのXE という古典みたいなカメラも買った。アナログ+マニュアルカメラの世界。

しばらく写真を撮ったある日、また彼に相談した。

「自家現像って僕でもできるかな?」

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彼は喜んで買い物についてきてくれた。自宅暗室をやるための道具一式、一覧表にして持ってきてくれた。ヨドバシカメラであれがいいこれがいいと言われるままに、どこがいいのか何がいいのかわからないまま買った。

実家の自分の部屋を暗室にしてこもり、フィルム現像とプリントを教えてもらった。始めたばかりで道具の良し悪しなどわからないけれど、初めての僕がそれなりにちゃんと自家現像を成功させた。間違いない道具を選んでもらった結果だろう。

ダークバッグの中でパトローネを分解してフィルムをリールに装着する。初めてのときはどうしてそんなことが可能なのかもわからなかったけれど、何度かやるうちにスムーズにできるようになった。

自家現像の道具は北海道へ転居するときに、知人に全部あげてしまった。アナログのフィルムカメラやレンズ等も全部手放してしまった。

そして僕が写真を撮る道具はデジタル一眼レフになり、コンパクトデジカメになり、ついにはiPhone になった。これで十分じゃね?

十分だった。手軽に撮れる。数撃つのでミスが気にならない。クラウド同期できる。iPhone では撮れないような写真を撮りたいと思う機会はほとんどなく、僕は結局のところ、道具としてのカメラに興味があり、行為としての自家現像が好きだっただけで、写真そのものへのこだわりはあまりなかったのだと気づいた。

そして人生の一大イベントが訪れる。我が家に子どもがやってきたのだ。子どもを撮る道具としてもiPhone は優秀で、「わぁ、立ったよ!」と言ってパシャリ、「歩いた歩いた!」パシャリ、「泣いてるぅ!」パシャリ。手軽さこそ最強。一時もじっとしていない子どもの写真を撮るのにiPhone は最強だった。

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しかし。小学校に上がったら運動会があった。保育園のお遊戯会とは距離感が違う。広いグラウンドの端っこの方にある父母席から、グラウンドの中央で飛んだり跳ねたりしている子どもを撮るには、iPhone では苦しい。

長男が小学校一年生になり、最初の運動会を迎えたその前日、デジタル一眼レフカメラを新たに買った。前日まで買わないあたりが僕だし、前日に急に思い立ってもすぐに買えるヨドバシカメラが最高だ。買ったのはフジフィルムのX-T20。レンズこそ単焦点ではないけれど、フィルムシミュレーション機能がある、1:1(正方形)の写真が撮れるなどに惹かれた。

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思えば昔から空の写真ばかり撮っている。空か、地平線。空や地平線を見るには旭川は最高だった。地平線は見えているのに存在しない。実際には接していないものが接する境界線。

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このエントリのタイトル写真、本当はこういう縦位置の写真なのがトリミングされてあのようになった。空が好きだから空のきれいなところに暮らしたい。そうやって北海道にたどり着いた。

note を始めたことで、また写真でも撮ってみようかと思った。子どもの写真じゃないものも。

※掲載している写真はすべて僕がデジタルカメラかiPhone で撮ったもので、記事の内容とは関係ありません。フィルム時代の作品はまたそのうち。

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