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2006年夏 ジャパニメーションが熱かった

まえおき

『激突! ジャパニメーション』というタイトルでローデッドウェポン第23号に掲載された記事の転載です。転載部は当時の記事そのままを転載したものなのでその後の事情によって著者自身の考え方が変化していることもありましょうが、あえてそのまま掲載し、最後に転載時に読み返しての補足を追加します。

なお、田熊はローデッドウェポンでは「たぐ」というペンネームで執筆していました。

※ちょっと追記:ローデッドウェポンとは2003年ぐらいから発行されている映画同人誌(のちにロゥデッドウェポンと改名)で、田熊は札幌へ転居した2005年にこれに加入し、22号に「立喰師列伝」の大特集を書いてデビュー、その後ふざけた表紙とSF方面の作品担当として記事を書いていました。この編集長との出会いはいずれ別のところに。

ここから転載

この夏、ジャパニメーションが熱い。まだ記憶に新しい2004年の巨匠大激突(宮崎、押井、大友の新作同時公開)と比べると話題性は少し薄いかもしれないが、見ようによっては今回もかなり面白い激突と言えそうなんだなこれが。

これ以上無いぐらいメジャーな会社が製作に名を連ねている「ブレイブストーリー」、再注目の宮崎二世による「ゲド戦記」、貞本キャラで現在によみがえる「時をかける少女」という三本が激突するわけ。ということで今回はこの3本を3本とも見て充実した夏休みを過ごそう企画として、不肖ワタクシ、たぐが勝手なことをノタマってみようと思うしだいでありまっす。

声に萌えてこそ夏

劇場版大作アニメーションってことで、注目はやっぱりCV(キャラクターボイス)の配役なわけですよ。最近の流行はメジャーな俳優さんをどーんと使うというやつ。ゴーカなのですよ顔ぶれが。

もう映画館で予告編を見た人もいるかもしれないけど、「ブレイブストーリー」のキャストは実写の映画かと思うようなメンツ。主人公ワタルに松たか子。松たか子が男の子の声を担当するんですよアナタ。これは萌えまっせ。さらに女戦死に常盤貴子。もうあっちもこっちもタカコですよ。ダブルタカコの掛け合いなんかも見られちゃう感じで、期待しまくりになってしまうでしょ。ちなみに、予告にもチラシにも載ってないけど、ミーナというキャラを斎藤千和という本業の声優さんが演じるのです。たぐ的にはこの人の芝居がオススメ。注目(耳か?)しちゃってくらさい。

対する「ゲド戦記」は大賢人ゲドに菅原文太。文太アニィが賢人ですぜ。なんかヤクザの大将みたいなイメージを想像してしまうけど、人生の年輪を刻んだ男はやっぱ文太アニィぐらいでないとね。主人公アレンはV6の岡田くん。最近のジブリアニメはイケメンにイケメンの役を演じさせるという方向性の様子。鈴木プロデューサー(押井監督の「立喰師列伝」で脳天砕かれた人)が岡田くんのラジオにゲスト出演して、その縁で呼ばれたというシンデレラストーリー。男だけど。

ビッグネームを連ねまくるこの2作に対し、「時かけ(勝手に略)」は若手俳優を配してきた、と某誌に書いてあった。何しろ名前を見ても知らない人が多く、フレッシュな若手で作品世界の瑞々しさを演出しようという意図が見て取れる。これかなり期待大。主人公真琴には仲里依紗。ナカリイサって読むらしい。どこまでが苗字かも定かでない世界。なんと16歳だそうで、フレッシュすぎてハジケちゃう。

原作の解釈に注目

この3作は3作とも原作モノだ、という点にも注目したい。広大な世界観からエッセンスを抽出した「ブレイブストーリー」、長編から1つのエピソードに焦点を持ってきた「ゲド戦記」、そして原作をかなり違う解釈で現代によみがえらせた「時をかける少女」。3作とも原作に忠実という感じではなく、それぞれアニメ版の良さってものを追求しているため、その辺にも注目したいところ。

ちなみに、ハデさではほかに一歩譲るかもしれないが、この「時をかける少女」がたぐ的には最注目。原作の主人公が叔母さんとして登場するというアナザーストーリー的なまとめかたなので、ぜひ原作を読んでから劇場へ足を運んでほしい。

転載時(2020/03/29)補足

どうやらこれ、見る前に書いた記事ですね。今から振り返るともうこの3本の中で「時かけ」が一番良いというのは定説というか、もはやほかの二本は話題にもならないわけですが、当時の盛り上がり的にはわざわざ「たぐ的には最注目」と言わなきゃならないような状態だったんですねぇ。感慨深い。

「ブレイブストーリー」と「ゲド戦記」、実はどちらも脚本が同じようにマズイ。それは「この映画で言いたいことはこれです!」と高らかに宣言するようなことをキャラクタのセリフとして言わせてしまう、ということですね。これ、僕は映像作品として最もやってはならないことだと思っています。それを伝わるような映像にするわけでしょ、映像を作るのだから。言葉で伝えるのなら文学にすればいいわけですが、当然ながら文学であっても言いたいことをキャラクタのセリフとして書くのは少々次元が低い。

なお、「ブレイブストーリー」の原作はものすごく面白いのでお勧め。僕は映画よりあとに原作を読みましたが、たぶん映画の前に読んでいたら映画見てブチ切れたでしょうね。

「ブレイブストーリー」のところでミーナ役の斎藤千和さんに言及してますが、たぶん当時、「ぱにぽにだっしゅ」というアニメ作品に超ハマっていて、その主人公のベッキー(レベッカ宮本)というキャラクタを斎藤千和さんが演じていたのもあって、注目していたのだと思いますね。ちなみに「ぱにぽにだっしゅ」では今や押しも押されもしない地位を獲得した沢城みゆきさんが芹沢茜という演劇部少女の役で出演していて、CDドラマで「クラス全員をモノマネして代返する」というとんでもない芸を見せています。この声優さんやべぇ!と思っていたらあっという間に頭角を現し、今やもう押しも押されもしない重鎮でありますね。

追記訂正!!
モノマネ代返は芹沢ではなく6号さんでした。この驚異のワザを披露しているのは6号さんの声優である阪田佳代さんでした。大変申し訳ない。

なお、芹沢の沢城みゆきさんが見せたアクロバットはベッキーの代役を演じるという役所で、斎藤千和さんのモノマネをしているやつです。これも驚異的。

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