インターネットの前の世界

何か知りたい時は本屋や図書館に行った。3000円とかする専門書はまず立ち読みして、買うかどうか悩んで…。

音楽はラジオやテレビ、雑誌で情報を仕入れ、レンタルレコードかレンタルCDで借りたり、CDショップでひたすら試聴したり、友だちから貸してもらったり。好きなアーティストのはもちろん買ったり。中古レコードを漁ったり。

映画はよくテレビで観てた。でもたまたまやってるものしか観れないから、観たい映画は映画館に行くか、ビデオレンタル屋で借りるか(昔はレンタルされるまで1年とか普通にあったし、人気のあるのはなかなか借りれなかった)していた。映画館はタバコの煙が立ち込めていた。

誰かに連絡を取るときは固定電話で。好きな女子の家にかける時も家の人が出て、うまくしゃべれなかったり。長電話して月の通話料がむちゃくちゃ高くなって怒られたり。

全く知らない人と話したい時は…、リカちゃん電話に電話したり(他の人が話してる声がかすかに聞こえた…と思う)、テレクラとかそういうサービスを使ったり…。

自分の言いたいことを誰かに伝えたり、作品を発表したい時は…ラジオや雑誌に投稿するか、弁論大会?コンクール、あとなんだろう。有名になる?

インターネットが商用化されて、個人でも使えるようになったころ、まだ変化はゆっくり、少しずつだった。

メールでやり取りできたり、ホームページに思ってることを書けたり、フォーラムやチャットで知り合ったり、意見のやり取りができるようになったり。それまでがんばってもできなかったことができるんだという感覚が強くあった。

使えるサービスも少なかった。利用者も少なく、研究者や技術者、理系の大学生とかが多かったりして、何か問題が起きればどうしたらいいか話し合ったり、それをまとめたりして、使いながらネットリテラシーを身に付けることもできた。

そのあと、インターネットは急激に普及することとなった。

携帯電話もネットにつながるようになり、利用者は莫大な数になった。

でも、HTMLは論文やレポートにマークアップすることで弱い構造(見出しや段落)を与え、大学ごとに違う書式でも、違うブラウザでも、その書式に従って表示できるようにするために作られたことも、GnuやGPLは、コンピュータやインターネットで利益を優先する企業に対抗して、優れた知識や技術は共有してより良くしていこうという考え方に賛同する研究者や技術者たちが作り上げてきたことも、ブログは、それまで相手の書いた記事に対して自分の考えや意見を言うには、その相手の記事にコメントするという閉じたやり取りしかできなかったものを、自分のブログに書いて繋ぐことができるようにした、世界中で発表される意見同士が繋がるという画期的なシステムだったことも、たぶんほとんどの人は知らない世界になった。


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