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出版物の総額表示義務化問題、新米“一人出版社”の出した結論

 来年4月から出版物も他の多くの商品同様、税込みでの価格表示が義務化されるという。そうなると、税率が変わるたびに出版事業者は本のカバーの付け替えなどを強いられ、莫大なコストがかかり、絶版になる本もあるだろう……と現在、あちこちで心配され、この「出版物の総額表示義務化問題」はけっこうな注目を集めている。

 かくいう私もこの8月に“一人出版社”を始めた身なので、この問題に関心がないわけではない。というより、関心を持たざるを得なかった。この問題が最初に大きな話題になった9月頃、ちょうど創業1作目の本『もう一つの重罪 桶川ストーカー殺人事件「実行犯」の告白』を制作していたさなかだったためだ。

 そしてこの問題について色々調べ、色々考え、1つの結論にたどり着いた。それは、出版物の総額表示義務化問題は、少なくとも新刊に関しては「あまり問題ではない」ということだ。

 百聞は一見に如かずなので、実際に見て頂こう。以下は、上記の『もう一つの重罪』のカバーの折り返しの部分だ。

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 見てお分かりの通り、この本は今後消費税が上がってもカバーの付け替えなどはせず、そのまま売り続けられる価格表示になっている。関係省庁である財務省(主税局税制第二課)、消費者庁(消費税表示対策課)、内閣府(消費税価格転嫁等総合相談センター)にそれぞれ相談し、検討した結果なので、新刊ならこれでほぼ間違いないはずだ。

「間違いない」ではなく、「ほぼ間違いない」という言い方しかできないのは、消費税が今後、(1)下がる可能性や、(2)10・5%や11・5%のような小数点以下の数字もある税率に変わる可能性もまったく無いわけではないからだ。

 実際、財務省の担当者からも、(1)や(2)のようなケースを除けば「基本的にはその価格表示で大丈夫です」と言われている。この世にリスクがゼロのものは無いので、「基本的には大丈夫なら、大丈夫も同然」というのが私の判断だ。

 すでに税別価格のみの表記で発行された既刊書は、新たにこのような対応をするのは難しいかもしれない。それを思うと、「これで大丈夫」と声高に叫ぶことはできないが、これから出す新刊については、この機会に価格表示の「新しい表現」を生み出す手もあるように思う。

 実際、すでにこの『もう一つの重罪』の価格表示に目をとめてくださり、ツイッターで拡散してくださった人たちもいた。難しく思える状況も前向きに受け止め、新しいことを何かやってみれば、気づいてくれる人はいる。これは私が“一人出版社”なるものを始めてみて、嬉しかったことの1つだ。

    ▲映画評論家の柳下毅一郎さん

    ▲じゅんさん




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ノンフィクションのライターです。主に事件関係の取材、執筆をしています。2020年8月、一人出版社リミアンドテッドを創業しました。主な作品に『平成監獄面会記』(笠倉出版社)、『マンガ「獄中面会物語」』(同)、『絶望の牢獄から無実を叫ぶ』(鹿砦社)など。