管理委託契約書第15条(管理規約等の提供等)

第15条
乙は、甲の組合員から当該組合員が所有する専有部分の売却等の依頼を受けた宅地建物取引業者が、その媒介等の業務のために、理由を付した書面の提出又は当該書面を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって次の各号に定めるもの(以下「電磁的方法」という。)により提出することにより、甲の管理規約、甲が作成し保管する会計帳簿、什器備品台帳及びその他の帳票類並びに甲が保管する長期修繕計画書及び設計図書(本条及び別表第5において「管理規約等」という。)の提供又は別表第5に掲げる事項の開示を求めてきたときは、甲に代わって、当該宅地建物取引業者に対し、管理規約等の写しを提供し、別表第5に掲げる事項について書面をもって、又は電磁的方法により開示するものとする。甲の組合員が、当該組合員が所有する専有部分の売却等を目的とする情報収集のためにこれらの提供等を求めてきたときも、同様とする。

一 送信者の使用に係る電子計算機と受信者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織を使用する方法であって、当該電気通信回線を通じて情報が送信され、受信者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに当該情報が記録されるもの
二 磁気ディスクその他これに準ずる方法により一定の情報を確実に記録しておくことができる物をもって調製するファイルに情報を記録したものを交付する方法
2 乙は、前項の業務に要する費用を管理規約等の提供又は別表第5に掲げる
事項の開示を行う相手方から受領することができるものとする。
3 第1項の場合において、乙は、当該組合員が管理費等を滞納しているときは、甲に代わって、当該宅地建物取引業者に対し、その清算に関する必要な措置を求めることができるものとする。

第 15 条関係コメント
① 本条は、宅地建物取引業者が、媒介等の業務のために、宅地建物取引業法施行規則(昭和32年建設省令第12号)第16条の2に定める事項等について、管理業者に当該事項の確認を求めてきた場合及び所有する専有部分の売却等を予定する組合員が同様の事項の確認を求めてきた場合の対応を定めたものである。
宅地建物取引業者又は売主たる組合員(以下「宅地建物取引業者等」という。)を通じて専有部分の購入等を予定する者に管理組合の財務・管理に関する情報を提供・開示することは、当該購入等予定者の利益の保護等に資するとともに、マンション内におけるトラブルの未然防止、組合運営の円滑化、マンションの資産価値の向上等の観点からも有意義であることを踏まえて、提供・開示する範囲等について定めた規定である。

② 本来、宅地建物取引業者等への管理組合の管理規約、管理組合が作成し保管する会計帳簿、什器備品台帳及びその他の帳票類並びに管理組合が保管する長期修繕計画書
及び設計図書(コメント15及びコメント44において「管理規約等」という。)の提供及び別表第5に掲げる事項の開示は管理規約及び使用細則の規定に基づき管理組合が行うべきものであるため、これらの事務を管理業者が行う場合にあっては、管理規約及び使用細則において宅地建物取引業者等への提供・開示に関する根拠が明確に規定されるとともに、これと整合的に本契約書において、管理業者による提供・開示に関して規定されることが必要である。
また、管理業者が提供・開示できる範囲は、原則として本契約書に定める範囲となる。本契約書に定める範囲外の事項については、組合員又は管理組合に確認するよう求めるべきである。管理業者が受託した管理事務の実施を通じて知ることができない過去の修繕等の実施状況に関する事項等については、管理業者は管理組合から情報の提供を受けた範囲で、これらの事項を開示することとなる。
なお、本契約書に定める範囲内の事項であっても、「敷地及び共用部分における重大事故・事件」のように該当事項の個別性が高いと想定されるものについては、該当事項ごとに管理組合に開示の可否を確認し、承認を得て開示する事項とすることも考えられる。

③ 提供・開示する事項に組合員等の個人情報やプライバシー情報が含まれる場合には、個人情報保護法の趣旨等を踏まえて適切に対応する必要がある。
なお、別表第5に記載する事項については、「敷地及び共用部分における重大事故・事件」に関する情報として特定の個人名等が含まれている場合を除き、個人情報保護法の趣旨等に照らしても、提供・開示に当たって、特段の配慮が必要となる情報ではない(売主たる組合員の管理費等の滞納額を含む。)。
④ 管理業者が、管理組合の組合員から当該組合員が所有する専有部分の売却等の依頼を受けた宅地建物取引業者に対して総会等の議事録を閲覧させる業務を受託する場合は、本契約内容に追加を行うものとする。この場合において、当該議事録が電磁的記録で作成されているときは、当該議事録の保管場所において、当該電磁的記録に記録された情報の内容を書面又は出力装置の映像面に表示する方法により表示したものを閲覧させるものとする。なお、議事録には個人情報やプライバシー情報が含まれる場合も多いことから、発言者や審議内容から特定の個人が識別できないように加工するなど、個人情報保護法の趣旨等を踏まえて適切に対応することが必要である。

⑤ 管理業者が第1項に基づいて提供・開示した件数、第2項に基づいて受領することとする金額等については、第 10 条第3項の報告の一環として管理組合に報告することとすることも考えられる。

⑥ 第1項の「その他の帳票類」とは、領収書や請求書、本契約書、修繕工事請負契約書、駐車場使用契約書、保険証券などのことをいう。

⑦ 第1項の「設計図書」とは、適正化法施行規則第 102 条に定める図書のことをいう。

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