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管理適正化基本指針三 各種事項  

三 マンション管理適正化指針に関する事項

本マンション管理適正化指針は、管理組合によるマンションの管理の適正化を推進するため、 その基本的な考え方を示すとともに、地方公共団体が法第五条の二に基づき管理組合の管理者等に対して助言、 指導等を行う場合の判断基準の目安を別紙一に、法第五条の四に基づき管理計画を認定する際の基準を別紙二に示すものである。

1 管理組合によるマンションの管理の適正化の基本的方向

マンションは、我が国における重要な居住形態であり、その適切な管理は、区分所有者等 だけでなく、社会的にも要請されているところである。
このようなマンションの重要性にかんがみ、マンションを社会的資産として、この資産価値をできる限り保全し、 かつ、快適な居住環境が確保できるように、以下の点を踏まえつつ、マンションの管理を行うことを基本とするべきである。

(1)  管理の主体は、区分所有者等で構成される管理組合であり、 管理組合は、区分所有者等の意見が十分に反映されるよう、また、長期的な見通しを持って、 適正な運営を行うことが必要である。特に、その経理は、健全な会計を確保するよう、 十分な配慮がなされる必要がある。 また、第三者に管理事務を委託する場合は、その内容を十分に検討して契約を締結する必要がある。

(2) 管理組合を構成するマンションの区分所有者等は、管理組合の一員としての役割を十分認識して、 管理組合の運営に関心を持ち、積極的に参加する等、その役割を適切に果たすよう努める必要がある。

(3)  マンションの管理には専門的な知識を要する事項が多いため、管理組合は、問題に応じ、 「マンション管理士等」専門的知識を有する者の支援を得ながら、 主体性をもって適切な対応をするよう心がけることが重要である。

(4)  マンションの状況によっては、外部の専門家が、管理組合の管理者等又は役員に就任することも考えられるが、 その場合には、マンションの区分所有者等が当該管理者等又は役員の選任や業務の監視等を適正に行うとともに、 監視・監督の強化のための措置等を講じることにより適正な業務運営を担保することが重要である。

2  マンションの管理の適正化のために管理組合が留意すべき事項

(1) 管理組合の運営

管理組合の自立的な運営は、マンションの区分所有者等の全員が参加し、 その意見を反映することにより成り立つものである。そのため、管理組合の運営は、情報の開示、運営の透明化等を通じ、 開かれた民主的なものとする必要がある。
また、集会は、管理組合の最高意思決定機関である。 
したがって、管理組合の「管理者等」は、その意思決定にあたっては、事前に必要な資料を整備し、 集会において適切な判断が行われるよう配慮する必要がある。

管理組合の管理者等は、マンション管理の目的が達成できるように、法令等を遵守し、 マンションの区分所有者等のため、誠実にその職務を執行する必要がある。


(2) 管理規約

管理規約は、マンション管理の最高自治規範であることから、管理組合として管理規約を作成する必要がある。 その作成にあたっては、管理組合は、建物の区分所有等に関する法律に則り、 「マンション標準管理規約」を参考として、当該マンションの実態及びマンションの区分所有者等の意向を踏まえ、 適切なものを作成し、必要に応じてその改正を行うこと、これらを十分周知することが重要である。

さらに、快適な居住環境を目指し、マンションの区分所有者等間のトラブルを未然に防止するために、 使用細則等マンションの実態に即した具体的な住まい方のルールを定めておくことも重要である。

また、管理費等の滞納など管理規約又は使用細則等に違反する行為があった場合、 管理組合の管理者等は、その是正のため、必要な勧告、指示等を行うとともに、法令等に則り、 少額訴訟等その是正又は排除を求める法的措置をとることが重要である。


(3) 共用部分の範囲及び管理費用の明確化

管理組合は、マンションの快適な居住環境を確保するため、あらかじめ、共用部分の範囲及び 管理費用を明確にし、トラブルの未然防止を図ることが重要である。

特に、専有部分と共用部分の区分、専用使用部分と共用部分の管理及び駐車場の使用等に関してトラブルが生じることが多いことから、 適正な利用と公平な負担が確保されるよう、各部分の範囲及びこれに対するマンションの区分所有者等の負担を明確に定めておくことが重要である。
→。トラブル解決のため管理費用の支出は柔軟に行うことが重要であるとはされていない。

(4) 管理組合の経理

管理組合がその機能を発揮するためには、その経済的基盤が確立されている必要がある。 このため、管理費及び修繕積立金等について必要な費用を徴収するとともに、管理規約に基づき、 これらの費目を帳簿上も明確に区分して経理を行い、適正に管理する必要がある。

また、管理組合の管理者等は、必要な帳票類を作成してこれを保管するとともに、 マンションの区分所有者等の請求があった時は、これを速やかに開示することにより、 経理の透明性を確保する必要がある。


(5) 長期修繕計画の作成及び見直し等

マンションの快適な居住環境を確保し、資産価値の維持向上を図るためには、 適時適切な維持修繕を行うことが重要である。特に、経年による劣化に対応するため、 あらかじめ長期修繕計画を作成し、必要な修繕積立金を積み立てておく必要がある。

長期修繕計画の作成及び見直しにあたっては、「長期修繕計画作成ガイドライン」を参考に、 必要に応じ、マンション管理士等専門的知識を有する者の意見を求め、また、 あらかじめ建物診断等を行って、その計画を適切なものとするよう配慮する必要がある。

長期修繕計画の実効性を確保するためには、修繕内容、資金計画を適正かつ明確に定め、 それらをマンションの区分所有者等に十分周知させることが必要である。

管理組合の管理者等は、維持修繕を円滑かつ適切に実施するため、 設計に関する図書等を保管することが重要である。また、この図書等について、 区分所有者等の求めに応じ、適時閲覧できるようにすることが重要である。

なお、建設後相当の期間が経過したマンションにおいては、長期修繕計画の検討を行う際には、 必要に応じ、建替え等についても視野に入れて検討することが望ましい。建替え等の検討にあたっては、 その過程をマンションの区分所有者等に周知させるなど透明性に配慮しつつ、各区分所有者等の意向を十分把握し、 合意形成を図りながら進める必要がある。


(6) 発注等の適正化

管理業務の委託や工事の発注等については、事業者の選定に係る意思決定の透明性確保や利益相反等に注意して、 適正に行われる必要があるが、とりわけ外部の専門家が管理組合の管理者等又は役員に就任する場合においては、 マンションの区分所有者等から信頼されるような発注等に係るルールの整備が必要である


(7) 良好な居住環境の維持及び向上

マンションの資産価値や良好な居住環境を維持する観点から、防災に係る計画の作成・周知や訓練の実施、 被災時を想定した管理規約上の取り決め、火災保険への加入等、管理組合としてマンションにおける防災・減災や防犯に取り組むことは重要である。

また、防災・減災、防犯に加え、日常的なトラブルの防止などの観点からも、マンションにおけるコミュニティ形成は重要なものであり、 管理組合においても、区分所有法に則り、良好なコミュニティの形成に積極的に取り組むことが重要である。

一方、自治会及び町内会等(以下「自治会」という。)は、管理組合と異なり、 各居住者が各自の判断で加入するものであることに留意するとともに、特に管理費の使途については、 マンションの管理と自治会活動の範囲・相互関係を整理し、管理費と自治会費の徴収、支出を分けて適切に運用する必要がある。 なお、このように適切な峻別や、代行徴収に係る負担の整理が行われるのであれば、自治会費の徴収を代行することや、 防災や美化などのマンションの管理業務を自治会が行う活動と連携して行うことも差し支えない。


(8) その他配慮すべき事項

マンションが団地を構成する場合には、各棟固有の事情を踏まえつつ、全棟の連携をとって、 全体としての適切な管理がなされるように配慮することが重要である。
複合用途型マンションにあっては、住宅部分と非住宅部分との利害の調整を図り、その管理、 費用負担等について適切な配慮をすることが重要である
また、管理組合は、組合員名簿や居住者名簿の管理方法等、個人情報の取り扱いにあたっては、 個人情報の保護に関する法律による個人情報取扱事業者としての義務を負うことに十分に留意する必要がある。


3.  マンションの管理の適正化のためにマンションの区分所有者等が留意すべき事項

マンションを購入しようとする者は、マンションの管理の重要性を十分認識し、売買契約だけでなく、 管理規約、使用細則、管理委託契約、長期修繕計画等管理に関する事項に十分に留意することが重要である。 また、管理組合及びマンションの区分所有者等は、マンションを購入しようとする者に対するこれらの情報の提供に配慮する必要がある。

 区分所有者等は、その居住形態が戸建てとは異なり、 相隣関係等に配慮を要する住まい方であることを十分に認識し、その上で、マンションの快適かつ適正な利用と資産価値の維持を図るため、 管理組合の一員として、進んで、集会その他の管理組合の管理運営に参加するとともに、 定められた管理規約、集会の決議等を遵守する必要がある。 
そのためにも、マンションの区分所有者等は、マンションの管理に関する法律等についての理解を深めることが重要である。

 専有部分の賃借人等の占有者は、建物又はその敷地若しくは附属施設の使用方法につき、 マンションの区分所有者等が管理規約又は集会の決議に基づいて負う義務と同一の義務を負うことに十分に留意することが必要である。


4 マンションの管理の適正化のための管理委託に関する事項

管理組合は、マンションの管理の主体は管理組合自身であることを認識したうえで、 管理事務の全部又は一部を第三者に委託しようとする場合は、「マンション標準管理委託契約書」を参考に、 その委託内容を十分に検討し、書面又は電磁的方法(管理組合の管理者等又はマンションの区分所有者等の承諾を得た場合に限る。) をもって管理委託契約を締結することが重要である。

管理委託契約先を選定する場合には、管理組合の管理者等は、事前に必要な資料を収集し、 マンションの区分所有者等にその情報を公開するとともに、管理業者の行う説明会を活用し、 適正な選定がなされるように努める必要がある。

管理委託契約先が選定されたときは、管理組合の管理者等は、 説明会等を通じてマンションの区分所有者等に対し、当該契約内容を周知するとともに、 管理業者の行う管理事務の報告等を活用し、管理事務の適正化が図られるよう努める必要がある。

万一、管理業者の業務に関して問題が生じた場合には、管理組合は、 当該管理業者にその解決を求めるとともに、必要に応じ、 管理業者の所属する団体にその解決を求める等の措置を講じる必要がある。

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