コンサルティングのスタイルを考える話
中小企業診断士の資格を取得して5年半が経ちましたが、まわりの診断士の方がどのようなスタイルでクライアントと関係を築いているかというのが、資格取得時から今に至って変わらない、私の最大の関心ごとです。
今日は、診断士を含むコンサルタントがどのようなスタイルでクライアントに支援しているのか、ちょっと抽象的というか概念的な話を書き留めておきます。
プロセス・コンサルテーションって何?
最近読んだ本の中に、「プロセス・コンサルテーション」という言葉が出てきました。
私自身がやっているコンサルティングの仕事は「価値創造のプロセス設計」なので、プロセス・コンサルテーションというのは最初(数年前)に聞いたときはてっきり事業プロセスに対して診断・助言するスタイルのことかと思ってましたが、実際はちょっと違いました。
プロセス・コンサルテーションとは、現代の組織開発の発展に大きく貢献したエドガー・H・シャインというアメリカの心理学者が提唱した概念です(…私は「謙虚なコンサルティング」という本をMBA在籍時代に読みましたが、良書です)。
以下、本を参考にコンサルティングを3つのモデルに整理してみました。
何がどう違うのかがとてもわかりやすいかと思います。
ポイントは「問題」と「解決」それぞれに対してコンサルタントがどのように関与するか?という違いです。
プロセス・コンサルテーションモデルでは「クライアントが(問題を)解決する」となっていますが、それではなんのために外部からコンサルタントを雇うのか意味がわからないと思われる方もいらっしゃるかも知れませんね。
でも、ちゃんと意味はあります。
ファシリテーターの「質」によって成果に差が出ることが数々の研究によって明らかにされているからです。
要するに、プロセス・コンサルテーションを実践するにあたっては、コンサルタントはファシリテーターにもならないといけないということです。
解決策はどこからやってくるのか?
私のコンサルテーション・スタイルは、この「プロセス・コンサルテーション」です。
冒頭でも記しましたが、私の仕事は「価値創造のプロセス設計」です。
そこに必要となるリソースを整えて、そこで活動するイノベーション人材を育成し、創造的な問題解決を実践するカタをつくり、それがワークする組織づくりに貢献することです。
価値創造にフォーカスしているのは、私がその専門家だからです。
私の専門分野は狭義にはプロダクトデザインですが、広義には、そのために活用してきた「デザイン思考」がベースにあり、長年の実務経験からマーケティングとエンジニアを巻き込んでどのようにして組織全体で価値創造を進めていけばよいかという経験則を体系化したものをサービスとして提供しています。
私の職能は、先に掲げた図表で言えば「専門家モデル」でも「医師ー患者モデル」でも対応できますが、あえて「プロセス・コンサルテーション」にこだわってます。
その理由は、VUCAな時代であることがいちばん大きいです。
結論だけ言うと、常に外部環境は変化し続けているわけで、しかもその変化は予測不可能なわけですから、外から解決策を持ってきたところで一時的に解決できたとしてもすぐに不適合を生じます。
だから、組織内外のリソースを活用して解決策を講じる経営を支援することを選び、「専門家モデル」でも「医師ー患者モデル」でもなく、「プロセス・コンサルテーション」にこだわって、変化を前提として、創造的な問題解決に取り組む組織の土壌づくりに貢献したいと思っています。
結局、どのモデルがよいのか?
「専門家モデル」や「医師ー患者モデル」を否定しているわけではなく、たまたま私の経験則がいちばん活かせるスタイルが「プロセス・コンサルテーション」なわけでして、それぞれに利点はあると思います。
「専門家モデル」の利点は、クライアントの要望にすぐに応えられることです。
お困りごとがあるから専門家に相談して、解決策を求めるわけですが、これは仕事の基本というか、この関係が成り立たないと仕事は発生しませんよね。
「医師ー患者モデル」は「専門家モデル」に似ていますが、違いは「クライアントが問題を認識できていない」ことです。
私が尊敬して憧れている佐藤可士和さんのスタイルがコレです。
佐藤さんはメディアに対して「自分は企業のドクター」とおっしゃってますし、企業も佐藤さんに何を期待しているかというと「佐藤さんから見て、うちの会社はどうですか?」といった佐藤さん目線がいちばん欲しいところなので、それが、「専門家モデル」と「医師ー患者モデル」の違いと認識できるでしょう。
・・・というわけで、3つのモデルそれぞれに特徴があり、どれもニーズはちゃんとあるので、どのモデルがよいとかそーいったわけではありません。
ちなみに、私の感覚では、私のまわりにいる診断士の方々は「専門家モデル」が圧倒的に多いです。とりわけ、補助金申請書類の作成支援がそれにあたります。
でも、今週末(8/24)に私が受講する予定の理論政策更新研修では「プロセス・コンサルテーション」について扱われますし、中小企業向けのコンサル=「専門家モデル」と言い切るわけではありません。
「医師ー患者モデル」も一見すると多そうですが、クライアントが問題を認識していない状態でコンサルタントが関わるのは、商売上、難しいですよね。
佐藤可士和さんのように多くの人がその実績や高いスキルを認識していれば、「この人に診てもらいたい!」となるでしょうけど。
むすび
今日はコンサルティングの3つのスタイルについて書きました。
繰り返しますが、私は「プロセス・コンサルテーション」のスタイルを選んでますが、難しいと感じていることは、クライアントが問題を認識していない状態でお仕事を引き受けることになるので、その機会を簡単には作れないことです。
なので、お仕事を紹介してくださる方々には本当に頭が上がりません。
3つのスタイルそれぞれに利点があるので、複数のスタイルを組み合わせてもいいわけですし、自分のスタイルに合ったコンサルティングを実践できればそれでよいと思います。
私も他者から異なるスタイルをたくさん学ばせてもらって、自分だけのスタイルをつくっていきたいと思ってます。
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