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買い手のスキルやセンスが納品物の出来映えに影響する仕事の話

たとえば、ホームページ制作を依頼するにあたって、3万円と10万円の予算ではどちらが「より気に入った」ホームページを手に入れることができるでしょうか?

予算が多いほどスキルが高そうな制作者に作ってもらえそうですし、また、制作者と何度もやり取りができて自分好みに近づいていくことにも期待できます。

予算が多い方がよいに決まってる!と考えたくもなります。

ですがその一方で、たとえば、10万円を手にした人が買い物に出掛けて、3万円を握りしめた人よりもセンスのよい洋服を買ってこれるでしょうか?
・・・そうとは限りませんよね。
「予算の大きさ」と「センスのよい買い物」に相関性はないということです。

そうなると、気に入ったホームページを確実に手に入れたいときはどうすればよいのでしょうか?・・・今日はそんな話を通じて、ブランド力の本質について私見を書きたいと思います。


ブランディングのお手伝いがいつしかホームページ制作になっていた


私は時間に余裕があるときには、ふだんのコンサルティングの仕事とは切り離して、パーソナル・ブランディングのお手伝いをしています。
独立する診断士のブランド表現にまつわるお手伝いでは、ロゴデザインなどこれまで何人もやりましたが、そのアウトプットの多くはホームページになります。

そもそも「パーソナル・ブランディングって何?」って感じでしょうし、それがあると何がどう嬉しいのかすらわかりませんが、その価値を外在化したものとしてホームページがあると納得感が違ってくるものと思います。

以前、こんなnoteを書きました。いちおうリンクを貼っておきます。

ごく一部のご依頼案件を除いて、大抵は友人・知人に限定して無償でやっているのですが、今回は友人・知人に限定せずにリーズナブルな価格で売り出そうかと考えています。


ホームページの値段はポートフォリオを根拠とした制作スキルで決まる


(パーソナル・ブランディングの納品物の形態として)ホームページ制作を売り出すにあたって、さて、いくらに値付けしようか?と。

ここでは市場でのトレンド価格を基準に考えてみます。
ココナラで「STUDIOでのホームページ制作」を見てみましたが、おそらく3万円が最低価格のようで、多くは10万円前後で出ています。

ココナラで売り出されているものを見る限り、ポートフォリオ(作品集)を根拠とした制作スキルで値決めされているような印象です。
10万円で出している人のほうが、3万円で出している人よりも立派なポートフォリオな傾向が見られました。
デザインのよいところは、見てその価値がわかることなので説得力があります。


好みのホームページを買うには、買い手自身のスキルやセンスを要する


制作スキルを見て制作者を選ぶのはわかるのですが、そもそもの話に戻ると、その情報(ポートフォリオ=制作スキル)から自分好みのホームページを本当に得られるかどうかはちょっとわかりません。

結局、そのホームページを気に入るかどうかは、買い手の意思をどれだけ上手に引き出して表現できるか?ということになるのではないかと、私はそう考えます。
なぜなら、買い手から得た情報をもとにホームページがデザインされるからです。
つまり、好みのホームページを買うには、買い手のスキルやセンスを要するということです。

買い手からの原稿どおりに作ってもらえれば満足できる人もいるでしょうけど、そうではない人もいます。その理由は以下のセクションで説明します。


人は自分の欲求をすべて言語化できているとは限らない


私の話で恐縮ですが、オーダーメイドでスーツを買っています。
最初は何を買ってよいのかわからず、お店に入るのにすら抵抗がありましたが、販売員のスキルのおかげで10年以上も買い続けることになりました。

販売員のヒアリングが絶妙だったのです。ヒアリングというか創造的対話でした。
そもそもスーツのことを知らない私は、自分の欲求をうまく言語化できないので、その創造的対話、購入体験のプロセス設計がとてもありがたかったのです。

私の場合は洋服を選ぶスキルがないので、販売員に欲求を引き出してもらわないこと以外に満足できる買い物の方法はないわけです。
そこに価値を感じてお金を払っています。
もちろん、その価値が外在化されたものがスーツになるわけですが。

「人は自分の欲求の5%しか言語化できていない」という研究結果もあります。
つまり、思っていることの95%は、他の誰かによって引き出されないことには表に出てこないのかも知れません。
これが原稿どおりにホームページを作っても満足できない人が出てくる理由です。


買い手のスキルを引き出すサービスを価格に転嫁するのは容易ではない


買い手の意思が制作物のデザインに大きく影響するという意味では、ホームページもオーダーメイドのスーツも一緒です。

そこで、センスのよい買い物をどれだけお手伝いできるか?!ってことを、ホームページ制作の販売においてポートフォリオを掲載するかのように表現できないかと考えるわけです。
ここまで説明したとおり、買い手の意思を上手に引き出せれば、お客さまに満足していただけるデザインになるという仮説が立ちます。

しかし、ホームページの価格構成の話からもわかるとおり、価格は制作スキルに依存しています。裏を返せば、買い手のスキルを引き出すことをサービスとして標準化して価格に転嫁するのは難しいのではないか?といった仮説も立ちます。

これは技術的に難しいのではなく、そこにお金がかかることに対して顧客から事前に納得感を得るのが難しいということです。
私が冒頭で記したパーソナル・ブランディングの話と同じで、顧客が欲しいのはホームページであって、パーソナル・ブランディングによって引き出されることが何であって、それがなぜ嬉しいのかがわからないのです。
わからないことにお金を払いたいとは誰も思いませんからね。

半面、オーダーメイドのスーツ屋さんは比較対象が既成の寸法で売られているスーツなので、顧客の要望を引き出す販売員さんのスキルに価値があると気づいているお客さまは多いでしょうね。


ブランド力とは、顧客から探索コストを取り除くこと


買い手のスキルを引き出すサービスを価格に転嫁するヒントはスーツ屋さんで出会った販売員にあるのですが、ホームページ制作の販売においてそれをどのように設計するかが課題です。

価格に上乗せすることが難しい価値というのは、最後はブランド力につながると私は考えます。ブランド力は、顧客に「選ぶ基準」を与えているのですから。
ブランド力があるから顧客が容易に選べるわけでして、つまり顧客のスキルやセンスを引き出してくれるから価格が高いとも考えられるのです。

これはよくある誤解なのですが、有名だから高く売れるというのはブランド力による「現象」と捉えるべきで、価格が高いことの真因ではありません。
つまり、顧客から探索コストを取り除くお代をいただいていると考えると理解しやすいかも知れません。その方法のひとつが、顧客のスキルやセンスを引き出す取り組みとなるわけです。

現時点で私はココナラでしか見てませんけど、ホームページ制作やさんによってはそれを上手に見せて伝えることができているかも知れません。そういった会社にはきっとブランド力が備わっていることと思います。


むすび


私のコアスキルはWebデザイン制作ではないので、(美大出身なので美しく仕上げることは相対的に得意なのかも知れませんが)ホームページ制作会社さんとは違ったアプローチでホームページ制作を売ってみます。
そのときに、「センスのよい買い物のお手伝い」をどのように可視化できるか?!について、今日はその入口だけ考えてみました。

最後に話が飛びますが、私の本業である経営コンサルティングっていうのはまさしくこの「センスのよい買い物をどのようにお手伝いするか?」の問題と一緒です。
コンサルタントのアウトプットには買い手のスキルやセンスを要しますので(…但し、中小企業向けのご支援で多く見られる補助金の作文の仕事は話が別です)。

さらに飛ぶと、買い手のスキルやセンスを要するというこの考え方は私のコアスキルである「デザイン思考」にも当てはまります。ここでは詳しく書きませんが、デザイン思考では主客一体もしくは共創という言葉を使ってそれを説明します。

「センスのよい買い物のお手伝い」の研究が、私自身の本業にも活きてくればと思ってますし、パーソナル・ブランディングのお手伝いを通じて誰かのお役に立てれば幸いです。


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