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「自分がいないと仕事が回らないのですが…」とお客さまから相談されたときの話

「自分がいないと仕事が回らない」と仰るお客さまの心情は、おそらく「仕組みがなくて困っている」か「自分が求められていることに満足している(ことを誰かに伝えたい)」かのどちらか、もしくはその両方なんじゃないかと思います。

中小企業診断士としてコンサルティングのお仕事をいただく際、大抵は前者の「仕組みがなくて困っている」ことに対して策を講じますが、その逆に、後者の「自分が求められていることに満足している」を支持して、あえて「自分がいないと仕事が回らない」状態をつくることもあります。

なぜ、あえてそのような状態をつくるのか、疑問に思う人もいるのではないでしょうか?

今日はそんな疑問を私なりに解いていきたく、その考え方を書き留めます。

会社組織では「仕組みづくり」が大前提ではあるけれど…


会社組織のことを考えたら、仕組みづくりを進めることは当然のよきことではあります。
組織としての品質を保て、また組織的な活動で効率を追求することもできるからです。
そしてその仕組みづくりが、企業ブランドをつくる上では欠かせない組織活動にもなります。

その一方で、あえて「自分がいないと仕事が回らない」といった声が挙がる状態をつくるケースは、従業員のモチベーションに問題があるときです。
やっぱり、自分が活躍する場面が整い、「自分が求められていることに満足している」状態をつくることができれば組織内の細胞が元気になりますからね。

「個」が活躍する場面が整った後は、仕組みづくりへと活動をシフトしていきますが、まずが個の力、モチベーションを引き出すべきケースというのは中小企業においてはけっこうあります。


個人事業主にとって仕組みづくりにはどのような意味があるのか?


企業では組織だった活動を高めるために仕組みづくりが有効であることに疑いの余地はありませんが、一方の「個」がすべてとでも言えそうな個人事業主にとって、仕組みづくりにはどのような意味があるのでしょうか?

「個」の活動を形式知化することで、自分のパフォーマンスを常に発揮しやすい状態をつくることができます。
たとえば、自分なりのルーティンも形式知化のひとつでしょう。
その形式知化とは仕組みづくりと同義と考えてよいです。

こういった形式知化は、商売上もかなり大きなメリットになります。
どうやったら売れるのか?の法則(=メソッド)づくりみたいなものです。

とりわけサービス業においては自分なりのメソッドを持つと、それを元に商売を発展させることができます。
それは、自分ブランドづくりに等しい取り組みになるとも言えます。
サービス業ですと、買い手は事前にその品質を確認することが難しいですが、形式知化されていることで売り手はサービス遂行能力を事前に伝えることができます。
買い手からすると「どうやって(広義の)問題解決に取り組んでくれるのか?」がイメージできることで心理的ハードルが下がります。

また、モノ売りの仕事におけるメソッドであれば、(価格で競争するなら話は違いますが)モノの背景にあるストーリーなど「情報」をモノと一緒に商材にしていくことで規模の小さな事業者にも強みが生まれます。
そのとき、情報の揃え方がその事業者なりのメソッドになります。

このように、「個」をベースに仕組み(=形式知化→メソッド)をつくることは、個人事業主にとって大いに役立つことがわかります。


「自分がいないと仕事が回らない」という状態が望ましいケース


ここまで、中小企業のケース、個人事業主のケースにおける仕組みづくりについて書きましたが、最後に、冒頭に記した「あえて自分がいないと仕事が回らない」状態をつくるケース、すなわち仕組みづくりとは逆行するケースについて触れたいと思います。

それは、「自分がいないと仕事が回らない」状態を取引先企業に対してつくることです。
とりわけこれは、個人事業主が企業相手に取引するときに目指すべき状態です。
企業がわざわざ個人事業主と取引する理由を、その人の個性に価値を見出していると仮定して、その取引先相手にとって必要不可欠な個性になることを目指してみるのもよいかと思います。

これからの時代、 ChatGPT然りAIが進化していくと知識偏重で優位性を築いてきた職種は間違いなく変化していきます。
残念ながらその多くは優位性が崩れていく方向に変化するでしょう。
個人事業主で企業との取引が知識に偏重している人は、もしかしたら要注意かも知れません。

そこで、あらためて、企業から見たときの取引理由が「個性」に結びつく方向で、自分の仕事を棚卸ししてみるとよいでしょう。
その個性にはもちろん経験則も含まれています。

「自分がいないと仕事が回らない」状態を取引先企業に対してつくること、すなわち取引先企業に対して代え難い存在になることができれば継続的にお付き合いにもつながるでしょうし、また「個性」が際立てば口コミなども広がりやすくなるので、メリットは少なくないことと思います。


むすび


今日は「自分がいないと仕事が回らないのですが…」という、よく耳にする言葉について少し掘り下げてみました。

企業においても個人においても、個が大切な状況を無視して、自分がいないと仕事が回らない状況を脱することを一概に目指してはいけません。

とりわけ個人事業主においては、あえて「自分がいないと仕事が回らない」状況づくりを目指してみてもよいのでは?!と思ったりもします。


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