見出し画像

「経営戦略を描いても、従業員が動いてくれないのですが...」とお客さまから相談されたときの話

「経営戦略を描いても、従業員が動いてくれない」

これは、経営戦略に限った話ではなく、各種プロジェクトプランもそうですし、会社の制度もそうです。
プランを作ってもメンバーがそのとおりに動いてくれないと嘆きたくなるリーダーをこれまでたくさん見てきました。

今日はそんなお悩みを取り上げたいと思います。


戦略立案の指導も従業員教育も大切ですが…


経営戦略に関して言えば、経営者さまからは、大抵は
「従業員を教育してくれ」
「戦略立案を指導してくれ」
と、そのどちらか、またはその両方でコンサルティングをお願いされます。

私はそこで、従業員教育もしますし、経営戦略策定のお手伝いもしますが、大抵はそれらに取り組めばお悩みが解決されるというわけではありません。

もちろん、プランのレベルを高めること(戦略立案の指導)も、プランを受ける側のスキルを高めること(従業員教育)も大切な取り組みであることは間違いないのですが、私は根本的には以下の2点がもっと大切な取り組みになると考えています。

(1)真の問題はどこにあるのか?!を経営者さまと一緒に考えること
(2)現状と未来を結ぶ上り坂に、従業員が昇れる階段をつくること


(1) 真の問題はどこにあるのか?!を経営者さまと一緒に考えること


ひとつ例を挙げます。
ジョギングをしたいと思っている女性の例え話にします。

その女性はなぜジョギングをするのでしょうか?
…と、もしそんなことを聞かれたら、「そんなの人によって目的は違うから一概に言えませんよ!」という声が聞こえそうですが、はい、そのとおりです。

Aさんの目的・ゴールは「継続で得られる達成感」かも知れませんが、Bさんはダイエットを目的にしているかも知れませんし、Cさんは、Dさんは…と、みなさん、ジョギングの目的は人それぞれです。

筆者作成

仕事においても同じことが言えます。
いくら経営者が立派なビジョンを掲げても、従業員一人ひとりが働く理由(目的・ゴール)が、そのビジョンと本当に一致しているかどうかなんてわかりませんし、それを強制することはできません。
昔は強制できたかも知れませんけど、多様性の現代は難しいでしょう。

残念ながら、まだそれに気づいていない経営者がけっこう多いです。

では、どうすればよいか?

立派なビジョン・経営目標が必要なのではなく、そこに至る過程にいかに従業員に共感されるかが重要なのではないでしょうか?

戦略立案の指導や従業員教育よりも先に、従業員がその仕事にどう向き合っているかについて経営者が正しく理解することから始まります。

一人ひとり目的もゴールも異なるわけですから、共通のゴールを見出すのはなかなか難しいです。
なので、その共通のゴールを見出すために、従業員を巻き込むことで腑に落とす取り組みが必要になります。
お互いのことを理解し合う中で、ゴールを一緒に決める。
そんなお互いを思いやる取り組みが欠けている会社からは、「経営戦略を描いても、自社の従業員が動いてくれない」というお悩みがよく聞こえてきます。

真の問題は、こういった取り組みをしていれば大抵は見つかります。
まずは、ちゃんと向き合える状態をつくることです。


(2) 現状と未来を結ぶ上り坂に、従業員が昇れる階段をつくること


またジョギングの一例を出します。
ジョギングをするAさんのケース、ゴールが「継続で得られる達成感」であれば、問題は「継続できるモチベーション」であることが想像できます。

筆者作成

たとえば、ジョギングシューズを作っているメーカーの仕事は、よりよいシューズを顧客に提供することでしょうけど、よりよいシューズはAさんの問題を解決できるでしょうか?
シューズの機能・性能は、残念ながら直接的な解決策とは言えません。

そこでシューズメーカーのナイキは、現状と未来の間に生じるギャップ=問題に、ランアプリ(NRC:Nike Run Club)という具体策を提供しました。
ランアプリでつながる世界中のランナーたちとお互いに励まし合う、そんな価値を創造しています。

筆者作成/画像の出所:ナイキ ホームページ

これがあれば、ユーザーは目的・ゴールに向けてジョギングを楽しむことができます。
つまり、ランアプリはギャップを埋めるピースとなっているのです。

「継続できるモチベーション」が問題なユーザーにとっては、その問題(=現状と未来の間に生じるギャップ)を解決する手段を選んだ上で、快適なジョギングシューズを選ぶことでしょう。


さて、話を経営者のお悩みに戻します。

会社が従業員と共に目指すビジョン(目的・ゴール)はできても、それだけでは実行できません。
「で、私は一体何をすればいいの?」
となることが多いです。
普段の仕事の何を変えれば会社が定めた未来に近づくのか?、もしくは、今までの取り組みの何が悪いのか?、そもそも悪いところがあるのか?…そんなふうに考えても、何も始まりません。

これは、ビジョン(目的・ゴール)と自身の現状との間のギャップを認識できていない状態です。

ゴールができると、現状との間にはギャップが生まれます。
そのギャップが何なのかを、経営者をはじめ、従業員のみなさまに理解していただく取り組みが必要になります。

ナイキの例のように、ゴールに向けたユーザーの直接的な取り組みを具体化することが、お悩みを抱える企業にも同様に求められます。

ギャップを理解し、ゴールに向けたユーザーの直接的な取り組みを具体化しましょう。
それが、未来に架かる階段になるのです。
さらに、その階段を昇る一歩目を意識してあげるとなおよいでしょう。
そうなると、「で、私は一体何をすればいいの?」なんて声は聞こえなくります。


むすび


今日は、プランを描いたのに従業員がついてきてくれないといったお悩みに対して私なりの考え方を書きました。

ひとつは、真の問題はどこにあるのか?!を経営者さまと一緒に考えること。
もうひとつは、現状と未来を結ぶ上り坂に、従業員が昇れる階段をつくること。

その上で、プランのレベルを高めること(戦略立案の指導)や、プランを受ける側のスキルを高めること(従業員教育)に取り組んでみてはいかがでしょうか?


★本記事に関するお問い合わせはこちら


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?