「コンサルティングの費用や期間の妥当性について教えてほしい」とお客さまから訊かれたときの話
経営コンサルタントとして仕事をしていて、お客さまにご納得いただく費用と期間についての説明を求められることがよくあります。
コンサルティングの多くは、クライアントのご事情に個々に対応しています。
それ故に、料金の基準がお客さまにはわかりにくく、また、どれくらいの期間コンサルティングを受ければ経営課題が解決されるのかについても一概には言えません。
料金についてはいちおう相場感もあります。
ちょっと古いのですが、中小企業診断協会のデータを以下に引用します。
中小企業診断士のコンサルティング活動を示したものです。
上記より単純計算しますと、平均的な中小企業診断士は月に25日働いて75万円稼いでいることになります。つまり…
中小企業診断士という国家資格を持ったコンサルタントの実績を約500サンプルも集めて出した平均値なので、これをひとつの基準として見ることもできます。
しかし、当該データでは提供するサービスの質については測れていなく、故に、ひとつの課題解決に対する総コストについても触れられておりません。
よって、これで費用の妥当性が説明できているとは言えません。
お客さまは自社の課題解決のためにコンサルタントを雇うのに…。
というわけで今日は、課題解決の要因となる「提供するサービスの質」に関する考え方を私なりに示した上で、コンサルティングの費用と期間について書き留めます。
「サービスの質」に関する考え方
サービスの質と価格との関係性について、私の考え方をお伝えします。
たとえば家電品なら、品質の高低は機能やデザインで示せます。
同じ家電品のカテゴリーで、パナソニックとアイリスオーヤマの価格の違いをどのように考えますか?
もちろんそれぞれに価値はありますが、「機能差=価格差」になりますね。
高機能化によって研究開発費や部品代が乗っかるので高価になり、技術が絡むので模倣困難性も高くなります。さらに、高機能な部品だと希少性が高くなることもあります。
これをコンサルタントに置き換えて考えると「高機能=より高度で稀少な内容で他者には簡単には真似できない助言」に相当するかと思います。
たとえを変えてみます。
毎月のスマホの通信料金で、ソフトバンクモバイルとワイモバイルの料金の違いをどのように考えますか?
通信速度やギガなど「機能尺度」でも差をつけられますが、家電品とは異なり、質を測りにくい部分が増えます。
世間的にはその「質を測りにくい」部分のことを「サービス」と呼びますが、それは顧客が持つ印象による(主観的な)評価で質が測られます。
その質は、顧客への「ケアの度合い」と考えてよさそうです。
ただ、顧客は必ずしも「ケア度」が高いものを選ぶわけではありません。
たとえば飛行機であれば、ケアを省くことで安価に設定するLCC(格安航空会社)を好むお客さまがいるように、自身が片づけたい課題に応じて最適な「ケア度」を選んでいます。
こういったケースでも、コンサルタントに置き換えて考えてみます。
まず、「高いサービス=コンサルティングのケアが手厚い」と仮定します。
コンサルタントの場合、ケア度は知識や経験に依存し、ケア度が高いほどより高度な課題に対応できると考えます。
但し、顧客の課題に応じてケア度を調整することになり、必ずしもケア度が最も高いサービスが売れるわけではありません。
実際の私の活動は、提供するコンサルティング・プログラムをクライアントの事情、すなわち経営課題にどこまで深く合わせるか?を、サービスの尺度としています。
要するにこれは、ケア度の調整のことです。
以上の2つの切り口から、コンサルタントのサービスの質についての考え方をまとめます。
クライアントによって求める価値は異なるので、高次・低次のどちらがよいかを決めるものではありませんが、低次のサービスでは扱うことのできる顧客の課題が限定的になります。
また、より高度な課題を扱うことができれば稼ぎを増やせる可能性が高まると考えてよいでしょう。
「費用」についての考え方
では、上記のサービスの定義に対して、実際にはどれくらいの値札をつけるべきでしょうか?
値付けの参考として平均的な中小企業診断士の例も出しましたが、私の場合は自身の会社員時代の労働生産性を基準に考えてます。
労働生産性の高低は、その会社が扱う課題の質・難易度に比例するものと考えられ、個人に目を向ければ、労働生産性は自身の能力を社会的に証明するものともなり得ます。
故に、個人の労働生産性の実績は、コンサルティング・サービスの高次か低次か、どのレベルを扱えるかを測る目安になります。
私の労働生産性の実績値はここでは申し上げられないのですが、ひとつの目安として「製造業 労働生産性」でググると以下のように検索結果が出てきました。
米国に比べて日本のパフォーマンスが65%ということは、米国のほうがより高次な課題を扱っているとも考えられます。
余談ですが「労働生産性を高めるために商品・サービスの付加価値を高めろ!」と唱える人がいますが、その言葉に不足を感じることもあります。
労働生産性を高めるのであれば、より高次な課題を扱う視点も大事です。
日本的な典型例を挙げると、ゴリゴリとモノづくりを極めても、扱う課題が変わらなければモノが余り、値下げを要求されるだけです。
さて、話を本題に戻します。
私の場合は、いくらに価格を設定したら売れるとか売れないとか、そういった価格弾力性については一切追いません。
「課題が値段を決める」と考えているので、クライアントとコンサルフィーが合わないということは、要はクライアントと課題への意識にズレがある、もしくは、私の知識や経験に基づく課題解決力への期待値が私の希望よりも低いということです。
私への期待値はどうにもなりませんが(笑)、課題意識のズレに関しては、それを解消するためにクライアントとコミュニケーションを図ります。
それが私の場合はコンサルティングを開始する前に策定し、クライアントにご提示する「コンサルティング・プログラム」になります。
プログラムでは、クライアントが解決すべき課題に応じて自身の労働生産性と照らし合わせて素直に値付けをし、課題解決に取り組む期間も示します。
「期間」についての考え方
続いて、コンサルティングの期間について私の考え方をお伝えします。
どれだけの時間をかければ課題が解決するかは、課題の内容によって大きく異なります。
たとえば、とあるクライアントが「世界一の売上を達成する」という目標を立てているとします。
それに対して、取り組むべき課題の難易度は、そのクライアントの現在の業界でのポジションによって随分と変わります。
難易度の高い課題ほど、その解決には高いスキルを用いたり、時間を要したりします。
なので、「これだけの期間をかけたら課題が解決されて、目標が達成します」とは、課題の難易度に依存するので一概には言い切れません。
そこで、実際には次のように考えて期間を決めます。
目標が「世界一の売上を達成する」のように大きければ、半年から一年でどれだけその目標に近づけるか、いわゆる中間目標のイメージをクライアントと共有し、クライアントのパフォーマンスを考慮した上で取り組むべき課題を立てます。
整理しますと、次の3つに対して私のノウハウを活用します。
会社員時代は、半年ないしは一年という期間を前提に中間目標を立てて、四半期(3ヶ月)で目標に対する達成度をレビューしてました。
これと同じ感覚で、クライアントの課題を立てます。
課題を立ててはじめて、提供するサービスが高次になるのか低次になるのかが判断できます。
そこで、私のノウハウをどれだけケアしながらご提供するか、すなわち「ケア度の調整」を検討した上で、価格と期間・回数をクライアントにご提示します。
この見積り方法でお客さまにとってよいことは、ひとつの課題解決に対する総コストが見えることです。
費用と期間の妥当性は、課題解決の成果を見てお客さまにご判断いただけます。
むすび
今日は、コンサルティングの費用と期間について私の考え方をお伝えしました。
このような質問をよくされるのは、やっぱり私が標準化されたパッケージ商品を販売していないことも一因でしょうね。
私の現状は、毎回が扱う課題に対してオートクチュール(カスタマイズ)でコンサルティングの計画(費用と期間)をご提示していますが、今後は、標準化されたパッケージ商品のご提供についても追々考えていきたいと思います。
その際、「低次なコンサルティング・サービス」を基準として見せることになります。
なぜなら、サービスを標準化するということは、扱う課題を標準化することを意味するので、必然的に低次なサービスがベースになります。
それを売りたいかどうかはまた別の話ですが、お客さま目線で考えれば、ベースを見せることはお客さまの安心につながるでしょう。
★本記事に関するお問い合わせはこちら
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?