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無人のレンタル傘を見て社会に希望を持った話

私の自宅の最寄り駅に、無人のレンタル傘が設置されました。
駅を降りたときに雨が降っていて、さてどうしよう??…といった状況になることって、年に数回あります。
コンビニまで走って傘を買うこともあれば、どこかのカフェで雨宿りするなんてこともありますが、今後は傘のレンタルも選択肢のひとつになりそうです。

今日は、無人のレンタル傘を見て思ったことについて書き留めておきます。


ステークホルダー資本主義って何?


仕事で、ステークホルダー資本主義に向かう社会とデザインへの取り組みの関係を説く機会がありました。
今日はデザインの話は割愛しますが、無人のレンタル傘とステークホルダー資本主義は意外と関係あるので、まずはステークホルダー資本主義の話を、次いでレンタル傘の話をします。

ステークホルダー資本主義っていうのは、簡単に説明すると「近江商人の三方よし」の企業活動のことです。
逆に、三方よしじゃない企業活動ってあるのか?と問われれば、それは株主第一の企業活動になるのかも知れません。その一部には、たとえば利益優先で資源を無駄遣いするとか。そうなると「世間よし」じゃありませんよね。

そもそもステークホルダーってのは何かというと自社の利害関係者のことですが、顧客のみならず、株主もそうですし、取引先、従業員、それから社会もステークホルダーに当てはまります。
つまり、「世間よし」の面々です。

2020年のダボス会議では「ステークホルダー資本主義指標」の策定について話があり、その指標を年次報告書への記載を求めるといったことが説かれています。
かつてのCSRのようなものとは違って、ステークホルダー資本主義は、ビジネスの成果と倫理性を両立させることが前提です。

要するに「儲かったお金で寄付をしよう!」というのはステークホルダー資本主義とはちょっと違って、社会をよくする活動の中で利益を出すアイデアとその実行力が求められているのです。

そこで私がすぐに思い浮かべるのはテスラの例です。持続可能な社会の実現を目指す過程で、EVの普及促進に努めているというのは誰もが知る話です。
昔でいうと、松下幸之助さんの「水道哲学」は王道でしょう。

このテスラの例のように、ビジネスの成果と倫理性を両立させているわかりやすい事例ってもっと身近にないのかな?と考えていたのですが、どうにも思い浮かぶのは大企業の事例ばかりでして…

そんなときに、無人のレンタル傘を見て「ビジネスの成果と倫理性の両立」ができていることに気づいて喜びを感じました。


無人のレンタル傘こそ、ビジネスの成果と倫理性の両立


無人のレンタル傘の何が「ビジネスの成果と倫理性の両立」なの?って話なのですが、間にデジタライゼーションを挟むとうまくつながります。

最寄り駅に設置されたレンタル傘のスタンドを見たとき、「これって無人なのに借りた人はちゃんと返すのかな?」と思ったのですが…よく見たらQRコードがあるじゃないですか!(…自分で借りたことがないので、これまでQRコードの存在に気がつきませんでした)。

筆者作成

QRコードがあるってことはアプリに自分のアカウントを作って、そこにレンタルの履歴が刻まれてちゃんと支払われるってことなのですよね。
無人でも誰が借りたかわかるので、倫理性が保たれるというわけです。
しかも無人だから人件費をかけずに至る所に傘スタンドを設置できるし、ビジネスの成果と倫理性を両立できるわけです。


シェアリング・エコノミーはどこへ向かうのか?


このレンタル傘と同じ仕組みは、たとえばシェアサイクルでも使われてます。
私もちょくちょく使ってますが、アプリを立ち上げてQRコードをかざせばロック解除されて、無人で自転車を借りてステーションがあるところに乗り捨てできるのでかなり便利です。

あとはシェアサイクルに近いところでいうと電動キックボードのレンタルもそうですね。ただ、倫理性って点からすると現段階では微妙なところではありますが…
この事例については、セグウェイとの違いを用いて、以下のスライドを使って「企業活動は"I"から"We"の視点へ」という意図で私はよく仕事で説明しています。

筆者作成

シェアリング・エコノミーは情報の透明性によって実現する経済ですけど、こういったビジネスが増えることは「ビジネスの成果と倫理性の両立」が増えていくことにつながると考えてよいのかも知れません。


むすび


今日は、ビジネスの成果と倫理性の両立について、身近な事例を見て思ったことを書きました。
かつてのCSRとは違って、デジタルによって情報の透明性が高まった社会だからこそ実現できる「両立」ですから、こういった事業者がどんどん増えていってほしいです。

一方で、スポーツ選手などの有名人が、SNSへの匿名の書き込みに誹謗中傷を受けたといった陰湿な話も耳にしてしまいます。
また、ZOZOの創業者の前澤さんがFB広告での詐欺案件で訴えた話もありました。
デジタライゼーションにAIの進化が加わることで犯罪の悪質化も進んでますが、こういったレンタル傘のように性善説で成り立つビジネスが増えていくことで、社会から陰湿な犯罪がなくなることに期待したくなります。

三方よしが当たり前の社会の実現に向けて、企業にはがんばってもらいたいです。
私もコンサルタントとしてそれをサポートする機会が増えてほしいと願ってます。


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