対談:「TPP(による著作権侵害の非親告罪化)の見通し」

※この記事は2014年5月13日の記事を再掲したものです

この記事は、Jコミのメルマガ「はんぺん41号」(2014/3/20)からの転載です。

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 今年は花粉が少ないとはいえ、それなりに鼻が垂れてくるKです。さて今日は、すっかり忘れられている感のあるTPP問題について、「UQ HOLDER!」第2巻にもしっかり「同人マーク」を付けている赤松代表と話をしてきました。

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K:赤松さん、こんにちは。

赤松:え-と、今回の対談はどうしようか。

K:児ポ法関連は、国会審議が始まらないとネタにできないですね。

赤松:そうなんだよな。何度か議員会館には行ってるけど、書いちゃダメなことばかりでネタにできない。(^^;)

K:というわけでTPPですw

赤松:うん。じゃあえーと・・・、TPPがいよいよ動き出したんだか動き出してないんだか分からないけど(笑)、現場と言うか利害関係者が、いろいろ当局に呼びだされているみたいだね。

K:そのようですね。

赤松:どうも報道によると「著作権まわりはもうダメ」みたいな感じになっているけど、政府関係者は「そんなことないよ!出来レースじゃないよ!」って説明してるんだよ。

K:その政府関係者というのは、知財系の関係者ということですか?

赤松:うん、そう。農水とか他分野の話は全く聞いてない。

K:「知財系のみんな、決まってないからあきらめんなよ!」的な。

赤松:そうなんだ。でも多分アメリカの要求は入っちゃうんだw

K:えww

赤松:まあ、俺の予想だけどねw。だけど、入っちゃうけど悲観的にならなくてもいいよって話をしたい。

K:ほうほう。

赤松:まずね、「著作権侵害の非親告罪化」は入っちゃうんだ。

K:今日は持ち上げて落としますねw。同人誌関連の方はアタフタしちゃうじゃないですか。悲観的にならなくてもいいんですか?

赤松:というのも、TPPが妥結してもすぐに著作権法やらが変わるわけじゃないから。専門家の話だと、妥結してからはこんなプロセスになるらしい。

『 妥結 → 文案公表 → 加盟国調印 → 各国の議会審議・承認 → 正式に条約発効 → 一定期限内に国内法整備 → 国内法施行 』

K:国内法の施行にはまだまだ時間がありそうですね。

赤松:そうなんだ。すぐに二次創作同人誌がどうこうという訳じゃない。

K:うーん、ちょっと気になる点があるんですが、条約の発効時点でTPPの規定いかんによっては国内法整備を待たなくてもよい可能性があるんですよね。

赤松:どういうこと?

K:日本の場合、憲法上、条約は法律の上に位置しますので国内的効力が出てきます。また、国内適用可能性について、過去に裁判所は、規定内容が明確であれば適用可能性はあるという判断をしていまして、理屈で言えばTPPの規定内容が明確であれば直接適用できてしまいそうなんですよね。まあ、そんなこと騒ぎ立てる人はいないと思いますが(笑)。ただ、条約発行後から国内法施行前の間に著作権保護期間が切れてしまう作品については争いになるかもしれませんね。

赤松:なるほど。もしTPPの規定に「効力発効は国内法の整備を待つ」って規定があったらどうなるの?

K:その場合は大丈夫でしょうね。

赤松:そっか。まあ、俺はまだ死んでないから(笑)保護期間延長より、非親告罪化に注目したいんだけど、もしそういうことがあるにしてもTPPが発効してすぐ同人誌に対して「通報だ逮捕だ」ってなるとは思ってないんだ。国内法が整備されるっていう確証がないと、実際通報はしにくい。通報する側もイタズラでやるわけだし。

K:しかも今回は「正義の御旗」ですもんね。

赤松:イタズラでも通報なんてやらないよ!って言ってる人もいるんだけど、『黒子のバスケ』の事件では、その妨害手段が犯罪行為なのに、「成功者」に対して「己の人生」を賭してやったわけだ、彼は。そういうことに「情熱」を覚える人が、正義の名の下に「二次創作同人誌で成功している人」を攻撃できるようになるわけ。これは必ずやるよ。しかも「正義の御旗」たる国内法ができるまで待つよ、その人たちは。

K:なるほど。

赤松:だからTPPが決まったからといって、すぐ絶望して二次創作をやめないで欲しいんだ。

K:ふむふむ。

赤松:それともう一つあって、非親告罪化するとしても、全部の著作物に対して一律に非親告罪化するわけではなくて、「登録した作品だけ」とか、「ある一定の商業規模以上のものだけ」で区切るっていう案も出ているらしいんだ。

K:おお、なるほど。日本は無方式主義で保護対象が広すぎるという問題がありますもんね。それはいい考えです。

赤松:ただ、もしこれが導入されたとしても、壁サークルレベルは全然助からないだろうね。とにかく金額が大きいから。

K:うーん、確かに同人誌といえどそのレベルだと下手な商業レベルを超えますよね。

赤松:そうだね。でもまあ「同人マーク」が普及すれば、起訴は相当しにくくなる。TPPが決まり次第、いよいよ普及キャンペーンをやるべきかもね。

K:なるほど。

(この項おわり)

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