【児童ポルノと表現の自由①~児童ポルノ禁止法って?ラッキースケベは犯罪なの?~】
日本にある程度住んでいる人であれば、「児童ポルノ」という言葉を耳にしたことが無い人はいないのではないでしょうか。
少なくとも、このnoteを読んでいる人は一度は見たことあるはずです。
この「児童ポルノ」について規制する「児童ポルノ禁止法」、正式名称は、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」といい、1999年に成立した法律です。法律の名称どおり、法律自体は児童買春も対象としているものです。
今では児童ポルノにまつわる問題では当然の前提となっている単純所持の罰則も、法律制定時にはなかった規制でした。
しかし、単純所持が犯罪化されそうになる、実際されるにあたって、「児童ポルノ」の範囲が創作物にまで広げられ、日本のマンガアニメゲームにおける表現の自由が危機にさらされる場面がありました。そして、その危機は今でも続いていると言っても過言ではなく、予断を許さない状況が続いています。
今回は、現在まで続く、児童ポルノ禁止法と表現の自由の危機について語りたいと思います。
〈「児童ポルノ禁止法」とは〉
冒頭で述べたとおり、「児童ポルノ禁止法」とは、正式名称を「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」といい、1999年に成立した法律です。
何より忘れてはならない、この法律の目的は、「児童の権利を擁護すること」(第1条)です。
この目的のために、児童買春と「児童ポルノ」に関係する行為を規制している、というのがこの法律の構図です。
〈「児童ポルノ」って何?〉
結局のところ、「児童ポルノ」とは何なのでしょうか?
「児童ポルノ禁止法」の第2条第3項の本文を見てみましょう。
この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録…に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
※下線部は筆者によるもの
つまり、写真や映像であって、「次の各号のいずれか」に該当するものが「児童ポルノ」なわけです。
そして、「次の各号のいずれか」がコチラ。
いかにも法律っぽい言葉で書いてある(れっきとした法律なので当然ですが)ので、一般の方には分かりづらいかもしれません。
しかし、表現の自由との関係で重要なのは、「一」から「三」の中に、「創作物」が入っていないことです。すなわち、日本では、創作物について、児童の性的表現がわずかでも含まれた場合にその所持者や提供者が逮捕されるなんてことはなく、創作物について表現の自由が保障されています。
〈「児童ポルノ禁止法」の絶大な影響力〉
先ほど確認したとおり、「児童ポルノ」には創作物は含まれていません。
しかし、この児童ポルノ禁止法が制定・施行された1999年当時、この法律をめぐって、創作物について事件が起きていました。「紀伊國屋事件」です。
「紀伊國屋事件」とは、児童ポルノ禁止法が制定・施行された1999年当時、日本の書店最大手である紀伊國屋書店や大阪の旭屋書店が、未成年のヌードや性的描写を含んだマンガを店頭から一斉に撤去する自主規制を行ったのです。
この撤去された作品の中には、2000年に文化庁メディア芸術マンガ部門大賞を受賞した「バカボンド」や2002年に第六回手塚治虫文化賞マンガ優秀賞を受賞した「ベルセルク」など、高い知名度に加え芸術的に評価された作品も含まれていました。
もう一度言いますが、当時、そして現在も、「児童ポルノ」の対象には「創作物」は含まれていません。
にもかかわらず、児童ポルノ禁止法が制定されただけでこれほどの社会的影響を及ぼしてしまうのです。児童ポルノ禁止法に、創作物規制に関する規定が少しでも入ってしまえば、紀伊國屋書店どころかほぼ全ての書店、現在ではインターネット上のマンガアニメゲームが配信されている様々なプラットフォームにて、法的規制をはるかに超えた範囲で自主規制が行われるでしょう。
そして、ほんの約10年前、児童ポルノ禁止法に、実際に「創作物規制に関する規定」が入ってしまいかねなかった場面があったのです。
〈続きはまた次回〉
今回は、児童ポルノ禁止法のあらましと、その絶大な影響力について語りました。
次回は、その児童ポルノ禁止法と、実際にあった創作物の表現の自由の危機、そして私赤松健が行ったロビーイングについて語りたいと思います。
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