見出し画像

風になるには

ーホンダビートー

「え!クラッチが戻らない!」突然のトラブルに、ホンダビートを運転中の主人公は驚きと焦りを感じた。それは午後2時をまわった時、高速道路を降りて最初の信号待ちで、クラッチが戻らず、ギアが1速固定になってしまったのだ。

焦りと共に渋滞に巻き込まれる恐怖が襲ってきた。アクセルを煽りながら、やっとのことで左側の路地に入る事ができた。

ホンダビートという車は、軽自動車でありながらオープンカーで平成3年にデビューした。デビュー当初は、軽自動車なのにバイクに近い変な乗り物という偏見を持っていたが、40代後半に大病を経験してからは人生の価値観が変わった。端的に言うと「考えるより動け!」だ。そんな中、50歳を過ぎてからホンダビートに乗りたいという思いが芽生え、個人売買サイトで探し始めた。探し当てたのは平成3年式のイエローカラーで、走行距離15万㌔のホンダビート。仲介人が介在しており、安全性を考慮しつつ購入を決めた。購入は家族からの理解は得られない事が分かっていたので、内緒で進めた。

購入して移動中に起こった故障は、皮肉としか言いようがない。故障してすぐに仲介人に返品や修理代の負担について問い合わせたが、難航することになった。結局、ダメだった…。

とりあえず近くの車屋を探し、事情を説明して車を押してもらい、何とか修理を依頼した。しかし、修理代が高額で、かつ期間も2か月かかるとのことで、絶望感に襲われた。

気がつけば夕暮れで薄暗い状況が気持ちを落ち込ませ、さらには一連のことが家族にバレないように、バス停までの帰り道も不安でいっぱいの中、車屋のご厚意でバス停まで送ってもらった。涙がこぼれた。

翌日、ビートを近くに置きたいと考え、知り合いの個人の車屋に連絡を試みた。幸運にも、彼はビートの回収と修理、名義変更を引き受けてくれるとのことで、一筋の希望が差し込んだ。

修理は1週間ほどで完了し、ビートは元の姿を取り戻した。「良かった。」

しかし。

この記事が参加している募集

#今年やりたい10のこと

5,093件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?