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心象風景 鳳凰とムーンダスト

守るべきものがある。
より小さなものの祈り。
より大きなものの願い。

それが交わるこの世界。

何かを守りたかった。
俺が望まず誰かが傷つかないよう。
血を流すならこの呪われた血のほうがいくらかマシだし、受けた痛みはそのまま大地に流れ俺への裁きと浄化になるから。

傷つくたびに少しだけマトモになれた気がしたから。
自傷をしていたのも一方では俺の中のこうしたメサイアコンプレックスめいた一面だった。
彼は許せなかった。
弱い自分も、醜いこの世界も、のたうちまわり誰かを傷つけても平気な顔をしている彼以外の自分も、それを許さざる得ない彼自身も。

ケアが必要なほどの守りや際限のないコンセプトの存在しないガード、あるいはケアのリソースを浪費するだけである自分の心の傷を拭うために誰かを助けるという行為。
結局これらは自らを省みる事の出来ない要救助者である自分を結果的に作り、本当に助けが要る誰かへのケアのリソースを奪う「守り」とは程遠い行為になってしまう。

本当に何かを守りたいならまず自分が要救助者になってはいけない。

それ故にちっぽけな俺が誰かを守るために常に戦略は必要だ。
盾であろうとするなら守るべきものが何か考えなければならないし、誰かに任せ次世代に託す事も必要だと割り切らねばならない。

俺がかつて、神経のケアは最小限にして精神療法をメインに据えたように。

◆◆◆


運転中精神と神経に関しての考察をしていた。
それはまた別の機会に譲るとして、ふと。

突然のイマジネーションで青い鳳凰が空を飛ぶ姿が思い起こされた。

そこで想像の世界は一変する。

転じて聖堂のような謁見の間のような場所。
一人の騎士が片膝を立て両手で剣を掲げて跪いている。

「我が王に剣を捧げる恩寵を賜りたく」

その騎士は言った。

おまえ。
俺の「管理者」にして自我のフェイクだった「ヒーロー」か。
あーこういうノリ好きだもんね、おまえ。

よし。そのイマジネーション。
乗ったる。

「面をあげよ、我が剣。」
「汝が働きはこれまでずっと見て来た。」
「我に代わりよく治めてきた。」

でもおまえちょっと前まで「この内世界の主人は自分だ」って主張してましたよね。

「王たる権能を持つに至ったのならそれにかしずくは私の喜びなれば」

一応イマジネーションの舞台整えてんだから心の声にレスするのやめてもらえる? 笑
まあいいや。

「よかろう!ならば我が剣よ!汝に命(めい)を授ける!」
「汝が権能にて我に仕えよ。汝は『獣』と共に我が柱なり。二者にして一、一にして二者。光と影の顕れなり。」

「なれば新しい名を授ける。」
「いまより汝が名は鳳凰、獣が大地を駆けるならば汝は空に在って我が世界を見守るが良い!」

彼の盾にフェニックスのレリーフが宿った。

そうだな、じゃあその剣は今から「ムーンダスト」だ。
人の知恵が作った自然界にはない青いカーネーション。
人は間違いもするけど、その知恵で進んで行ける。
花すらも手助けすれば纏う色を変えられる、人に出来ないわけがない。変われないわけがない。
彼が醜いと嫌ったこの世界も。

俺の認知も。

それが俺が渡したかった花が好きだった母への贈り物。

月にすらなる事の出来ない俺だが、永遠の夜を行かねばならない者がふと拾い上げる月のかけらのような、石ころみたいなわずかな希望になれれば良い。

「光悦至極にございます我が君」

だから、心の声にレスすんなって 笑
もういいや。

今までありがとな。
『獣』が感覚的な俺の苦痛を引き受けて来たなら、君は精神や認知の苦痛をその盾で弾いて受け流して来たんだな。もういいよ、辛かったろ?
でも多分、そうやって何度も立ち直って来たから灰から再生する鳳凰のイマジネーションが生まれたんじゃないかな。

騎士は相変わらず跪きながら無言でポタポタと石畳に涙を落としている。

あーでもわかってるよ。

「で、遊歴(修行の旅)に出たいのね。」

彼はバツが悪そうに顔をあげた。

「いいよ?まだ知りたい事もいっぱいあるんだろ? ずっと守っていい加減疲れちまったよな」

こうして騎士は聖堂?謁見の間?を去っていった。おまえ時たま芝居がかってて暑苦しいから当分戻って来なくていいぞ?笑
三文芝居とかあんまりしたくないし。

信号待ちでふと景色を見る。
あ、皆さん基本的に危ないんで運転中に空想遊びすんのはやめようね。月との間を往復出来る距離を運転した俺でも危ないから。

で、で、ふと交差点の右を見るともなしに見上げると…信用してくんなくてもいいんだけどさ、マジで本当なのよ。

後付けでは断じてない。
イマジネーションがひと段落して「ん?」って感じで見上げたのよ。

タイトル画像どおり、澄み渡るような晴天に安っぽくて嘘くさい鳳凰のオブジェ。

「ハハッ (あれくらいインチキくさいシンクロニシティが)俺には合ってる」

車の中で一人で笑った。

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