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『250円の儲け話』


自分には1つ年上の兄がいる

男兄弟で歳が近いということもあり

幼少期〜少年期のエネルギーある多感な時期は

ほぼ毎日ケンカをして過ごした

兄はかなりの武闘派で

幼少期の一年の差は大きく

腕力や体格の差は明らかで

そのケンカは見事に全戦全敗だった

一年の差は体力だけではなく

知力にも差が出てしまうもので

なにか兄弟間で言い争ったとしても

言葉巧みに言いくるめられてしまう



今回はそんな兄との小さな頃の

切なくもバカバカしい思い出のエピソードです



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小学校の修学旅行で栃木県の日光東照宮へ行くことになった

2泊3日だったと思うが

親のもとを離れて友達と過ごせる時間が

楽しみで仕方なかった

そして修学旅行の必需品といえば、もちろん

『おやつ』ですよね。

小学生にとって、このおやつ問題は重大で

持っていくおやつのセンスや豪華さなどで

学校での自分の立ち位置が大きく左右されてしまう

クラスの男子には一目置かれたいし

クラスの女子には憧れの眼差しで見られたい

いま考えるとめちゃくちゃバカっぽい話だか

当時の自分は本気で修学旅行のおやつに魂を賭けていた



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おやつの値段は300円と学校で決められていた

300円でどれだけクラスの皆んなの目を惹くことができるか

修学旅行の数週間前からそればかりを考えていた



親からお金をもらい

その300円を何度も確認しては何を買おうか妄想に耽った

するとそんな光景を見ていた兄が声をかけてきた

『その300円は修学旅行のおやつ代だろ?』

『うん。そうだけど何?』

『お前にいい話をもってきたぞ』

『なに?いい話って?』

『お前にとって得のする話だよ』

『なにそれ?教えて』

『教えてやってもいいけどタダでは教えられない』

『なんだよ!じゃあ別にいいや』

『俺は去年、修学旅行を経験している。その上でお前に得する情報を教えてやるって言ってるんだ』

『なにそれ気になる。でもタダで教えてよ』

『ダメだ!50円で教えてやる』

『高いよ』

『よく聞け!この情報は300円の価値がある情報なんだぞ!』

『300円の価値?でも50円は高いよ!』

『お前はバカだな!300円の価値のある情報をお前は50円で買えるんだぞ!どれだけ得をすると思う?』

『250円?』

『そうだ!俺の情報を聞くだけでお前は250円を手にする事ができるんだぞ!』




突然舞い込んだ250円の儲け話。





『まぁ別に知りたくなければいいけどな!』


悩んだ…。その魅力的な話にとても悩んだ…

なによりもその情報が知りたくて堪らなかった

そして単純に計算もしてみた


ken君は親から貰った300円のおやつ代を持ってルンルンとしています♪

すると兄が出てきて50円くれれば300円の価値のある情報を教えてくれると言ってきました

ken君はどうするのがいいでしょうか?

※なお、ken君はおやつでクラスの皆んなを魅了させたいものとする。



300円のおやつ代に兄への情報料に

50円を払っても250円が残る

その情報は300円の価値があるから

250+300=550円になる

300円だったおやつ代が…550円になる!

ゆえにクラスの皆んなを大きく魅了する事ができる!




『兄ちゃん!その話乗ったぁ!!!』







先払いという事と後から文句は言わないという約束で

兄に渾身の50円を払った。


『それでその情報ってなに?』

『この情報は誰にも言うなよ』

『わかった。誰にも言わないから早く教えて』

『よし!じゃあ修学旅行に持って行くナップサックと新聞紙を持ってこい!』

……ナップサックと新聞紙???

まったく予想だにしない話の展開に驚いた

すぐに母親に新聞紙をもらって部屋に戻った

『持ってきたけど、これをどうするの?』

『新聞紙を丸めてボールを何個か作ってみろ』

全くよくわからないまま新聞紙を丸めてボールを作った

『よし!それをナップサックの中に入れろ』

訳もわからずに新聞紙のボールをナップサックに入れた

『パンパンになるまで入れろ!』

言われるがままに新聞紙を入れた

すると…

『おめでとう!これで完成だ!』

『えっ?』

『これでお前も修学旅行でヒーローになれるぞ!』

『えっ?どういう事?』

兄は新聞紙で膨らんだナップサックを持って

こんな事を言った。

こんな膨らんだナップサックを持ってると、おやつがいっぱい入ってるように見えるだろ!

『…………』

あのナップサックの膨らみ具合は絶対におやつをいっぱい持ってるに違いない』って

クラスの皆んなに思わせる事ができるんだぞ!いい情報だろ!




………騙された。完全に騙された。

……おやつがいっぱい入ってるように見えるって…

愕然とした…

あまりにも、しょうもない情報だったので愕然としてしまった

それに加え自分の情けなさも後押しして

人生で初めて《膝から崩れ落ちた》

なんという、くだらないトリックなんだ


そして何でこんなくだらないトリックに俺は引っ掛かってしまったんだ…

と敗北感のような情けなさも感じた。



その後、兄と大喧嘩になったのは言わずもがなです…




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超絶にバカバカしい兄弟のエピソードですよね

しかし今考えると割と良い経験をしたなと思える

騙す奴も悪いが、目の前の欲望に目が眩み

それを見抜く事ができなかった騙される奴も悪い

それが人生でもあり世の常でもある

ずる賢い兄がいたという経験は

自分の人生にとって色々と学ぶことができて

悪いことばかりではなかったと今は思う



そんな幼い頃の哀しくもバカバカしいエピソードを思い出しました。




くれぐれも善良な皆さんは


『ナップサック詐欺』はしたらダメですよ!




※その時の修学旅行はナップサックをパンパンにして向かったかは内緒です…笑



それではまたCiao!

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