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僕とエムホールデムとWPT Osaka 最終回

皆様こんにちは。ポーカープレイヤーのKemと申します。前回に引き続き、WPT Osakaメインの備忘録をお届けします。今回は遂に最終回。波乱まみれのDay2の様子をお届けします。色々書いていたら3倍近くのボリュームになりました。どうぞお楽しみください。

その1はこちら

その2はこちら

その3はこちら


1番、フィーチャーテーブル

13日、Day2の朝は5時に目が覚めました。時計のアラームは7時半。流石に早すぎます。再び寝ようとしてもなかなか寝付けず、リラックスするために朝風呂にも入りましたがそれでも寝付けません。しょうがないのでこのまま起きていることにしました。5時間しか睡眠が取れていないのでコンディションが心配なところですが、よくよく考えたら夜勤明けの日は朝4,5時間だけ寝てお店に行くことも多かったのでいつもとそこまで変わりませんでした。それにポーカーをしている間は眠気なんて吹き飛ぶので大丈夫でしょう。
Youtubeで戦略の復習をして時間を潰し、7時から朝食を食べに行きました。部屋に戻って荷物の整理を済ませた後、テレビをつけたら夏の甲子園をやっていました。競技は違えど同じ勝負の世界で戦っている高校生たちを応援していると時刻はもう9時過ぎ。ホテルをチェックアウトしいよいよ決戦の地へと向かいます。

昨日と同様、会場には少し早めにつきました。集会室の扉はまだ開かれておらず、まだ人はいませんでした。ベンチに座り、静かにその時を待ちます。9時35分頃、開場のアナウンスがなされました。昨日同様、受付をしてドリンクチケットを受け取り、テーブルへと向かいます。テーブル番号は1番。どこだろう…



フィーチャーテーブルやないかい。


いや、昨日シートドローを見たときからなんとなくそんな感じはしていましたが本当にフィーチャーテーブルだとは思いませんでした。今回は配信こそないものの、他テーブルより豪華な装飾で開場奥にドンと構えるこのテーブル、当たり前だけど一番目立ちます。この配席は仕組まれたものなのか、はたまた只の偶然なのか…
とやかく言ってもしょうがないので名誉なことだとポジティブに捉えつつ、席に座ります。本人確認の後、袋を開けチップの点数が間違っていないか確認します。テーブルのチップリーダーは10万点。他の人とも比べると僕は点数的にちょうど真ん中です。すぐに焦る必要はないですが、上を目指すにはどこかで大きく稼ぐ必要があります。昨日トリプルバレルの店長からもらったアドバイスをもとに、スタックを大きく増やすその時を見極めながら期待値に沿ったプレイをし、自分のアクションを間違えないことを今日の目標としました。

店長から貰ったアドバイス

朝10時、タイマー再開。今日が一番の正念場です。泣いて終わるのか、はたまた笑って終わるのか。

印象的だったハンド:バリュー編

スチールや小さなポットを取りながら昨日同様コツコツと増やしてスタックは10万点くらいになりました。ブラインドは覚えてませんが、Lv.10かLv.11くらいだったと思います。およそ40bbくらいの時の出来事です。配られたハンドはJJ。
来ました。マイハンドJJです。良くも悪くも個人的に何かと思い入れのあるこのハンド、参加しないわけにはいきません。
僕までフォールドで回ってきたのでCOからオープンレイズします。BTNのみコール。ヘッズアップです。

フロップ:T73レインボー

フロップ。スートは全部うろ覚えです。

JJにとってはいいボードです。オーバーペアで現状勝っている事のほうが高そう。Tヒット、7ヒット、Aハイなどに向けてポット50%のCBを打ちます。
と、ここでBTNから3倍ほどのレイズ。1分ほど考えます。今までの相手のハンドを見ていた印象として、そこまで変な感じはありませんでした。とすると、ドローも少ないこのドライなボードでレイズ出来るハンドは限られています。TTはプリフロップで3betを打っていそうなので可能性は薄そう。バリューならば77や33。ブラフならショーダウンバリューのないAハイ、あとごく僅かに45sや56sが可能性として考えられます。が、彼からスーコネをあまり見た印象がないので77か33が本命と予想。セットは怖いですが、僕はオーバーポケット。降りるわけにはいきません。ゆっくりとチップを掴み、コール。

ターン:J

ターン。こちらもスートはうろ覚えですが、Tと同じではなかったです。

最強のハンドになりました。もう怖いものはありません。
と思ったけど今見返すと89にストレート作られてました。最強ではなかったことをお詫びいたします。本命を77か33と見ていた僕はプレイ当時89の可能性に全く気づかず、トップセットで捲り返した興奮でそれどころではありませんでした。一歩間違えば大惨事ですねこれ。

しかし、ここで興奮のままに自分から打つとドンクベットになってしまうので、ゆっくりハンドを確認して静かにチェック。相手のアクションを待ちます。何故かわかりませんが、相手がオールインしてくる確証が僕にはありました。
相手はあまり時間をかけずにオールイン。即コール。相手のハンドは幸運にも読みどおり77でした。リバーは何も起こらず、そのまま勝利。相手のスタックは8万点ほどだったので僕がカバーしており全弾吸収です。スタックは19万点ほどとなりここで大きく伸ばすことができました。その後2回ほどオールインに勝利し、1st Break時のスタックは驚異の246,100点。開始2時間で4倍にまで増やすことができました。

1st Break時。ウハウハです


印象的だったハンド:ブラフ編

1st Break時点では大きく稼いでいたものの、その後KハイフラッシュでAハイフラッシュに負けたり、Aヒットで過度にブラフキャッチに回ったらバリュー取られていたりとあまり良いプレイができずスタックは16万点くらいまでに減っていました。そんなときにSBでA8oが入りました。
Lv.12、ブラインドは1500-3000 BBAnte 3000。MPから2.6bbオープン。BTNまでフォールド。ここまでタイトにプレイしていて周りにその印象がついた頃かなと思ったので、普段はフォールドすることが多いハンドですがコールして戦うことにしました。BBはフォールド。ヘッズアップ。

フロップ:K36オールハート。

フロップ。今回はスートも合っています。

このボードが出た瞬間、セミブラフをすることを決めました。まずは定石通りチェック。MPがポット30%のCB。それに対して少し時間を使い、3倍、ポットサイズちょいオーバーのチェックレイズ。相手は小考してコール。


ターン:7s

ターン

一応ストレートブロッカーの8を持っていますがこのボードではそこまで関係ありません。ナッツフラッシュのブラフ継続です。バリューレンジも混ぜたポット50%のBet。相手は小考してコール。


リバー:6s

リバー。運に見放された瞬間。

ついにフラッシュは完成しませんでした。神は救いを与えてくれなかった。なんなら6がペアになったことにより、KKや33はフルハウスへ昇格し、それらのハンドにはますますコールされやすくなってしまいました。絶望です。
しかしここからでも勝利をもぎ取ることが出来るのがポーカーの醍醐味。冷静を装いながら、頭の中はこの言葉で一杯でした。

「いくらベットしたら相手は降りてくれる?」

相手のバックスタックは8万点ほど。僕がカバーしている状況ではあるのですが、フロップ、ターンと時間をかけずにコールしたことから相手にはそれなりのハンドがあることが想定されます。小さいベットではスナップでコールされるでしょう。ショーダウンではどう考えても負けています。諦めてチェックフォールドする選択肢もありますが、ブラフで押し切ることにしました。しかし半端な額では降りてくれないでしょう。バリューに見え、かつ相手がギリギリフォールドしてくれる額を必死に考えます。ざっと数えてポットは11万点くらい。もし相手がフルハウス以上ならスナップでコールされるでしょうが、今の僕にはそんなところまで考慮する余裕はありません。いくらなら降りるか、ただその一点のみに集中します。
15秒ほど考え、5000点のチップタワーから3万点を取り出し、片手で押し出しながら発声しました。



「7万」



ポットの7割弱くらいのベットです。ベットした上での残りスタックは6万点弱。もしコールされたらこちらとて無事ではいられません。まさに生死をかけた渾身の大ブラフ。


相手は相当長い時間考えていました。3,4分くらい悩んでいたんじゃないでしょうか。相手からしても、もし負けていたら途端に瀕死のショートスタックになってしまうのでかなり慎重に考えていたと思います。僕は心臓バクバクになりながらいつものように片手でチップトリックをしつつ、じっとアクションを待ちます。「頼むから降りてくれ…!」と頭の中で必死に唱えていました。
悩みに悩み抜いた末、相手はゆっくりとハンドを前に出し、フォールド。
一気に緊張がほぐれ、僕は少し震える手でハンドを捨てました。悩み方からすると相手はJやTハイフラッシュらへんだったのではないでしょうか。その辺りが悩んで降りてくれる丁度いいベット額だったと思います。マジで死ぬかと思った。

あのときのお兄さん、もしこの記事を読んでいたら勉強のためにも降りたハンドを教えてくれると嬉しいです。

インマネ。選手契約。オールイン。

そんな感じで時にはチップを失いつつ、時には取り返しつつで15万点くらいを行き来している状態が長く続きました。フィーチャーテーブルの人の入れ替わりも激しく、誰かが飛んでは入り、また誰かが飛んでは入りを繰り返してました。気づけば最初から座ってる人の方が少なくなっている状況。
そんな中でも僕はずっと同じシートに座り続け、徐々に近づいているインマネまで生き残るために奮闘していました。途中から村上ゆりさんとも同卓となり、あまり直接対戦する機会は無かったですが一緒にお喋りしながら楽しんでいました。僕は彼女のことをあまり存じ上げておらず、「綺麗な方だな…」と思ってましたが有名な方だったんですね…知らなくて申し訳ありませんでした。Twitterフォローしました。

公式のツイートより。写真撮影されるたび、可憐な華の邪魔をしないよう僕と隣のお兄さんはフレーム外に避難してました。が、ツイートにはしっかりとお兄さん写ってしまってます。しばらく同卓の方たちと「避難した意味ないじゃん!」と笑ってました。

2nd Break時のスタックは174,000点。アベレージより10万点下回ってますがそれでもまだ十分戦えます。残り人数は55人。インマネは31位からなので残り24人です。ここから徐々にインマネを意識したプレイに切り替えていきます。強いときはしっかり取り、弱い時やマージナルな時は無理に勝負せずスタックを大きく減らさないようにし、2-30bb程度を維持するようにします。

2nd Break。インマネまでもう少し。


やはり他の人も同じ考えなのでしょう。テーブル全体が固くなった感じがしました。途中大きく失い15bbまで減ってしまうものの、そこからは飛ぶことを恐れずにパワーナンバーを駆使しオールインでスチール。途中オールインコールされましたがなんとかダブルアップすることができ、3rd Break時は336,000点まで戻すことが出来ました。次のブラインドは5000-10000 BBAnte 10000。30bb以上と少し余裕はあります。

3rd Break時。とりあえず一安心

とはいってもまだ油断は出来ません。休憩中他のテーブルを見回した感じ、どのテーブルも結構ディープ、50bb持ちの人もザラにいます。僕は相対的にショート、オールイン勝負になれば一発で飛ぶ可能性もありますが、ブラインドは十分に払えるので無理に戦わずに降りつつ、他のプレイヤーが飛ぶのを待つ作戦にでます。インマネまであと6人。

プレイ再開。モニターの残り人数を見ながら慎重にプレイしていきます。あと5人……あと4人……あと3人…


「次のハンドからハンドフォーハンドに入ります!」


ハンドフォーハンドのアナウンスが入りました。故意な遅延行為を防ぐため、ここからはすべてのテーブルで1ハンドずつタイミングを合わせてプレイします。
いよいよ来ました。バブルです。緊張の瞬間。ここのテーブルのアクションは終わり、雑談しながら他のテーブルを待ちます。
しかし、何やら様子がおかしい。他のテーブルから2回ほどオールインコールの声が聞こえます。人だかりもでき、ガヤガヤし始めました。少し経った後、MCのマシューさんのアナウンスが聞こえました。

「皆さん、入賞おめでとうございます!You are all In the Money!!!」

まさかのハンドフォーハンドをせずにインマネ。同時に二人飛んだことによりする必要が無くなった為です。会場がどよめきます。あまりにもあっさりインマネが決まってしまったため、僕も思わず拍子抜けしてしまいました。思ってた形とは違いましたが、ともかくこれでポーカー人生最初の夢である選手契約をすることが確定しました。会場は拍手に包まれ、僕も拍手をしお互いの健闘をたたえ合います。

しかしこれで終わったわけではありません。残りスタックは20bbほどになってしまいましたが、ここからは賞金を上げるために出来るだけ長く生き残る戦略を取り、パワーナンバーを使ったプッシュオアフォールドに切り替えます。

途中でダブルアップに成功したものの、それでもスタックはジリジリ削られていきます。ブラインドスチールを繰り返し1時間程耐えた時、7人テーブルのUTGで88が入ってきました。スタックは15bb。入れ込むには大合格のハンドです。
迷わずオールイン。BTNのセカンドチップリがコール。相手から出てきたのはなんとKK。フロップでKのセットが刺さり、ターンでドローイングデッド。リバー。
ワンシートオープンの声が響きます。この瞬間、僕のWPT Osakaは終わりました。

飛んだ後のタイマー。よくここまで来れたなぁ

何も後悔はありません。期待値通りにオールインし、そこにたまたまKKがいただけの事です。期待値通りプレイ出来たことにむしろ清々しさも感じます。スタッフさんから順位の書かれたカードを受け取り、選手契約処理の為テーブルを移動しました。結果は23位。ちょうどプライズアップした順位で終える事が出来ました。

初めての大型トナメとしては大健闘。

テーブルで選手契約の説明を受け、専用のフォームに登録します。その後契約用紙を受取りました。契約金額は370ドル。決して多くはない額ですがこれで僕もプロのポーカープレイヤーを名乗ることが出来るようになりました。
帰る時に、1枚だけ残っていたドリンクチケットがもったいなかったので使っていく事にしました。選んだのは、トイレが近くなるからと避けていたコーラ。駅へ向かいながら飲んだコーラの味はいつもとは違う美味しさがありました。


その後、新大阪駅で目星をつけていたお土産を買い、お店に報告するために最速のぞみ号で2時間かけ小倉駅へと帰りました。半分ネタで買ったたこ焼き風お菓子は意外にも大好評でした。

WPT Osakaを完走した感想

濃密すぎる2日間でした。チケットがもったいないというほんの些細な理由からエムホールデムで予選に参加し、1200人から優勝して権利を得て、大阪の素晴らしい会場でポーカーをすることができて、それだけでも十分なのに更にインマネして選手契約までして、(一応)プロポーカープレイヤーになることができて…もう情報量が多すぎて自分でも整理ができてません。
まずはこの大会を開催してくださったWPT Osakaの運営の皆様、僕にチャンスを与えてくださったエムホールデム関係者、セガサミーの皆様に多大なる感謝をいたします。

その1の自己紹介でも述べたように、僕がテキサスホールデムを始めるきっかけとなったのは何を隠そうエムホールデムです。リリース直後に広告で見かけインストールし、しかし全然勝てずにすぐやめてしまいました。去年9月頃、ふともう一度やってみようと思い、今度はプリフロップレンジやセオリーを勉強しながらやった結果、だんだんと勝てるようになりました。この頃から、トランプとチップを使った心理戦の魅力にどっぷりハマっていき、1ヶ月後にはライブにも挑戦しエムホールデムを開くことが毎日のルーティンとなっていました。あの時、もう一度アプリを開こうとしなかったら、多分僕はこのnoteを書くこともなく、テキサスホールデムの魅力に気づくこともなく終わっていたでしょう。

そして、そんな僕が1年という短い期間でここまで結果を残せるようになったのは間違いなく小倉のトリプルバレルの皆さんのおかげです。去年10月に初めて来た頃、思い返せば当時はプリフロップのレンジもアクションもめちゃくちゃでした。とにかくアグレッシブに行けば降りてくれる、押し切れば勝てる、そう思って無茶なブラフもいっぱいして返り討ちにばかりあっていました。インマネ間近のプレイングも知らず、何度もバブルボーイになり、何かが悪いんだろうと思ってもそれが何かわからず、弾けるそのたびにやり場のない怒りと悔しさを抱えながら家に帰ってました。
今年2月、お店のテーブルに座らされ、プリフロップのレンジとポストフロップのアクションを徹底的に叩き込まれました。オンラインで数をこなしレンジを定着させるよう言われ、お店ではトーナメントを常に監視され、怒られないかビクビクしながらアクションを徐々に修正していきました。
1ヶ月ほど後。その成果を実感したのは他店でのトーナメントでした。無理なブラフをして飛び、これでは帰れないと思い夜のハウストーナメントでリベンジすることに。そこでしっかりと勉強したとおりにプレイした結果、2位になることができました。この時、今までやってきたことが実ったと少し誇らしくなりました。

長々と自分語りをしてしまいました。しかし、僕にとってこの1年間はそれほどまでにとても意味のあるものでした。ポーカーと出会ってちょうど1年の節目を迎える時期に世界3大大会であるWPTで結果を残せたことが何よりも嬉しいし、勉強したことがちゃんと間違ってなかったんだな、という気持ちでいっぱいです。この1年で関わってくれた皆さん。本当にありがとうございました。

しかし、これはまだスタートラインです。やっと初心者脱出したくらいのレベルです。富士山で言えばまだ2合目。少なからずプロになった以上、まだまだ上を目指さないといけません。まだ勉強していないことはいっぱいあるし、一流プレイヤーのアクションなんか未だ全然理解できません。2年目、更に強くなっていつかは日本中・世界中に名が知れるようなポーカープレイヤーになりたいです!

次の目標は11月のWPT Tokyoです。せっかく援助をいただけることになったんだし、このチャンス、活かさないわけには行きません。今度は23位なんかで終わらずもっっと上位、FTに残れるくらいに強くなりたい!もちろんエムホールデムでも予選に参加しようと思っていますが、店舗でのサテライトでも取りたい!もし九州内でWPT Tokyoのサテライトをやる店舗がありましたら教えてください。行ける距離であれば他県に遠征行きます!

トロフィー群。いつか必ず…!

あ、最後に一つ心残りが。大会期間中、エムホールデム組の方々と一度もお会い出来ませんでした。色々お話したかったのですが、自分が集中していたのもあり、すっかり忘れていました…もし今後見かけたときは声を掛けてくれると嬉しいです。

長くなりましたが、僕のWPT Osaka備忘録、ここまで読んでいただきありがとうございました。また次回、どこかでお会いしましょう!

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