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【拼多多のユーザー心理レポート】買う予定のないえんどう豆のお菓子を2キロも買ってしまった件について

はじめに

こんにちは、門奈といいます。日中ハーフで高校まで上海で育ったことに加え、ここ8年ぐらいは日本と中国を行き来しながらお仕事をしていました。

▼門奈って?という方はこちらもぜひご覧ください!

さて、日本でもここ数ヶ月〜1年ほどで急激に「ソーシャルコマース」「ソーシャルEC」というワードが飛び交うようになってきましたが、実は中国ではもう少し前から流行っていたモデルです。

中国はそもそも市場規模が桁違いであり、アリババのTmallやタオバオといったECサービスがダブルイレブン(中国では11月11日に独身を祝って大規模なセールを行い、多くの人が購買を行う)の1日で楽天の1年分の流通を超えるといった、一見意味がわからないようなすごいことがおきています。

それらのサービスが近年脅威に感じているのが新興のソーシャルコマースである拼多多(Pinduoduo)。このサービスについて、日本語の情報も徐々に増えてはきましたが、まだまだ実際のユーザーとしてのレポートは少なそうだったので、今回書いてみることにしました。

前編はマクロにECやソーシャルの市場変化について、後編が拼多多(Pinduoduo)のユーザーレポートです!後編だけみても大丈夫です!

ちなみにもうちょっと引いた視点でのサービス概要やプロダクトについては人様のものですがこちらの記事(記事を直接読んでいただいてもいいし、以下のスレッドに僕のサマリーもついてます)がとてもわかりやすくておすすめです。

※拼多多(Pinduoduo)は、ご存知の方もいるかと思いますが地方の人がメインユーザーであり、中国という国はエリアによって全く価値観等も異なるので、あくまで上海の20代IT強い男性視点でのユーザーレポートである点はご承知おきください。

◼︎前編:ソーシャルコマースというトレンド

ソーシャルコマースとは、SNS×Eコマース

ソーシャルコマースとはなにか?という質問に一言で答えるならば、「SNSを通じて物を売り買いする」ことです。例えば日本でもインスタグラムがECサイトと紐づいていてそのまま購入できたりしますよね、あれもソーシャルコマースの1つです。

インフルエンサーのゆうこすさんがライブ配信を通じて自身がプロデュースした商品を販売するのもそう。WEARでいいとおもったコーディネートをそのままZOZOに遷移して購入できるのもそう。SNSと購買が結びついていれば大概それです。

もうちょっとざっくりした「ソーシャルコマースとは?」を解説しているもの(これも人様のですが以下略)

そういうと「そんなの新しいトレンドというほどでもない、当たり前じゃないか!」と思う現代っ子もいるかもしれませんが、逆にSNSを利用した購買のあり方をある種当たり前のものとして受け入れつつある時点で、このトレンドが本格的に日本にも浸透しつつあるととらえられると思います。だって5年前、10年前のSNSのあり方を思い出してみると、「購買」からはもうちょっと距離があったと思いませんか?

ソーシャルコマースブームの裏には情報過多のしんどさがある

【カウシェ】現状整理資料 (2)

よく言われることとして、ITの発展でより簡単に大量の情報にアクセスできるようになる中で、たくさんの情報があればいいという時代も終わり、今度は情報を信頼度の高さごとに取捨選択する必要がでてきました。

ただ、全ての情報をソースから確認していてはキリがないため、「信頼できる人が言っている情報は信頼できる」という軸を自分の中にもち、情報の優先度付けをしている。日常生活を振り返ってみても、友人や家族からの推薦で物を購入したことが少なからずあるはずです。ちなみに僕はすでに人の推薦がないと物が買えないぐらい重度です(笑)。

(この信頼を前提にネガティブな形で現れたのが「ステマ問題」であったりする。)

その中で元来ただのコミュニケーションメディアであったSNSが、基本的には利害関係なく信頼できる人たちが情報を発信する場であるという性格から、上記の情報収拾との親和性が高く、そこから購買と接続させるモデルが生まれてきました。

データで見る、SNSとEC市場規模の伸長と関連

実際データでみてみても、

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(引用:2017年度 SNS利用動向に関する調査|ICT総研

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(引用:平成28年版情報通信白書|総務省

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(引用:平成 30 年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備 (電子商取引に関する市場調査)|経済産業省

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(引用:SNSの動向整理|三菱UFJリサーチ&コンサルティング

・SNSの利用者数は当然右肩上がりで増加
・Eコマースの市場は世界的に拡大
・日本国内だけでみてもEコマースの市場は拡大、それに伴いEC化率も向上
・商品の購入時に約半数はSNSの情報を参考にしており、その中の8割がSNS上で繋がっている知人や友人による投稿を挙げている

ざっくり見ても上記のようなことが読み取れます。

コロナウイルスの影響による、EC市場のさらなる加速

また、ただでさえグローバルトレンドとして伸長していたEC、ソーシャル領域ですが、コロナウイルスによって更にギアチェンジが起こっている現状も見逃せません。2020年5月時点の調査で、30%以上の人が「ECの利用頻度が増えた」と回答、また半数以上が「今後もECを継続して利用していく」と回答しているのは非常に興味深い。

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(引用:2020年5月 新型コロナウイルスにおけるEC利用動向調査|MMD研究所 )

そして、コロナウイルスは完全に沈静化することはしばらくないと言われること、コロナが落ち着いたとて今後も爆発的な感染症のリスクは常にある中で、ニューノーマルと言われる新しい生活様式が広がって行くことは容易に想像できます。

その中でやはり多くの人は引き続きECをより使っていくだろうし、ECに限らず外的要因によって半ば無理やりオンラインに移行した多くのこと(キャッシュレス決済やリモートワークなど)により、今まで頑なにオフラインの買い物体験を続けていた層も徐々にそのハードルが下がることを考えると、今後もEC市場はますます伸長を続けると考えられます。

その中で更に最先端の成長トレンドの渦中にある「ソーシャルコマース」というチャンネルは上記の通り無視できないものになっていくと予想されます。

◼︎後編:拼多多(Pinduoduo)のユーザー心理レポート

1)自ら購入し、友達にシェアするとき

さて、思いのほか前編が長くなってしまいましたが、ここからが本番です(笑)。拼多多(Pinduoduo)のユーザー体験はどんなものなのか、そしてリアルに上海で使っていた人間としては何が魅力なのかについて言及していきます。

ユーザー体験には自ら購入して友人にシェアする場合と、友人にシェアされて購入する場合の2パターンがありますが、まずは前者から。

【カウシェ】現状整理資料 (3)

①買い始める
友達と買うと、単独購入より安くなるのか!」というのが第一印象。
⇨ 友達と一緒に購入を選びたい。安くなるのもそうだし、一緒に買ってくれる人は誰かきっといるでしょう、という気持ち。「お菓子だったら、会社の同僚たちに聞いてみようかな」と思った。
※元々、何か目的もって買いに来たわけではなく不要不急なので、ちょっと友達の参加を待ったり配送が遅くてもOK

②味&サイズ選択
・お試し5袋〜200袋(2.5kg)まであり、当然ながら多いほど安くなっている。
・第一印象は「味とグラムは選べるのか!便利だ」
大ロットになるほど安いので、オトクに大ロットを買いたくなる気持ち

③購入後はシェア誘導
・自分が購買終わって、あと1人だけ招待!
・あと1人と言われると、あまり難しくは感じない気持ち。

④シェア完了画面
※実はシェアをしてアプリに戻ると、「もう一つのWechat Groupでシェアすると成功率が〜%高まりますよ」という文言とともに再度シェアを求められる。
・「もう一度どこかのグループでシェアすると、グループ成功率が相当高まるのか・・・。」
・「確かに、シェアした人がかわなかったら不成立だし、もう1グループくらいシェアしてもいいな」
・(ただ結果的にはしなかった。DM送った人が買うはずだし、グループでシェアするのはちょっと恥ずかしい

送る相手の選び方心理:お菓子だったので、離れて住んでる会社の同僚や同僚、一緒に住んでる家族に送った。
・これを一緒に食べたい人いないかなという気持ち
・距離は離れてるけど、その人のことを思い出したので声をかけた。

【カウシェ】現状整理資料 (4)

⑤その場で一緒に購入する時はQRコードも可能
⑥Voice送受信の機能も
(ボイスが届いたことは無いが送ったことはある)

ボイス送る時:
・中国ではWechatボイスは良く使われている機能なので、ごく自然に送れた
・談笑も混ぜながら、「一緒に買おう〜」と促した

⑦シェア文言
・「【あと1枠】X元でXkgなになにを買いました。〜〜〜」
・「【あと1枠】ヴォイスメッセージがあります。〜〜〜」

2)友人が購入し、グループに誘われるとき

【カウシェ】現状整理資料 (5)

①友人のGroup Buyに参加する
よく知る友人が「自分なら好きそうだ」と思って誘ってきているので、一旦気になって画面を開いてみる
・値段もそんなに高くなく、どうせいつか買うなら今お得に買えばいいなと思い、味やロットの詳細を確認

②友達と違う味やロットも選択可能
・味やロットを自由に選択できるという自由度の高さは少し意外だった
・確かに味の好みは違うし、ロットも家族構成によるのでありがたい
まあいいか、WechatPayで決済は一瞬だし、友達の誘いを断るほどのことでもないから試してみよう
・繰り返しだがロットは大きいほどお得になるので、2kgサイズを購入

③GroupBuy成立。パチパチ
・成立画面を見るとやはりちょっと嬉しい
・2-3日してから「えんどう豆届いた?結構な量がきてすごいw」みたいなチャットをした。
チャットで始まり、物を買い、そしてチャットで食べた感想を話す。終始SNSの中にいるのがごく自然な感覚がある。

番外編:同じ店舗で複数の商品購入を促すUX

【カウシェ】現状整理資料 (6)

①店舗TOPはこんな感じ
②単純な割引券
③同じ店舗で合計X元いったら割引という仕組み

拼多多(Pinduoduo)が多くの人を虜にするのは「自由な遊び場」だから

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このサービスの魅力は多様で多彩なショッピング体験だと思います。楽しい、いいなと思う要素が散りばめられていて、多分人によって刺さっているポイントは違う。

それこそただ安いから使うという人もいれば、ログインボーナスの収集が楽しい人、友達に「いいものに出会った感動」をシェアすることが楽しい人もいれば、自分の割引率が100%になるまでシェアすることにゲーム性を見出す人もいる。

そんな多様で多彩なものの買い方が楽しめる、自由度の高いプラットフォームであることが多くの人に愛され、使われる要因なのかなと思います。

結論として、共同購入は決して新しい価値観ではない

「共同購入」という概念や、お得に買うために商品リンクを友達にシェアするといった表層を見ると、全く新しい馴染みのないものが新興してきたように感じるかもしれません。

ただ、前編でも触れたようにもともと僕たちは「信頼できる人の勧めで物を買う」ことに非常に慣れており、情報社会の進展でその傾向はますます強くなっています。

みんなが今までもよくやっていた「これめちゃくちゃいいからぜひ使ってみて!」「一緒に買おうよ!」という感情の高まりの共有を、ただ多くの人がシームレスに満喫できるプラットフォームとして用意しただけなのだと思っています。

さいごにおまけ

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これよくない!?欲しい!たべたい!といった感情の高まりを友達にシェアすることで、その商品を一緒にお得に楽しめるオンラインショッピングのプラットフォームを、僕たちも現在目下準備中(!)です。

そして、そのサービスづくりの裏側をリアルタイムに全公開しているFBグループ(完全無料)を作ってみたので、もしよければ以下から参加申請してみてください!

平日の不定期更新で、プロダクト進捗やテストユーザーの募集、先行情報、悩み相談などw、赤裸々に色々と公開していきます。

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最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

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