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(後編)2020.8.15開催_中国ECプラットフォーム最前線」レポート

※こちらは前編の続きです。まだお読みでない方は、前編から順番にお読みください。

毎日Pinduoduoにログインさせる仕掛け

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門奈)消費者行動としては、圧倒的に「毎日ログインして小さな消費を積み重ねる」人が多いですね。一見Taobaoと同じだと思われるかもしれませんが、毎日ログインさせるような仕掛けをつくった点ではこちらが元祖です。

先ほどの月次カードの話もそうですし、毎日のログインボーナスなどもある。その中でも僕が一番斬新で面白いなと思っているのはこのゲームです。

こうみく)豚ちゃんに毎日ご飯を食べさせるゲームですか?なんか10年ぐらいまえに流行ったmixiゲームの「サンシャイン牧場」に少し似ていますね。

門奈)そう、毎日豚ちゃんにご飯をあげるのですが、これひたすら育てると、行き着く先は豚肉なんですよ。「豚肉ができました!」っていって家に本当に豚肉が届くんです。

こうみく)え、本当に届くの!?めちゃくちゃ面白いな(笑)

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門奈)そうなんです。豚ちゃん以外に鳥とか牛とかも選択できて、それぞれ卵や牛乳、ヨーグルトが届けられたり。全く意味のないゲームではなく、毎日ログインして遊ぶことで何かが本当に届くというリアルとの連携をやっていて、「楽しい」買い物アプリなんですよね。

人を集めないと購入できない手間をどう考えるか

門奈)じゃあ実際に、一緒に海苔でも買ってみましょうか。今僕がこうして海苔の画面を開くといろんな味やサイズがありますが、僕とこうみくさんは別のものでOKです。ですので僕は自分の好きなタイプを選ぶのですが、はい、WeChatのUXが良すぎるのでもう購入が完了してしまった。購入するとシェアリンクが出てくるので、これをこうみくさんに送ります。

こうみく)これもし時間内に一緒に買う人が集まらなかったらどうなるんですか?

門奈)誰も乗ってくれなかったら買えないので、決済はキャンセルされます。

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こうみく)結構厳しいんですね。質問が来てます、『3人集まったら購入成立という条件のとき、メンバーは自分で集めますか?もしくはネット上の知らない人でも大丈夫でしょうか?』

門奈)現在は後者で、知らない人でもOKになりました。しかし初期は、自分が知っている人じゃないとダメだった。友達が友達を呼ぶバイラルの仕掛けを作ったことでPinduoduoはシェアをすごく伸ばしたんです。ただ、今はPinduoduo内のプラットフォームで一緒に買う人を募集できたりなど、自由度があがっていますね。

各ECの特徴と、ユーザーの使い分け方

こうみく)一緒に買う人が集まらないと購入がキャンセルされるって面倒だなと思うシーンもありそうですが、TaobaoやJDとはどう使い分けられているんでしょうか。

門奈)まずJDは早く届いて、しかも絶対に本物がいいという場合ですね。TaobaoとPinduoduoは日用品ジャンルにおいてちょっと被っている気がします。その上でどっちの方が、出しているユニットや品揃えがいいかによって都度比較して使われるイメージ。

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こうみく)なるほど。これはすごく豆知識なんですけど、Alibaba(TaobaoやTmallを運営)とJDの違いとして「物流を抱えている」点が挙げられます。一般に「ラストワンマイル」と呼ばれる、地域の倉庫から家までの配送部隊を自社で抱えているのがJD、日本のAmazonのように配送会社と提携を結んでいるのがAlibabaという形です。

JDは最初から最後まで一貫して社内でやることで、配送が早くかつ安心であるという評価を得ています。あとは、JDは結構電化製品とかガジェットが強いと言われており、男性のファンが多いイメージも少しありますね。

門奈)そうですね。物を買う時っておおよそ「納期」「価格」「質」「手間」といった軸で比べられるのですが、Pinduoduoでいうと面倒だったり届くのも遅いけど安い。よってお菓子や服など急を要さないものはPinduoduoに有利だったりしますね。

Pinduoduoが急成長した背景

こうみく)なるほど、ありがとうございます。ところで、すごくざっくりした質問ですけどPinduoduoはなんでこんなに伸びてると思いますか?

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門奈)タイミングという点で、Pinduoduoとちょうど同じぐらいの時期に中国でキャッシュレスが普及し始めたことが挙げられます。それによってスマホから何かのついでにサクッと衝動買いすることのハードルが格段に下がりました。そのムーブメントをしっかりと捉え、それに乗っかることで拡大に拍車がかかったと考えています。

こうみく)Pinduoduoってどうしても価格を下げて売ることが前提になると思うのですが、出品者側としてのメリットはなんなのでしょうか。

門奈)①ボリュームディスカウント ②新規ユーザーを連れてきてくれる、の2点かなと思っています。

前者は、要するに「薄利多売」が設計できるということ。「10人集まらないと売りません」というように「多売」を条件づけることが可能です。

後者については、「友達を連れてくると安く買えるよ」というモデルなので、自社のファンが「美味しかったから一緒に買おうよ」と言って次のファンを呼んで来てくれる、つまりユーザー獲得のためのマーケティングコストを割引に当てることが可能となります。

こうみく)たしかに、バイラル(口コミ)を呼びやすいモデルというのは今の時流にも非常にマッチしていそうですね。

中国ECの熾烈な陣営争いと戦略的提携

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こうみく)そういえば最近面白いなと思ったのが、中国ECの陣営争いと出資問題です。Pinduoduoってなんとなく独立したイメージを持っていたのですが、実はテンセントサイドのECプラットフォームなんですよね。

たとえばアメリカも、サービスがちょっと大きくなってくるとGAFAのどこかから資金が入って色がつくことってあるじゃないですか。

中国も同じで、結局Alibabaかテンセントの陣営に組み込まれてしまう。そういう意味で、TaobaoやTmallがAlibaba陣営なのに対しPinduoduoはテンセント陣営からの出資を受けています。これ株でいうとどのぐらい入ってるんですか?

門奈)15%ぐらいだったと記憶しています。テンセントはWeChatを運営しているので、すごく戦略的な提携ですね。WeChatって日本でいうLINEとFacebookを合わせたようなものすごく強いメッセージツールなので、友達とオンラインでシェア買いするフローの中で万が一PinduoduoがWeChatに禁止されると非常につらい。

こうみく)中国版TikTokも何回もWechatに禁止されていて、そのたびに結構つらかったので、それを避けるために仕方なくというのはありそうですよね。

大手ECにおけるマージンを、割引としてユーザー還元する

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こうみく)もう一個質問が来てますね。『価格の調整においてメーカーサイドや大手ECとのコンフリクトが気になります』とのことですが、実際にいまシェア買いアプリ「カウシェ」を準備している門奈さんとしてはいかがですか?

門奈)まさに、特にブランディングとかをしっかり考えているメーカーほど、価格を下げることを嫌がると思うので、本当に成り立つのかな?って最初は少し心配していました。ただやってみたら意外といけた。

現状の仮説ですが、出品者は大手ECサイトに掲載するにあたって手数料とかポイントカードとかタイムセールとかによってどんどん実は上乗せされて、結構マージンが取られているんですよね。だから実質的にECサイトに払ってしまっている料金をユーザー側に転換するという形で同意いただけることが多々あります。

こうみく)めっちゃ良心的じゃないですか(笑)。Pinduoduoって海外展開はまだしてないですよね?これだけ成長してたら日本にも入って来そうですけど。

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門奈)そうですね、今後くる可能性は大いにあると思います。17兆円の売上を叩き出してはいますが、まだ創業して5年の会社です。3年目ぐらいのタイミングで1200人ぐらいの社員を雇っていましたが、採用のスピードも確実に追いついていないですよね。事業が伸びすぎて相当余裕がない状況だと思うので、海外展開はもう少し先かなと思っています。

ただ、Pinduoduo以外にも最近何社か「シェア買い」「ソーシャルEC」に注目している企業は現れています。私としては、この購買スタイルを文化として馴染ませる必要があるので、プレイヤーは何社かいた方がいいと思っているので、一緒にマーケットを作っていきたいですね。

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門奈)2020年は、オフラインでの販売はどうしても苦しい年になると思います。一方で、だからこそ「それなら新しいことに挑戦してみようか」と思ってもらいやすい期間でもあると思うので、日本のピンチをチャンスに変えるべく爆進していきます!

こうみく)ありがとうございました。今後も門奈さんとは新しくリリースするプロダクトだったり中国ECの話だったり、色々とやっていきたいと思いますので、その時はまたよろしくお願いします!

さいごに

お読みいただきありがとうございました!

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