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「MOTHER FUCKER」と谷ぐち家と私

映画「MOTHER FUCKER」を見てきました。

過去の私が味わったことのある感情が随所に詰まっていて、胸がいっぱいになった。

音楽界隈、Less than TVを愛する人はほっといても観ると思うのですが、そうでなくても、「親になる」ことと、バンドに限らず「自分のやりたいこと」のバランスをどうとるか、に悩んでる人にも、すごく刺さる映画じゃないかと。

映画のレビューとかではなくて、谷ぐち家へのラブレターみたいなものになってしまいますが笑、綴ります。

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こちらのエントリと内容被るところもあるのでよかったらご一緒に)


私が自らの妊娠を知ったのは、
the morningsの1stアルバムのリリースを3ヶ月後に控えた2010年の11月だった。
嬉しさはもちろんあったけれど、なんでこのタイミングで??と嘆きたくなるような気持ちが正直大きくて、
子供を持ってバンドを続けるにはどうしたらいいんだろうか、と悩みに悩んだときに、頭に浮かんだのは、ゆかりさんの存在だけだった。
子供を育てながらバリバリとバンドをやってる女性は、ライブハウス界隈には彼女のほかにはいなかった。


その頃、リミエキとはtokyo boredomで対バンしたくらいだったかな?
大先輩という認識で。気軽に話しかけられるような仲ではなかった。
けどゆかりさんのメアドを誰かに教えてもらって、勇気を出してまずはメールでいろいろ相談に乗ってもらうことに。

共鳴くんは3歳前くらいで、たしかタニさんとは事情があって離れて暮らしていた時期で、YUKARIさんはシングルマザー状態で共鳴くんを連れてバンドを続けてた。
時間を作ってもらって、初めてしっかり話したサイゼリヤ。ゆかりさんはとってもフランクに話してくれて、母になることとバンドを続けることの難しさ、葛藤を共有できて、いろいろと抱えてた気持ちがすーっと楽になったことをよく覚えている。
ゆかりさんのブログを過去記事に遡って全部読んで、その流れで同じ頃に子供を出産されたKiiiiiiiのお二人のブログも熟読して、いろいろ気持ちの整理をつけたりした。

出産後、バンドに復帰してからは、ゆかりさんに誘ってもらって一緒に子供向けの曲をレコーディングしたり。
super deluxeでリミエキと対バンした時はライブ中に私の息子をタニさんが抱っこしていてくれたり笑。
随所随所で仲良くしてもらい、お世話になりどおし。
子供を連れてバンドをしていく上で、いつも谷ぐち家の存在に励まされていました。
(super deluxeの時はtoddleも出ていて、田渕ひさ子さんとその息子くんも楽屋にいらっしゃったりして、子供がワイワイ集ってすごく楽しかったことをよく覚えている。NUMBER GIRLで育ったので、ひさ子さんが息子を抱っこしてくれて、ちびるかと思った…)


ゆかりさんはとってもパワフル、
という印象を持っている人が多いと思うけれど、
もちろんその通りでめちゃくちゃパワフルなんだけど笑、
実際はとっても繊細で、思慮深くて、とてもいろんなことを考えて考えて、葛藤しながら前に進んでいる人だ。

子供を育てながらガッツリとバンドをするには、どうやっても罪悪感がつきまとう。
夜遅く。酒を飲んだ人、喫煙者だらけ。爆音。
そんな環境にまだ生まれて数ヶ月、数年の子供を連れて行く。普通の人ならばやらないだろう。普通の親ならばやらないだろう。
でもバンドをやっていると、それでも今やらなきゃいけない、やりたい気持ちを押さえられない、という時がある。
(そして子供を連れていかないにしても、それはそれで「子供を他人に任せて好きなことをしている」という罪悪感に襲われるからこれまた厄介なのだ。これはもしかしたら、非バンドマンの配偶者を持つ子持ちバンドマンの多くが同じことを思っているかもしれない)

全国どこにでも、果ては海外ツアーにも、共鳴くんを連れていくゆかりさんは、ずっと「共鳴にとって、これでいいのか?」と煩悶している。2人で話したときに彼女は、「いつバンドができなくなるかなんてわからないもんね」と言っていた。
これがフィクションだったら、
「音楽は私の命だから、たとえ我が子に何かあっても、私はステージに立ち続ける」
なんていうセリフが盛り込まれるのかもしれないけど。
ゆかりさんはそんなことは言わないだろう。
真剣に音楽をやっているけれど、いつだって本気で共鳴くんのことを一番に思っている。

映画にはその姿がそのまま映し出されていた。ステージ上のゆかりさんはもうとんでもなくスポットライトが似合う、エネルギーの塊のようなパフォーマーなのだけど、降りた瞬間、共鳴くんを見つめる目は、とっても暖かくて優しくて、愛情に満ちている。
小学校3年生の共鳴くんを折に触れて抱きしめ、共鳴くんも嬉しそうにゆかりさんに甘えている姿が、とても自然だけど印象に残る。

序盤、大阪と徳島のツアーに旅立つタイミングで、共鳴くんがインフルエンザにかかって連れて行けなくなるシーンがある。いつも共鳴くんの面倒を見てくれている沙織ちゃんに看病を任せ、ゆかりさんは新幹線に乗ってハコに向かう。
「ママ、帰ってきた方がいい?最悪、徳島キャンセルしてもいいし。。沙織ちゃんと朝までいられる?」と尋ねるゆかりさんに、しっかりと「大丈夫。」と答える共鳴くん。
ああ、もう彼は赤ちゃんじゃないんだなあ。両親のやりたいことを尊重して我慢できるほど、大きくなったんだなあ。。
と、目頭が熱くなってしまう。

大阪に向かう新幹線ホームで、ゆかりさんが言った言葉がすごく頭に残った。(うろ覚えなので色々間違ってたらごめんなさい)

「(バンドは)仕事とかじゃないし、好きでやってることだから。趣味じゃん?」
「でもやりたいことを、家族のために親が諦めたと知った時、共鳴がどう思うか……。やりたいことをやっている姿を、見せたいとも思うんだよね」

いつだってそういう意識を持って、ゆかりさんはステージに立っている。

ライブが終わったらすぐに帰路につき、家にかけこんで、眠っている息子の顔を覗き込む。
その表情も、その時の感情も、私は痛いほどよく知っている。
わかりすぎて胸が痛くなって、メソメソと泣いてしまった。

バンドでもなんでも、子供がいても、やりたくて仕方がないことなら絶対にやった方がいい。というか、やってもいい。と思う。
私の場合は、3年くらい前、バンドの内の空気がうまくまとまらなくなって一度ポッキリと心が折れてしまって、
家庭内での音楽への情熱でいうと夫のほうが明らかに高かったために、そちらを尊重した方がいい、今は自分は思い切りバンドをやらなくてもいい、と割り切るようになった。
バンドをやりたくなくなったわけではなくて、物理的にそうしたほうが自分もラクだし、家庭のバランスも取れる、という気持ちの方が、「やりたい」に勝ってしまったからだ。
子供がいる夫婦がふたり揃ってバンドをやるのは、ものすごくバイタリティがいる。それが同じバンドならばなおさらだけど、別のバンドでもきっと。

舞台を見たり、可愛い子供服に目を輝かせたり、他にも楽しいことをたくさん見つけて、
仕事も大好きなのでそちらに没頭したりして、
そんなうちに2人目を出産したのでますます育児でてんやわんやになり、
バンドをやらないと心が死んでしまうというような精神状態ではなくなった。というか、そんな風になる暇もなくなった。

第1子の出産直後は「産褥期の自分は子供と引きこもって慣れない育児にノイローゼ気味なのに、夫は変わらずバンドをしていて、どうして!?ずるい!?」と思ったけれど、今は別のバンドでの活動に精を出しはじめた夫を見ていてもそう思うことは全然ないし(あくまで、活動頻度が適度であれば、だけど笑)、子供が小さいこんなに貴重な時期、できる限り成長をそばで見ないなんてもったいない、とも心から思うようになった。

ただ、Twitterのつぶやきを見ていると、私は子育てのことばかり考えているのに対して、夫は日々頭の中が音楽のことでいっぱいなのがよくわかって、そのギャップに寂しくなることもある。
前は常に一緒に、同じ方向を向いていたはずなのにな、と。

バンドマンとしての歩みを止めることは自分でも残念だったし、悔しかったし、正直どこかでゆかりさんに申し訳なくなるような感覚もあった。

「MOTHER FUCKER」を見て、しまいこんでいた感情が溢れ出しそうになった。

私もステージに立ちたい。
思いのままにデカイ音を出したい。

シンプルにそう思った。

その次の瞬間にすぐ「でも」が襲ってきてしまう今は、まだその時ではないのかもしれない。
でも、やっぱりバンドが、ステージ上で全力を出す人達が、私はすごく好きだなあ、私だってそういう人間なんだぞちくしょう、と、改めて思った98分間だった。尊敬するバンドマンや友達もスクリーンに次々に出てきて、不思議な気持ちになったり。


映画のクライマックスは、共鳴くんが8歳にして組んだバンド、チーターズマニアの初ライブ。

私の記憶の中の、まだ小さかった共鳴くん。グッドマンにウルトラ怪獣のソフビをたくさん持ってきて、息子に快く貸してくれた共鳴くん。

共鳴 と書いて ともなり と読む、なんていい名前なんだろう!と、初めて聞いた時に思った。

彼の中に芽生えた、バンドをやりたいという感情。それを少しずつ形にしていく姿は、本当にカッコいいと思ったし、初ライブの一連のシーンは、小さな男の子が自分の意志で一人の人間として自立して歩き出す姿をとらえている、ものすごく心を揺さぶる映像だ。

共鳴くんが、純粋で優しくて、ひとりの人間としてとても魅力のある男の子に育っていることは、映画を見た人ならばみんなが感じるところだろう。
「これでいいのか。こんなに親の都合で子供を振り回していいのか」とゆかりさんは悩み続けてきたけど、
タニさんによく似た共鳴くんの屈託のない笑顔がスクリーンに映った瞬間、
「ああ、とんでもなくいい子に育ってる!ゆかりさん、あなたの子育て、間違ってるわけがない!この映画が証明してるよ!!」
と、声高に叫びたくなりました。
(何様だよ、ですが)

タニさんと共鳴くんが「バレたら怒られるかな、ふふふ」と笑いながら唐揚げを頬張っているところもこれまた名シーンですね。と付け加えておきます。




映画を見終えた瞬間、感想を書いたら5000字いきそう、と思っていたが、かろうじて4600字ほどで収まりそうだ。笑

おわりにもう少しだけ。

大石規湖さんの撮るライブ映像が大好きで、かつてスペースシャワーTVのDAXという番組のためにthe morningsを撮ってくれた映像が、自分たちとは思えないくらいかっこよくて嬉しかったことをずっと鮮明に覚えていて。
そんな大好きな大石さんの初監督作が、大好きな家族を撮ったものなんて、なんて私得なの〜!と思う。
彼女の切り取った映像では、よく知っているライブハウスが、道が、風景が、とてもドラマティックに見えた。
編集もすごく面白くて、未公開シーンがたくさんあるんだろうから、もっともっと見たいなー。

映画館に行った日がたまたまゆかりさんと大石さんの上映前トーク付きの回で、大石さんにはひっさしぶりにお会いしたのだけど、顔を見ただけで覚えててくれたので、すごーくすごーく嬉しかった。「一度撮った人のことは忘れない」んだそうだ。


谷ぐち家の3人のことがとても大好きだし、尊敬しているし、これからもゆかりさんは、私にとっては恩人であり不動のスターです。

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マンガが好きでドラムを叩くライター・編集者。 2011年生まれ男児と2016年生まれ女児の母。 インタビューZINE「meine」を作っています。 https://meine.booth.pm/ https://www.instagram.com/kemonokeika/

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