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深いブッシュに若犬も恐怖!? 中島猪犬訓練所所長に “初心者限定” 訓練会の狙いを聞いた
本稿は『けもの道 2018秋号』(2018年9月刊)に掲載されたものを note 向けに編集したものです。掲載内容は刊行当時のものとなっております。あらかじめご了承ください。
文・写真|網地貫
取材した施設|中島猪犬訓練所(三重県)
・動物取扱責任者:中島寛太
・所在地:三重県松阪市嬉野滝之川町
・動物取扱業登録:(販売)松販 第19-3、(保管)松訓 第19-1、(訓練)松訓 第19-1
3条件を掲げた訓練会
平成30年4月22日、数日前までの涼しさから一転、初夏を思わせる強い日差しが照りつける中、三重県・中島猪犬訓練所で訓練会が催された。
中島猪犬訓練所で公的な競技会や訓練会の開催は多くはない。依頼があれば場所の提供はするが、主催することはない。もちろん方針に口出しすることもなかった。
ところが今回の訓練会は珍しく中島猪犬訓練所代表の中島毅所長の意向で3つの条件がつけられた。
初心者であること
少数制・参加犬数10頭未満
単犬単独猟を目指している人
何をもってして『初心者』と呼ぶのか。狩猟免許を取ったばかりの人か、若年層か、はたまた獲れない猟師は万年初心者か。かなり曖昧な基準だ。そしてもう一つの不思議な条件、少数制。賑わいがなくてよい訓練会などあるものだろうか。
中島所長の思惑は後述するとして、近くは地元三重県から、遠くは愛媛県や福島県からも熱心な初心者(?)が集い、無事に訓練会がスタートした。
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特殊な訓練所
トップバッターの参加者が中島所長の先導のもと、愛犬と共に場内に入った。皆、口にこそ出さないが、もし過去に他の猪犬訓練所を見学した経験があるなら、目の前に広がっている光景に面食らったのではないだろうか。
一般的な猪犬訓練所といえばグラウンドのような広い平地で、片隅に猪が逃げ込むための小さなブッシュと、体を冷やすための水場が設けられている。入口で犬を放せば、すでに場内で待ち構えている猪に向かって一直線に駆けて行く。出犬者は入口付近に立って愛犬の勇姿を見ていればよく、場外の見学客も躍動感に富んだ駆け引きをつぶさに観戦できるようになっている。
ところが中島猪犬訓練所はといえば、見渡す限り鬱蒼と生い茂る木々と、人の背丈よりも高い雑草が場内全体を覆い隠している。足元は起伏の激しい地形に加え、ゴロゴロと岩が転がっていて歩くことさえおぼつかない。拓けた平地など、あぜ道程度の通路くらいだ。
場内に入ってすら目の前数mほどしか見えず、中央にそびえ立つ高い櫓やぐらの上からでさえ全体を把握することは難しい。
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猪の要塞
聞けば、昨猟期に捕獲した猪をこの場内で放し飼いにしていて、今もこのブッシュのどこかに潜んでいるという。
それが何を意味するかといえば、その猪にとって訓練所内全てが巨大な寝屋ということだ。
外観からは荒れ果てた雑草の海にしか見えなくとも、その内部は猪が作った迷路のように複雑なトンネルになっていて、慣れ親しんだこの中の何処かに潜み、犬の接近を察知すれば静かに移動し、危険を感じれば脱兎のごとく駆け抜け、時に犬を誘い込んで攻撃に転じることもできる。その広大さは寝屋というより、『要塞』といった方が相応しい。
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『猪に向かって一直線』どころか、猪を探すところからのスタートになる。
犬
今回の『初心者限定』という条件から百戦錬磨のベテラン犬の参加はなかったが、完全な未経験もいなかった。1歳から2歳の若犬で、少なくとも一猟期は経ている。しかもすでに猪を獲らせてくれた犬もいるという。
はるばる遠方からも参加する熱心な参加者だけあって血統的にもこだわりの名血揃いだった。
ゆえに犬たちは場内に入った瞬間には中に充満する猪の臭いに神経を集中し、すべきことを自覚しているかに見えたが、冷静なのか不安からなのか、舞い上がって暴走することもなく、主人を意識しながら静かに歩き出した。
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ブッシュの中に猪の出入口を見つければ覗き込み、そろりそろりと注意深く入っては数m先まで足を進めて戻ってくる。猪が作ったトンネルは無数にあって、どこからでも入り、どこにでも繋がっているように見えた。
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捜索
そこかしこに残る痕跡からは、どこに猪が潜んでいても不思議はないのだが、逆に痕跡が多すぎるがために、それに惑わされてなかなか猪を発見できない。
「たぶんアッチの方や。」
櫓の上から中島所長が猪が潜んでいそうな場所を参加者に伝える。誘導されるままに行ってみるも、視界が悪すぎて猪が潜んでいたとしても外側からはわからない。
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犬の反応はどうか。ブッシュの中を気にしているが入ってはいかない。ということは恐らくここにはいない。
刹那、
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