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幻の屋久島犬が魅せる残すべき姿芸
本稿は『けもの道 2018秋号』(2018年9月刊)に掲載されたものを note 向けに編集したものです。掲載内容は刊行当時のものとなっております。あらかじめご了承ください。
文|佐藤未歩
写真|いなたまきこ
屋久島のヤクシカ猟
朝から雨だ。
猟期終了間際の3月4日、屋久島の南部、世界遺産登録地域を横目に山へ入る。勢子の屋久島犬保存会会長、若松さんが犬を入れ、しばらくすると甲高い声が響く。剣(雄4歳)と妹のビビ、甥っ子のバルが鹿の匂いをとり、追い出した。
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犬の声が近づく。待ちの江口さんにとっては狩り慣れた山で、鹿が逃げてくるルートを全て予測していた。
犬の声が止まった。どうやら鹿は畑の網の破れたところから逃げたようだと、江口さんが迎えにきてくれた。
犬たちは私の周りを走り、勢子の元へと戻って行った。場所を変え、何度か追い鳴きを聞いたが、とうとうこの日、鹿と犬のセットで姿を見ることはなかった。
翌日は晴れたが、午前中は鹿の気配なし。午後、牧瀬さんの単独猟に同行し海岸近くの山へ入る。
雄犬シマと兄妹犬のスズを綱で引き、娘のヒメだけ自由にする。ヒメが鳴いた。慌てて2頭を離すとそれぞれ違う方向へ消えた。しばらくすると追い鳴きが近づいてくる。大きめの雌鹿が目の前で跳ねた瞬間に頭上で鳥がバタバタと音を立てた。逃した。
追ってきたのはヒメだ。チラッとこちらを見て、また何もなかったように走って行った。何やってんだよとでも言いたげな表情であった。
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少ししてもう一頭、今度は離れた場所で小さめの鹿が跳ねた。今度もヒメが追ってきたが、確認できたのは両目視力2.0の私だけであった。スズとシマは道路を越え山の上まで鹿を追跡したが、2時間ほどで車を降りた場所へそれぞれ戻ってきた。
結果、ボウズだったが、南部と北部に分かれた猟友会に所属する犬持ち猟師たちは「とにかく山が好きで犬が好きだから、獲れなくても楽しい一日だった」と夜は飲んかた(飲み会)でお互いの絆を深め合った。
写真で見る屋久島犬
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