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ビックモーターさんのノルマ設定を考える

世間を賑わせているビックモーターさんの件は色々と考えさせれますが、その中でもノルマの設定については考えさせれました。
 
日経新聞7月29日朝刊の社会2面「過大ノルマ、不正招く ビックモーター立ち入り」という記事の中に、次のようなくだりがありました。
 
「社内では車両1台あたりの修理のもうけを「@(アット)」と隠語で呼びあい、14万円前後がノルマとされた。(中略) 車の損傷状況によって変動するはずの修理のもうけに課された過大なノルマ。男性はプレッシャーから「不正をやるしかない」と追い込まれ、バンパーを外す際にわざと車体を傷つけるような行為が常態化した。」
14万前後というノルマのプレッシャーが、故意の車体損傷に繋がったと伝えられています。
 
ノルマ、目標設定自体が悪いとは思いません。目標設定がないと会社としても予算が組めません。
しかし、問題は、ノルマは金額面のみ提示されているだけで、それに相当する商品やサービスのモデルが会社として作れず、提示されていなかったことです。
 
本記事にもあるように、修理自体は故障内容によって変わるものであり、一律に設定できるものでもありません。ただ、例えば、修理時に再度故障しないような新しい提案を行うこと等、お客様に喜ばれ、かつ会社としても売上が更に上がるようなことが目標になっていれば、合理的だったと思います。例えば、修理金額を最低ラインとして、+x万円追加売上があれば更に評価されるようなイメージです。修理金額も過去実績から平均値が分かるので、そこから予算も組めるでしょう。
 
しかし、一律14万円前後に相当する商品・サービスが提示されないまま、ただただ金額ばかりがノルマとなった結果、今回の不正に繋がったのではないでしょうか。それも、ノルマに達成しないとパワハラや激しい降格に繋がる企業風土が、更に不正を助長したと考えます。
 
こうしたことに至った原因として、経営陣が現場を知っているようで知らないこともあったのではないでしょうか。現場を知っていれば、「工夫してこうした商品・サービスを提供すれば、これくらいの価格を取ることができるな」という感覚が分かるはずです。早大卒業後に損保会社に勤務し、MBAを取得した創業者ご子息の元副社長が入社されてから問題が大きくなったという報道は気になるところです。数値面のPDCAばかりが重視され、現場の実態から乖離した経営が行われていなかったでしょうか。
 
あと、数字面で高い目標を掲げられることは一般的にもよく目にします。しかし、数字は結果であって、それを作る為のビジネスモデルやお客様への提供価値が明確でないと、結局無理して数字を作ることになるのです。これはビックモーターさんでなくても多くの会社で目にするところです。
 
私のコンサルティングの中では、はじめから数字目標ありきではなく、どのような商品・サービスでお客様に喜ばれ、社員の方々も働きがいを感じられるかをまずは具体的、徹底的に考えて頂いた上で、その次に数字目標を考えて頂くようにしています。色々考え方はあると思いますが、私はその方がお客様第一だと考えています。
 
今回、ビッグモーターさんは「経営陣は知らなかった」とされていますが、14万円前後という金額のノルマは設定しながら、それに対応する商品・サービスを設定せず、また実態を知らなかったこと自体が問題なのだと思います。非公開会社ですので本当に経営体制が変わるのかは不安を感じるところですが、注視していきたいです。

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