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自衛隊トップ、統合幕僚長の半生から感じたこと

先日、約5年間という長期に渡り自衛隊のトップである統合幕僚長を務められた河野克俊さんが書かれた「統合幕僚長」という本を読みました。
 
題名からは統合幕僚長時代の経験が相当書かれているのかと期待しましたが、実態は河野さんの半生が中心で、統合幕僚長時代の記載は5分の1程度だったのが少し残念です。
しかし、そうした中でも気づきになる点が何点かありました。
 
1つ目は、これは改めてという所もありますが、自衛隊という組織がいかに規律を重んじる組織かということです。自衛隊に限らず軍隊組織というものは規律を非常に重んじますが、本書を読んでいるうちになぜそこまで規律を重視するのか少し分かった気がします。
 
それは、常に危険にさらされる組織として、危険時にバラバラな行動を取っていては適切な対応が取れないからです。平和な日本でそんなに危険にさらされるのか、とも思いがちですが、実際には多くの事故に遭遇したり、災害救助に出動しています。また、近年は地政学的リスクが高まる中、他国との緊張にも晒されています。
 
こうした危険にあった時に、適切な対応ができるように、自衛隊では規律を徹底するのだと思います。そして、規律を守れないくらいであれば、辞めてもらっても構わないのです。
なかなか(特に近年の)企業ではそこまで踏み込めませんが、企業を巡る環境も不安定化している中で、少し考えさせられる点です。
 
2つ目は、河野さんを始め、自衛隊自体も積極的に安全保障に関して提言する傾向が強くなっているのでは、という点でした。これは色々賛否あるかもしれませんが、私は決して否定すべきものでもないと感じます。
 
もちろん、戦前のように軍隊が国政全般に渡って提言したり、影響力をもったりすることはよくありません。それは二度とあってはいけません。
 
しかしながら、一方で、戦後の特に冷戦期のように、自衛隊が常に受動的立場に立たされ、なんら提言することもできなかった事にも問題があったと思います。
 
やはり、特に専門である軍事面においては、現場に立たされる自衛隊から提言を頂くのが適切なこともあると思います。もちろん、これは他の政策についても一緒ですが、官僚組織でもある自衛隊からの提言を丸のみするのもよくはありません。そこは国民の負託を受けた政治家が最終判断すべきですし、それこそが「シビリアンコントロール」の意図するところではないでしょうか。
 
地政学的リスクが高まる中、自衛隊から国土防衛に向けた現場視点からの提言もして頂きつつ、国際関係、外交、何より日本の将来を見据えた判断を大局から行うべきではないかな、と本書を通じて感じたところです。

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