2022年度経済財政白書から考える物価上昇、企業投資

政府は7月29日に2022年度の経済財政報告、いわゆる経済財政白書を公表しました。
今回は「人への投資」等、多岐に渡る内容が盛り込まれていましたが、その中でも現在の物価上昇と、日本企業の投資状況についての記述について考えてみました。
 
(物価上昇について)
「デフレ脱却に向けて十分とはいえない。」
白書は、現在の物価上昇局面が幅広い品目で値上がりしていると認めつつ、米国やユーロ圏と比較して値上がり率が低水準にあること等から、日本が大きな政策課題としてきたデフレ脱却に至っていないと評価しています。
 
「デフレ脱却には物価と賃金がともに安定的に上昇していくことが必要。」
日本の物価の値上がり率が低水準であることの大きな原因は、消費意欲が高まっていない為、値上げにより販売量が減少することを小売業をはじめとした企業が懸念している為です。
 
消費意欲を高める為には、賃金を上げ、個人所得を上げないといけない、というのが白書が訴えているところです。さもなくば、物価が十分に上昇するデフレ脱却に至らないというのです。
 
「外的要因に起因する一時的な物価上昇ではなく、企業収益の改善が賃金上昇につながり、個人消費や設備投資が増加する下で経済全般の需給が持続的に改善していく好循環を実現する必要がある。」
しかしながら、低水準の値上げのままでは、企業は仕入高等も賄えず、賃金を上げることもできません。
 
難しいところですが、適正な値上げを通じて賃金上昇の原資を生み出し、その賃金上昇分が消費意欲を高めていくような好循環を作っていくしかないのではないかと感じます。
 
(日本企業の投資状況について)
「投資スタンスは全体として慎重に推移してきた」
上記の賃金上昇を実現する為には、値上げだけでなく、付加価値を高めたり、コスト効率を高めるような生産性向上を目的とした投資が必要となってきます。
 
しかしながら、白書は2000年代以降、企業は利益を内部留保する傾向が強く、投資に消極的だったと指摘します。年にもよりますが、他の先進国は企業部門の投資が内部留保を上回ったのに対して、日本はこの20年間、一貫して内部留保が投資を上回っています。
 
この原因として、①長引くデフレ下での期待成長の低下、②世界の不確実性上昇、③実質無借金に代表される保守的な経営を目指す動き、④企業の低調な新陳代謝、といったことがあると白書で示されています。
 
「投資の喚起を通じて需給バランスを回復し、成長力を高めていくことが重要だ」
こうした状況に対して、今後期待される投資分野として脱炭素とデジタル化があります。
 
特に脱炭素については、大企業だけでなく、大企業と取引がある中小企業でも対応が求めらつつあります。現在のビジネスを守るだけではなく、ビジネスを拡大する為にも脱炭素の投資が今後求められてきます。

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