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仕事に活かせる中国古典

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数千年の風雪に耐え、今なお世界中で評価されている中国古典。現代を生きる私達が「よい仕事」を取組むにあたり、どのような中国古典の教えが活きるのかご紹介できればと思います。
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2022年5月の記事一覧

怒りは敵と思え

「顔回なる者有り、学を好む。怒りをうつさず、過ちをふたたびせず。」(論語、雍也第六) (顔回という者がありまして、本当の学問好きでした。怒って八つ当たりすることはなく、同じあやまちを二度とすることはありませんでした。) まったく、孔子先生と言ったら本当に顔回さんという弟子を可愛がっていたし、将来を期待していたんだろうな、と論語を読んでいると感じます。先週ご紹介した「一を聞いて十を知る。」という有名な言葉も、顔回さんのことを称えたものでした。 この顔回さん、孔子先生の期

常日頃から学ぶ姿勢、努力がないと、「一を聞いて十を知る」ことはできないのではないか

「回や一を聞いて以って十を知る。賜や一を聞いて以って二を知る」(論語、公治長第五) (顔回は一を聞いて十を理解しますが、私は一を聞いて二がわかる程度です) 「一を聞いて十を知る」。論語の中でも有名な言葉ですが、皆さんはどのように感じられますでしょうか。 私は、長いこと、これは聞いた話を理解するのはもちろん、そこかれ色々なことを連想できることを言い、これは(時には生まれつきも含めた)地頭に起因するものだと思っていました。 しかし、「一を聞いて十を知る」ことができる理

人徳があれば孤立せず、人はついてくるもの

子曰く、「徳は孤ならず、必ず隣り在り」(論語、里仁第四) (先生がいわれた。「色々な徳は、ばらばらに孤立してはいない。必ず隣り合わせで、一つを身につければ隣の徳もついてくる。」) 本節は、論語の中でも私が好きな一節の一つです。上記訳は斎藤孝先生の「論語」からの参照となりますが、私は単純に「徳がある人は孤立することなく、必ず人がついてくる。」程度でもよいのでは、と考えています。 徳というのが、自分のことばかり考えるのではなく、他者の幸せに貢献する、ということならば、その

思いやりの心が全ての基礎、基盤

「人にして仁ならずば、礼をいかん。人にして仁ならずば、楽をいかん。」(論語、八列第三) (もし仁という心の徳がなければ、礼があっても音楽があってもどうしようもない。(礼楽の根本は心を磨くことである。)) 私が論語等に表される孔子の考えに興味をもったきっかけは、井上靖先生の「孔子」を30代の頃に読んでからでした。この作品では孔子の艱難の人生や弟子との関係性について描かれていますが、一番印象深かったのは、孔子の世話をしていたという架空の主人公をして、孔子が最も大事にしていたも