【質問解答】電界強度,送信機の出力,空中線電力,電波の強さの違いがわかりません。空中線電力とはアンテナで発生している電力のことでしょうか。

電界強度,送信機の出力,空中線電力,電波の強さの違いがわかりません。空中線電力とはアンテナで発生している電力のことでしょうか。

電界強度

まず、「電界強度」ですが、これは空間に放射された電波によって作られる電界の大きさで、単位は[V/m]です。空間に受信アンテナを置いた場合、電界が大きければ大きいほど大きな電圧出力を得ることができます。
電界の大きさそのものを人間が体感することは余り無いのでピンとこないかもしれませんが、電界が発生した場合に同時に発生する磁界の大きさは体感的に分かりやすいかと思います。強い磁石は強い磁界を作り、弱い磁石は弱い磁界を作ります。そして、磁界の強さは磁石からの距離が離れるほど小さくなっていきます。これと同様に、アンテナから離れれば離れるほど電界も弱くなっていきます。単位の[V/m]というのは、1m距離が離れたとき、どのくらい電圧が変化するかということを意味します。

送信機の出力
空中線電力
電波の強さ

送信機の出力と空中線電力は、いずれも単位がワット[W]です。これは身の回りの家電製品の消費電力であるワットと同じ値です。送信機の出力は、送信機の出力端子における電力で、空中線電力はアンテナの入り口における電力です。もし無損失の同軸ケーブル等で結ばれている場合、送信出力=空中線電力になりますが、同軸ケーブルによる損失等がある場合、

送信機の出力>空中線電力

になります。
電波の強さは、電界強度をもって表します。 したがって単位は[V/m]です。

アンテナに送り込まれる空中線電力が大きければ大きいほど、アンテナから放射される電力は大きくなりますから、とうぜん周囲の電波の強さ=電界強度も大きな値になります。ただしアンテナに指向性がある場合、その指向性が強い方向では電界強度が大きく、指向性が弱い方向では電界強度が小さくなります。大雑把に言ってしまうと、「とある方角における電波の強さは、空中線電力にアンテナの利得を掛けたもの」になります。もちろん空中線電力の単位はワット、電波の強さの単位はV/mですから直接掛け算すれば求まるというわけではないですが、感覚としては理解できるかと思います。

ラジオ局などで「出力100kW」というのは、空中線電力を指しています。これは事実上、ほぼ送信出力と同じですから、送信機の送信出力端子で電力を測定することで空中線電力の値としています。

上記のことからお分かりいただけるように、例えば送信所からの距離が同じだとして、出力100kWで無指向性のアンテナを使用している放送局よりも、出力20kWで一方向への指向性を持たせたアンテナを使用している放送局の電波の方が強く到達する、ということは十分にあり得ます。

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