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電気のおはなしその32・ダイオード

P型半導体とN型半導体の素子そのものの話をもう少ししようかと思わなくもないのですが、P型半導体・N型半導体とくれば、まずはダイオードでしょう。

前回お話ししたように、電子が余り気味のN型半導体と、電子不足気味のP型半導体を接合したらどうなるでしょうか?というお話です。
まず両半導体の接合部分付近ですが、電子が余っているN型と不足しているP型の両者の需給が一致し、N型の自由電子がP型のホールと結合し、自由電子・ホール共に消滅する現象が起こります。これを「再結合」と呼び、接合面付近は自由電子・ホール共に消滅することで、そのままでは電流が流れない領域となってしまいます。(むろん、熱振動の作用による自由電子・ホールの生成は温度に依存して偶発的に起こり続けてはいます)
一方、接合面から離れたP型領域・N型領域にはホールや自由電子が存在するので、全体としては次の図のように自由電子やホールが存在することになります。

図1・P型半導体とN型半導体を接合してみたの図

では、このようなPN接合の外部に電池を接続したとき、いったい何が起こるでしょうか。
まず、N型側に電池の-、P型側に電池の+を接続したとします。
このとき、電池の-端子からは電子が供給されますから、

ここまで書いて、やっぱり「電流の流れのプラスマイナスと電子の流れのプラスマイナスが逆である理由を先に書いた方がいいと思い直し、そっちを先に書いてこの原稿は次に回すことを決意。というわけで、ここで中断して「電流の流れる向きと、電子の流れる向きが逆である理由」を先に書きます→書きました

もともと電子が余剰だったN型領域に、さらに外部から電子が供給されることにより、電子が空乏層を乗り越えてP型領域にあふれ出します
P型領域に到達した電子は、P型領域に存在するホールと次々と再結合し、再結合によって結晶に取り込まれた電子は電池の+端子に向かって吸収されていくことになります。すなわち、回路電流が流れることになります。
この際、P型領域とN型領域の境界にある空乏層を乗り越えるだけの圧力(電圧)が外部から必要になるのですが、これがPN接合の電圧降下と呼ばれる値になり、ゲルマニウムでは約0.1V、シリコンでは約0.6Vくらいの値になります。

図2・P型に+、N型に-として電池を接続してみたの図

では逆に、N型側に電池の+、P型側に電池の-を接続したとします。
この場合、N型領域に存在している余剰電子が電池の方に吸い出されるいっぽう、P型領域の空乏層には電池から電子が供給されるため、結局N型領域・P型領域ともに自由電子もホールも減少し、空乏層がさらに広がるだけです。つまり、電流は流れなくなります。

図3・逆方向電圧を掛けてみたの図

もっとも、少数キャリアとしてN型領域のホール・P型領域の自由電子もわずかながら存在しているため、逆方向電圧を掛けた場合に流れる電流は完璧にゼロとはならず、非常に微小ではありますが流れるのは事実です。

以上の作用より、PN接合半導体は、

P型領域からN型領域に向けて一方向に電流が流れる素子

として振る舞いますから、これをダイオードと名付けて整流素子などとして活用しています。P型領域をアノード、N型領域をカソードと呼びます。

図4・ダイオードの回路記号。矢印の向きに電流が流れる。左がアノード、右がカソード

「ダイオード」という名称は半導体素子で初出ということではなく、それ以前に存在した二極真空管をダイオードと呼んだところから来ています。「アノード」「カソード」の名称も真空管由来です。
真空管は、もうobsoleteとなってしまいましたが、私は幼少の頃から真空管が大好きで(多分祖父からの隔世遺伝のひとつだと思います)実際に真空管回路を設計・製作したり修理したり代用真空管を設計・開発したこともありますので、今や忘れ去られた技術となりつつある真空管の話もしてみたいと思っていますよ。

以上がダイオードの基本的な原理ですが、これを元にして、発光ダイオードとか定電圧(ツェナー)ダイオード、エサキダイオード、バラクタダイオード、ガンダイオードなど色々な種類のダイオードが誕生しています。また、PN接合ではなく、半導体と金属を組み合わせたショットキーダイオードなんていう素子もあります。その辺りを列挙し説明するのは、次回のおはなしということにしましょうね。

以上。

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