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電気のおはなしその41・トランジスタ(2)回路素子としてのトランジスタ

では前回の続きを行きますよ。
トランジスタとは、NPNもしくはPNPと半導体を三層構造にしたもので、真ん中のベース領域を極めて薄く作ることにより、勢い余った電子がベースを突き抜けてしまうことを利用して増幅を行う素子でした。前回の例ではNPNトランジスタを例に挙げて図示しましたが、PNP型でも電子がホールになるだけで同じように動作します。(NPNとPNPでは、電池や電流の向きが互いに逆になるだけです)

では、回路素子としての挙動を見ていきましょう。
NPNトランジスタを例に挙げて考えると、

  • B→E間に発生する電圧降下は、ダイオードと同じくPN接合の電位差になるので、シリコントランジスタで0.6V程度、ゲルマニウムトランジスタで0.1V程度。

  • B→Eに流した電流の数十~数百倍の電流がC→Eに流れる。

  • C→Eには、トランジスタが勝手に電流を生み出すわけではなく、外部に接続した電源によってその電流が流れる。

ということになります。また、各部の電圧や電流は、次のように表記します。

  • ベース電流:IB(本当はBは右下に書く。以下同様です)

  • コレクタ電流:IC

  • エミッタ電流:IE

  • ベースーエミッタ間電圧:VBE

  • コレクターエミッタ間電圧:VCE

ベース電流とコレクタ電流の間の比例定数を「直流電流増幅率」と呼び、hFEもしくは記号βで表します。これより、次の式が成立します。

  • IC=βIB

  • IE=(1+β)IB

まぁ、こんな公式みたいなのを暗記しても、肝心のトランジスタの本質的な動作を理解していなければあんまり意味はないのですが…とにかく、トランジスタのトランジスタたるアイデンティティは、

B→Eに流した電流の数十~数百倍の電流がC→Eに流れる。

これですよ、これ。これです。

微小電流に対して、それにそのまま比例した大きな電流を生み出すことができる。それによって、小さな信号を大きな信号に増幅できる。

これが最も重要な点で、これさえ理解していればほかの細かいことは適当でいいとさえ言い切ってしまえるほどです。

図1・トランジスタの各端子と電圧・電流の定義

本来であれば、ここからいよいよ、固定バイアス回路・自己バイアス回路・電流帰還バイアス回路の回路図とその動作の説明、動作点(A級・B級・C級)の説明、動作点の設定などの回路設計理論に入るのでしょうけれども、いきなりそれはハードルが高いうえ、そもそも交流とは何か?という話すらまだしていませんので、その辺りの話はまた後にすることにしましょう。{「電子回路のおはなし」みたいな別建てにした方が良いのかもしれませんね。)

今回書き続けている「電気のおはなし」ですが、さてどのレベルまで掘り下げて書けばよいのだろうか?と悩んでいたのですが、私が幼少の頃にボロボロになるまで愛読した「学研の図鑑・電気」にあるレベルをまずは押さえる、というのが丁度いい感じだなと思っています。となると、トランジスタの説明についても、上記の内容+α程度でまずはOKかな、と。

ただ一つだけ書き加えておくと、トランジスタはあくまでも電流を増幅する部品だということです。すなわち、入力が電流、そして出力も電流で得ることができます。
ここで、入力側はまだいいとして、出力が電流で出てくるというのは、人間にとってあまり好ましくないからです。何故かというと、電流源で出力されるということは

ここまで書いて、「電圧源」と「電流源」の話をしていたっけかおいら?!
と思って焦ったのですが、その25のテブナンの定理・ノートンの定理で話をしていましたね。ほっ。

出力端子を開放した場合に、回路はむりやり電流を流そうとして何万ボルトモノ電圧を発生させ、空気中をむりやり放電させて電流を流してしまうからなんですね。電圧源であれば、出力端子を開放しても、単に電流がゼロとなるだけで電圧は発生しっぱなしにすることができますし、危険もありません。
そんなこんなで、トランジスタ回路の出力である電流を電圧に変換するため、負荷抵抗というのを挿入することで電流を電圧に変換して出力する、というのがトランジスタ増幅回路のスタンダードな考え方です。

これ以上の深入りはだいぶ専門的な話になるので、また別のタイミングにしたいと思っていますよ。

以上。

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