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電気のおはなしその39・ガス放電

前回、ガス入り放電管が云々なんてことを最後に書いてしまいましたので、やっぱり忘れない内にガス放電の話を書いておくことにしました。

この宇宙は全て元素からできている、という話を何度もしていますが、その元素が大量に結合したものが我々の周りのいろんなモノを形作っています。また、温度の話もしました。温度というのは原子の振動の大きさであって、振動が大きくなる=温度が上がるということ、そして振動が大きくなるほど結合の手が離れやすくなってしまうこともお話ししました。
このとき、温度が低いと個体になり、温度が上昇するにつれて液体になって、しまいにはは原子一粒一粒がバラバラになって気体になる、という変遷を遂げます。(一粒一粒というか、H2とかO2みたいに「2個で1セット」の元素も多いんですけどね。細かい話は置いときます)
それから、導体と絶縁体の話もしました。導体は、その物体を構成している原子の中の電子が容易に流動するもの、絶縁体は電子が容易には移動しないものでしたね。ところが、雷のような非常に強力なエネルギを掛けてしまうと、強力な電界によって原子の中の電子が飛び出し、落雷という形で電流が流れるのでした。

今回は、そんな絶縁体である気体元素、その中でもいわゆる貴ガスと呼ばれる気体が封入されている管に電極を入れて電流を流すとどうなる?というお話です。

真空管は、真空中に電子を飛ばすことで色々な作用を行わせていましたが、真空ではなく多種多様な気体を入れたらどうなるだろうか?という実験も多く行われました。代表的なのが白熱電球で、実は内部にアルゴンという気体が入っています。電球の中は真空だと思われている人が多いと思うんですが、実は真空ではありません。
何故アルゴンかというと、これは貴ガス(以前は「希ガス」と表記されましたが、今は「貴」を使うのが正式です)の一種であり、他の元素と容易に反応しないという性質を持っているからなんですね。電球の中には高熱になるフィラメントが挿入されていますので、もしその周囲に酸素があれば、フィラメントは一瞬で酸化して燃え尽きてしまいます。真空にすればいいのですが(初期の電球は内部が真空でした)、高熱になったフィラメントがその熱によって分解し、徐々にやせ細っていき最後は切れてしまいます。
白熱電球の技術は意外と面白くて、ガスとしてクリプトンやキセノンを入れた電球は、高温になったフィラメントが蒸発するものの、その蒸発したフィラメントが周囲のガスの作用によってまた元のフィラメントに還元するため寿命が長い、おまけに通常の白熱電球よりもフィラメントの温度を高くして使うため、発光効率も高いなどという面白い作用が見られたりします。

電球は電球で章立てして纏めないといかんですな。白熱電球や蛍光灯などの技術って、昔からあるローテクノロジーだと思われるかもしれませんけど、実はとても面白いんですよね。ま、電気は全部面白いですけどね。

もう1120文字も書いてしまいました。本題に行きます。
真空管同様のガラス容器の中に様々な気体と電極を入れて電圧を掛ける実験の結果、条件によっては様々な色の発光現象が見られることが分かりました。特に貴ガスを少量入れたものは奇麗な色に発光するため、現在でもネオンサインとして広く利用されています。
これは、貴ガスが存在する空間に強力な電界をかけて電流を流した際、希ガスの原子に衝突した電子がガスの原子にエネルギーを与え、そのエネルギーが光となって放出されるために見られる現象で、このときに放出されるエネルギーの大きさが原子の種類によって異なるため、様々な色となって人間の目には見えるわけです。詳しくは、Wikipediaに放電光のサンプルが載っていますので参考にしてみてください。

私の頭の中では、ネオンサインの話、点灯管の話、ガス入り真空管の話など書きたいことがいっぱいあるんですが、ネオンサインとか点灯管は、電球の話をするときに書きますね(と言ってどんどん書きたいこと/書かなきゃいけないことが増えていく)

ガス入り放電管の応用としては、その放電電圧がほぼ一定であることを利用し、ツェナーダイオードと同様な使い方をする定電圧放電管とか、半導体のサイリスタと同様の働きをするサイラトロン(これもダイオードと同じで、ガス放電管が先なんですけどね)、身近な所では古い蛍光灯器具に使われている点灯管などが挙げられます。

ガス入り放電管の最も代表的な応用はネオンサインだったわけですが、これも今は急速にLED化が進められていますね。ネオンサインなんていうのも、やがてロスト・テクノロジーになってしまうのかもしれませんが、あの独特の味わいがある雰囲気はLEDじゃ出せませんよね…などと懐古趣味っぽくなったところで、話も収集付かなくなってきましたし無理矢理終わりにしてしまおう。

以上。

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