Designship2023公募セッション「対称な医療をデザインする」前編
今年最高の体験でしたDesignship2023
CureAppでデザイナーをしています精神科医師の小林です。
2023年9月30日-10月1日に行われたDesignship2023に公募スピーカーとして登壇しました。
これまで経験したことのない華やかな舞台に立つことができ、優秀で魅力的でデザインを愛する多くの人に出会うことができ、そして自分の考えてきたことの価値を認めてもらえた最高の体験でした。
後日動画も公開されますが、1日目の公募セッション「対称な医療をデザインする」の内容を紹介いたします。
私はいま、病気でしょうか?
人間は生きているとさまざまな不調をきたします。
たとえば私はいま、病気でしょうか?胃の痛み、体の冷え、頭痛、気分のアップダウン、不眠…。さまざまな不調が日々私の心身に襲い掛かりますが、どんなに不調をきたしても自分が病気であると自分で診断することはできません。医療機関を受診し、医師の診断を受けることではじめて病気と認定されます。
また、私たちは自分の不調に対していくら情報を調べても、診察室でその知識を披露するタイミングはなかなかありません。。
自分の病気を自分で決めることができず、調べた知識を医師に伝えるチャンスがない。どうしてこのようなことが起きるのでしょうか?
情報の非対称性
背景にあるのは、情報の非対称性です。医療は基本的に専門的知識を持った医療者と知識のない患者という構図で成り立っており、これを情報の非対称性といいます。そして医療者が患者に情報を提供する一方通行で古くから医療行為は成立しています。
しかしこれだけ情報のインフラが発展した現在、このコミュニケーションをアップグレードすることはできないのでしょうか?
第3の知性と新しい医療コミュニケーション
すでに国内外でさまざまな動きは起きています。
たとえば、今年世界を席巻したChatGPTに関する研究では、患者からの質問に対しChatGPTの回答と医師の回答を比較すると、ChatGPTの方が医師よりも高品質に、共感をもった回答できたという結果が得られました。
国内でもUbieの症状検索エンジンは、症状を入力することで参考となる病名や医療機関の情報を調べることができます。
またCureAppの高血圧治療補助アプリは、高血圧と診断された後、血圧を下げるための生活習慣を提案し、毎日の自宅での健康管理をサポートします。
こうした事例から見えてくるのは、医師からも患者からもアクセスができ、十分な医学的知識を持った第3の知性の存在です。
患者がひとりで医学的知識を身につけるのではなく、患者向けにデザインされた情報ツールにアクセスする。そして医師と患者と第3の知性が互いにやりとりをすることで、より優れた医療体験ができる可能性があります。
どんなことが考えられるでしょう?
患者を中心とした医療体験は、診察を受ける前、診察中、診察を受けた後というフェーズに分けることができます。
診察前の体験としては、病院に行く前に自分の症状を入力をすることで、自分は病院を受診するべきかどうか、どんな検査が必要かの判定ができるかもしれません。
また、診察中の体験としてはAIによる評価をカルテに表示させ、患者と医師で共に見ることで、医師とAIによるハイブリッドな医療を実現し、患者の持つ知識も診療に反映しやすくなると考えられます。
さらに、病気と診断された後には、最適化された治療プログラムを患者に提供することで、患者は自分の病気についてより深く理解することができ、得た知識を次の診察で医師にフィードバックすることができます。
このように、第3の知性が介入することで診察前、診察中、診察後に新たな医療コミュニケーションを作り出すことができるのです。
医療はすべての人に重要なインフラであるにも関わらず、まだまだその体験は改良する余地があるフロンティアなのです。夢がありますね。すばらしいです。
と、ここまでが理想の話。こうした話は未来志向の医師や、医療系スタートアップのプレゼンでよく聞くものです。果たして本当にそんなにうまくいくのでしょうか?
ここからは現実の話をしましょう。
後編に続きます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?