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頚椎カラーやバックボードは必要か?

実は私、出張中に 誤って転倒してしまい、中心性脊髄損傷で約2週間入院していました。受傷時は一時的に完全四肢麻痺になり、夜だったので、このままここで死ぬのかなあ?と思いましたが、通りかかった方が救急要請してくださったので命拾いしました。まだ手のしびれが少し残っていますが、こうやって両手でキーボードを叩くことが出来ます(キーボードの柔らかいMacなので、Winである電子カルテのキーボードが使えるか不安がありますが)。

第7頸椎の極突起も折れていました。救急隊の方には感謝してるのですが、バックボードをつけるかどうかで隊員の方たちが議論をしていました。私は「いや、いるでしょ!」って思いましたが、あまりにも右手が痛くて言えませんでした。

そのことをSNSに書いたら、ある方が「ITLSでは、その場合はカラーをつけないことになっており、救急隊の方は間違っていない」と意見をいただきました。

時間があったので、以下の論文を読んでみました(有料です)。

頸椎カラーや バックボード固定は、以下のような不利益があるようです。
rise of intracranial pressure 頭蓋内圧の上昇
pain and discomfort 痛みや不快感
pressure ulcers 圧迫による潰瘍形成
difficulties in airway management 気道管理が困難になる
restriction of respiration 呼吸を障害する(拘束性障害)
dural sac compression dural sacの圧迫

健康な人で、以下のようなコースを走行して首の動きなどをチェックしています。

以外に頚椎カラーは有用性を見いだせなかったようです。結論は以下のようになっています。

Since the best spinal motion restriction during transport is achieved using a spine board, it should be used whenever spinal motion restriction is indicated and the distance to the next trauma center is short.
搬送中の最も効果的な脊椎可動制限法はバックボードであり、必要かつ受け入れ病院までの距離が短い場合には必ず用いる(頚椎カラーの併用に利益はなかったようです)。

When longer transport is expected, a vacuum mattress with CC and head blocks should be used to avoid pain, discomfort and the risk of pressure ulcers.
搬送距離が長い場合には、痛みや不快感、圧迫による潰瘍を防ぐために、頚椎カラーを併用してバキュームマットレスと頭部固定具を用いるべきである。

If traumatic brain injury is present, it may be considered whether a 30° inclined vacuum mattress without a CC but with additional head blocks could be useful during transport.
外傷性脳損傷がある場合、頚椎カラーは用いず、頭部固定具を用いたバキュームマットレス(30度挙上)が搬送に有用な可能性がある。

• In case of an unstable status of the patient (e. g. hemorrhagic shock), minimal CS immobilization should be performed using the ambulance cot, a pillow, a CC and additional tape to avoid prolonged time on scene caused by the immobilization procedure.
患者の状態が不安定な場合(例えば、出血性ショック)、 脊椎固定手技による現場滞在時間の延長を防ぐために、簡易ベッドや枕、 頸椎カラーや追加のテープなどにより最小限の脊椎固定を行うべきである。

受け入れ病院の先生がどう考えるかによるのでしょうね。私はバックボード、頚椎カラー併用が良いのではないかと個人的には思いました(エビデンスレベルは未確定)。救急外来で頚椎カラーつけていただき、今も使っていますから。

救急隊の方、疑って申し訳ありませんでした。丁寧に対応していただき感謝しています。

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