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東京ヴェルディの今後

今季のJ2リーグも1/3を消化し、スタジアムやDAZN観戦で、やきもきされている方も多いかと思うが、今季の東京ヴェルディの戦い方は、決して褒められたものではない。第15節を終了した時点で積み上げた勝ち点は、わずか18(5勝7敗3分け)。3年目を迎える永井秀樹監督にとって、最悪の状況となっている。

【第15節終了時点での過去2年との比較】
2019年 ギャリー・ジョン・ホワイト監督
    勝ち点21(5勝4敗6分け 20得点・18失点)
2020年 永井秀樹監督
    勝ち点23(6勝4敗5分け 20得点・14失点)
2021年 永井秀樹監督
    勝ち点18(5勝7敗3分け 19得点・28失点)

今季はFW勢が数多く得点しており、攻撃面では改善されていると思いがちだが、過去と比較すると同等レベルであり、逆に失点は昨季の2倍と大幅に増えている。クリーンシート(無失点試合)はわずかに2試合という状況である。仮に今季J1昇格を必須要件とするならば、普通に考えて解任も止む無しといった数字である。

そこで、東京ヴェルディのサポーターは現状をどう捉えているのか、「いまのヴェルディに、もっとも足りないものは?」というテーマでアンケートを取る事にした。

アンケート結果

Twitterでアンケートを取ったところ、予想を大幅に上回る200名を超える方からご回答を頂いた。改めて御礼を申し上げたい。

アンケートのうち、およそ6割の方が永井政権に不満を感じており、選手の頑張りについては殆どの方が認めているという結果となった。3年目を迎える永井秀樹監督だが、シーズン途中から就任した2019年は勝ち点59で13位、2020年は勝ち点54で12位となり、昇格争いには全くと言っていい程食い込む事ができなかった。今季も恐らく同様の結果となる事が予想され、場合によっては残留争いに巻き込まれる可能性すらある状況である。

また、アンケートの中で「理解のある上層部」という項目を入れた。これは、ゼビオホールディングス側の東京ヴェルディに対する取り組み方が見えてこないが故に、サポーターがどれほど意識しているのかを確認する為だが、約2割の方が気にされているという回答となった。

アンケートの結果から、非常に乱暴ではあるが「選手は頑張っているし応援しているが、J1昇格に向けては永井監督以外の監督で、しかもゼビオホールディングス側の関与がもっと必要」とまとめる事ができる。

議論される事の無い、永井監督の是非

永井秀樹監督が評価を大幅に落とした発端は、第5節のアルビレックス新潟戦である。かつて負けたことの無い相手に、しかも東京ヴェルディ下部組織出身のMF高木善朗にハットトリックを決められるなど0-7で惨敗し、降格圏内の20位にまで転落している。この一件で監督解任か、という噂が出たものの具体的な動きは無く、続く第6節水戸ホーリーホック戦では2-1、第7節のレノファ山口戦では3-1と連勝を飾り、順位を10位まで浮上させている。

チーム状態が明らかに上向いてはいないものの、選手のコンディションやモチベーション、相手との相性でその場しのぎの勝ち点を稼いでいる為、根本的な原因が有耶無耶になってしまっているのである。選手やスタッフから体制や戦い方への不満が出ている訳でもなく、むしろ永井監督を信じているといった印象を受ける。また練習中の風景は画像や一部映像でしか確認できないものの、チームの雰囲気は決して悪くないと推測する事ができる。

そこで考えられるのは、永井監督の戦術と選手の能力の間に大きな乖離が生まれているという事である。試合後の永井監督のコメントの多くは、以下の言葉で占められている。

「選手はよく頑張ったが、あと一歩が足りなかった」
「流れとしては良かった。自分たちで崩し切るんだというところの気持ちの部分と最後の崩し切る質というものを、さらに上げていきたい」
「バージョンアップが必要」

中には自らのミスを認めるコメントも出しており、自らの采配を反省する事はあるものの、自らの戦術自体は間違っておらず、それに対する選手の質や気持ちが足りない、というコメントが殆どである。結果の伴わない永井監督への批判はサポーターにはよく見られるものの、その他からはほぼ聞こえてこない。多くの選手は「永井監督のサッカーは面白い」や「このサッカーを完成させ、J1に行きたい」というコメントを出しており、永井監督の戦術自体は、内外で割と高く評価されていると言えよう。昨オフには非公式ながらも永井監督にJ1チームからのオファーが届いたと言われているのは、その証左である。J1チームにも評価されている永井監督の戦術については議論の余地が無いとすると、やはり戦術を実行する上での選手の能力にスポットを当てる他は無いという事になる。

周知の通り、東京ヴェルディはこれまで親会社等からの支援を一切受ける事なく、限られた予算で強化を図ってきた。シーズンごとに人件費総額の相違はあるものの、大きく異なるという事は無い。因みに人件費では2019年度のデータではJリーグ全体で28位(7億1,300万円)となっており、J2でも中位に位置する。ただそのような中でもミゲル・アンヘル・ロティーナ監督が率いた2017~2018シーズンは昇格プレーオフにまで辿り着いており、特に2018シーズンは、あと1勝でJ1というところまで辿り着いている。それなりの指揮官が現有戦力で状況に応じた戦術を取れば、それなりの結果を残す事ができるのである。

今季は第15節終了時点で、FW佐藤凌我、FW小池純輝、FW山下諒也の「SKY」トリオの活躍で19得点を挙げている一方、リーグワーストの28失点を喫している。昨季大活躍したDF平智宏を負傷で欠いている事はあるものの、今季新加入のMF加藤弘堅とDFンドカ・ボニフェイスの新たなDFラインは守備に落ち着きをもたらしている。しかし特に右サイドの裏を突かれやすいところは改善されておらず、ファイナルサードまで数多く侵入されてしまっている。永井監督のサッカーは「圧倒して勝ち切るサッカー」であり、今後も守備に大幅なテコを入れる事はまず無いだろう。しかし失点が得点を大きく上回っている現状では、その言葉も空しく聞こえるだけだ。

また、選手の負傷やコンディション不良により選手のやり繰りにも苦慮している様子も窺える。今季について言えば、バックアッパーが試合をひっくり返すという様な試合は無く、あくまでスタメンのメンバーが中心となっている。これまでに途中出場の選手が残した結果としては、FW山下諒也の1得点と、FW佐藤凌我の2アシスト、DF山口竜弥の1アシストのみとなっている。途中出場選手が15試合で4ゴールにしか絡めない現状から、先制しない限り勝率は極めて低いという事もできるであろう。

こちらは第三者の方によるツイートだが、非常に東京ヴェルディの現状を理解しやすいツイートとなっている。やはり永井監督の戦術を実行するには、選手の質が足りていないという事をサポーター以外も認識しているという事になる。これ以上の補強をしようにも予算が無いとなると、現有戦力で最も効率的な戦い方ができる戦術へのシフトが必要となるが、永井監督にはその様な柔軟性を持ち合わせているとは、到底思えない。となると、今季J1昇格争いができるまでに浮上させる事は、監督交代以外に方法は無いものと考える。

そこで、J1昇格時には永井監督を据えるとして、それまでのプロセスについては、「J1昇格請負人」と言われたベテラン監督のご歴々に任せてみるのはいかがだろうか。その間、永井監督には下部組織のスーパーバイザー的なポジションで育成をメインに担当してもらう等々、やはりヴェルディとしては永井秀樹という男を引き留めておくべきだと考える。

ピッチ内外のリーダーは?

永井監督はキャプテンをこれまで固定する事なく、各試合ごとにキャプテンを変更している。昨季はDF平智宏がキャプテンを務める事が多く、それ以外は副キャプテンに指名された選手を中心に、毎試合変化しているという状況である。

コロナ禍で応援スタイルが変わった中で、選手の声がよく聞こえる様になった。DFンドカ・ボニフェイスの声出しを嬉しく思っている方もいるであろう。このようなリーダーシップを取れる選手というのが東京ヴェルディの中には極めて少ないと感じている。

そこで、僕としてはキャプテンとしてMF梶川諒太を推したい。経験豊富であり、所属した複数のチームで、いまだ東京ヴェルディの対戦時に梶川諒太の横断幕が掲示されるという人望を持ち、そしてあの希有な「あざとさ」「可愛らしさ」で例え厳しい言葉を発したとしても人柄でフォローできるという利点があるが、いかがだろうか。

厚い?薄い?ゼビオホールディングスの関与

昨年末の騒動は、ゼビオホールディングスが100%株を保有し、連結子会社化する事で一応の決着をみたが、どうもゼビオホールディングスの東京ヴェルディへの関与があまり無いように見える。確かにゼビオの店舗で東京ヴェルディの旗が掲示されるなどの変化は見られるものの、実際のチーム運営に関しては、ゼビオ色は全くと言っていい程、出ていない。

ゼビオホールディングスのホームページを見てみよう。昨年末の一件により、東京ヴェルディはゼビオホールディングスの100%子会社になったはずだが、ゼビオホールディングスのホームページには、子会社として東京ヴェルディの名前は一切掲示されていない。2020年12月25日の東京ヴェルディ連結子会社化による特別損失の通知文書にのみ、その名を見つける事ができる程度だ。

この度東京ヴェルディの代表取締役社長となった中村考昭氏は、ゼビオホールディングスでは副社長執行役員という肩書きではあるが、取締役では無く、実際のゼビオホールディングスの経営方針に参画できる様な立場には無いと推測する。中村氏はスポーツビジネス全般を手掛けるクロススポーツマーケティング(株)代表取締役社長兼執行役員も兼任しており、東京ヴェルディのスポーツ多角化に向けた取り組みに関しては、以前から東京ヴェルディの取締役を務めていた事もあり、中村氏が主導していると考える事ができる。このように中村氏は複数の役職を兼務している為、東京ヴェルディに関与できる時間も機会も限られていると思われる。

2020年度のゼビオホールディングスの有価証券報告書はまもなくリリースされる。もちろんその中には「その他事業」のひとつとして東京ヴェルディの名前も記述される事になるであろうが、グループ全体の経営方針の中に、果たして東京ヴェルディの名前が示されるのかどうかにも注目してみたい。

そして、ゼビオホールディングスが持つ選択肢のひとつとして、チームの売却も含まれる。こちらは具体化しているわけではないが(そもそもその様な情報がリークされること自体が問題だが)、ゼビオホールディングスが東京ヴェルディを子会社化するメリット自体を見いだすのは困難であろう事も考えると、東京ヴェルディの売却をゼビオホールディングスで画策している事は、ほぼ間違いないであろう。

今後の展望

今後については、まず永井監督が自らその職を辞する事は無いであろう。またシーズン前に発表した中期計画でも、今季J1昇格が必須要件では無い事を明らかにしている。

新体制発表会見での江尻強化部長と永井監督のコメントを抜粋してみよう。


【江尻強化部長】
2021~2023の3年間を目標にJ1昇格を目指したい。2024、2025にJ1定着、そしてACLが目標。

【永井監督】
・自分自身もやはり理想がかなり高いというところもあり、高望みをせずにまずはこの素晴らしい現有戦力と行けるところまで行きたい。具体的な目標としては、我々はどんな状況に置かれようとも、早くJ1に上がって目指すべきところは一番上しか目標にしていない

という事で、2023年までのJ1昇格が目標として掲げられており、今季はその中期計画の1年目である。1年目のスタートから躓いてしまっているものの、その流れを今季途中から変えるのか、それとも来季に持ち越すのか。また2020年度の収支が発表されたが、東京ヴェルディは完全な債務超過状態にあり、将来的にはライセンス剥奪の可能性もありうる。東京ヴェルディだけではなくゼビオホールディングスを含めた対応に注目していきたい。

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